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W杯を「授業」で流した先生、“処分“される?保護者からも賛否あつまる中、法律のプロの見解は

  • 2026.7.4
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

2026年のワールドカップ開催に伴い、「授業中に生徒に試合を観戦させること」の是非がSNS上で話題となっています。「貴重な国際交流の機会になる」「良い教育だ」と肯定的な声がある一方で、「授業時間を潰してまでやることか」「受験生はたまらない」といった否定的な意見も少なくなく、賛否が分かれているようです。

そもそも、授業中にワールドカップを視聴させることは法律的に問題ないのでしょうか。教員の独断で決めて良いことなのでしょうか。今回は、授業中のスポーツ中継の視聴について、法的な問題や学校運営上のルール、著作権の問題などを、弁護士の寺林智栄さんに詳しく解説していただきました。

授業中のワールドカップ視聴は違法?教育活動として認められる条件とは

---ワールドカップのような国際大会の試合を授業中に生徒に視聴させることは、法律的に問題ないのでしょうか?

寺林智栄さん:

「ワールドカップのような国際的なスポーツ大会の試合を授業時間中に児童・生徒へ視聴させることは、直ちに違法となるものではなく、教育課程の目的に沿った教育活動として実施されるのであれば認められる可能性があります。

例えば、保健体育におけるスポーツ文化の学習、社会科や地理・公民における国際理解、多文化共生、国際交流などの題材として活用したり、道徳や特別活動でフェアプレーやチームワークについて考える教材として位置付けたりすることが考えられます。単なる娯楽として観戦するのではなく、授業の学習目標と関連付けられていることが重要です。

もっとも、教員個人の裁量だけで自由に実施できるわけではありません。学校教育法や学習指導要領の下では、教育課程は学校全体として編成・実施されるものであり、授業内容も校長の教育方針や学校の教育課程に基づいて行われます。そのため、通常の授業を中断して長時間試合を視聴するような場合には、学校としての判断や管理職との調整が必要となるのが一般的です。特に試合時間が通常授業と重なる場合には、教育上の必要性や他教科への影響も考慮されるでしょう。」

先生の判断だけで決めていいの?教員に認められる「裁量」の限界

---教員の授業運営上の裁量によって、授業中にワールドカップ中継を見せるかどうかを自由に決めることはできるのでしょうか?

寺林智栄さん:

「授業中にワールドカップ中継を視聴させるかどうかは、教員に一定の授業運営上の裁量が認められているとはいえ、その裁量のみで自由に決定できる事項とはいえません。

学校教育法では、校長が校務をつかさどり、所属職員を監督する立場にあるとされており、教育課程の編成や学校運営については校長の責任の下で行われます。また、学習指導要領に基づく教育課程は学校全体として編成されるものであり、個々の授業もその枠組みの中で実施されることが前提となります。

そのため、授業の一部で教育的な資料として試合のハイライト映像を短時間活用する程度であれば、教員の授業裁量の範囲内と評価される場合もあるでしょう。しかし、授業時間の大半を使って試合を生中継で視聴したり、複数学級や学校全体で観戦を行ったりするようなケースでは、通常の授業計画や時間割に影響を及ぼすため、校長の承認や学校としての方針決定が必要になるのが一般的です。

また、学校は児童・生徒に対して教育を受ける機会を保障する責務を負っているため、特定の教員の判断だけで学習内容を大きく変更することは適切とはいえません。教育的意義、学習目標との関連性、他教科への影響などを学校全体で検討した上で実施することが望ましいでしょう。」

独断で視聴させた場合のペナルティや著作権上の注意点とは

---もし授業中にワールドカップを上映したことで問題が生じた場合、どのような責任が発生するのでしょうか?著作権についての注意点も教えてください。

寺林智栄さん:

「授業中にワールドカップ中継を上映したことが問題となった場合でも、それだけで直ちに法的責任が発生するとは限りません。もっとも、教育活動としての必要性が乏しく、学校の承認を得ずに授業内容を大きく変更したような場合には、学校運営上の問題として扱われる可能性があります。

まず、教員が校長の指示や学校の教育課程に反して独断で長時間の観戦を実施した場合には、服務規律違反や職務上の不適切な対応として校内で指導を受けることがあります。内容や影響が重大であれば、自治体や教育委員会による調査や懲戒手続の対象となる可能性もありますが、その判断は授業の目的や実施態様、学校への影響などを総合的に考慮して行われます。

また、学校に対しては、保護者から『本来行われるべき授業が実施されなかった』『教育課程の運営が適切ではない』といった苦情や説明を求める声が寄せられることが考えられます。特に受験期や定期試験前など、授業時間の確保が重視される時期には、教育的必要性について十分な説明が求められるでしょう。

さらに、放送や配信の利用方法によっては著作権法上の問題が生じる可能性もあります。例えば、正規のテレビ放送を通常の教室で児童・生徒に視聴させること自体は、教育活動の一環として大きな問題にならないケースが多いと考えられますが、配信サービスの利用規約で学校での上映が制限されている場合や、映像を録画・複製して後日上映する場合には、著作権法や契約上の問題が生じ得ます。」

ルールを守り、教育的意義を持たせた「適切な活用」を

授業中のワールドカップ視聴は、直ちに違法とはならないものの、単なる娯楽ではなく、学習目標と関連付けられた「教育活動」として位置づけられていることが大前提です。

教員個人の独断で行うことは適切ではなく、学校全体で教育的な意義や他教科への影響を検討し、校長や学校側の承認・調整を経た上で実施することが求められます。ルールを無視して実施した場合には、服務上のペナルティや保護者からの苦情を招くだけでなく、配信サービスの規約や複製・上映の方法によっては著作権法上の問題に発展するリスクもあります。

生徒たちの学習の機会をしっかりと保障しつつ、ルールに基づいた正しい方法でワールドカップ等の素晴らしい教材を授業に取り入れていくことが望まれます。


監修者:寺林智栄
2007年弁護士登録。札幌弁護士会。てらばやし法律事務所。2013年頃よりネット上で法律記事の執筆・監修を開始。Yahoo!トピックスで複数回1位獲得。読む方にとってわかりやすい解説を心がけています。

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