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「それ、見なくていい」と保証書を隠した僕。彼女を傷つけてまで隠したかった、情けない理由

  • 2026.6.19
ハウコレ

いらないと言ったのは僕なのに、自分のためだけに時計を買っていました。彼女を傷つけているとわかっていても、あの一枚だけは見せられなかったのです。

箱から滑り落ちた保証書を、僕はとっさに手のひらで覆い隠しました。彼女が不思議そうにこちらを見ているのは、見なくてもわかりました。自分の誕生日を二人で過ごす、何でもないはずの時間でした。それなのに僕は、その一枚だけは、どうしても彼女に見せたくなかったのです。

とっさに隠した一枚

その日は僕の誕生日で、彼女が料理とプレゼントを持って部屋に来てくれました。テーブルには、前から欲しかった腕時計が置いてありました。何年も迷った末に、ようやく自分への贈り物として買ったものです。

彼女が箱を手に取ったとき、中から保証書が滑り落ちました。彼女が拾おうとするより早く、僕は「それ、見なくていい」と口にして、その紙を折りたたんで引き出しの奥にしまいました。彼女を傷つけたいわけでも、やましいことがあるわけでもありません。

ただ、その一枚に書かれた日付を、見られたくなかっただけなのです。

祝われることが、苦手だった

少し前、彼女に誕生日に何が欲しいか聞かれたとき、僕は「誕生日とか、別にいいよ。欲しいものもないし」と答えていました。本当は、ずっとあの時計が欲しかったのに。

子どもの頃、僕の家では誕生日を祝う習慣がほとんどありませんでした。両親は仕事で忙しく、ケーキもプレゼントもない年が当たり前でした。だからか、誰かに祝ってもらうことが、いまでもどこか照れくさく、申し訳なくも感じてしまうのです。

欲しいものはないと言いながら、自分でこっそり時計を買う。保証書の日付を見れば、その小さな嘘がすぐにばれてしまう。それが、僕には決まりが悪かったのです。

傷つけたかったわけじゃない

彼女は「どうして見せてくれないの?」と聞いてきました。僕はとっさに「隠してるわけじゃないよ」と答え、話をそらしてしまいました。本当のことを話せばいいだけなのに、自分の照れくささを守ることばかり考えていたのです。彼女の表情から笑顔が消え、口数が減っていくのがわかりました。

祝おうとしてくれた気持ちを、僕は自分の都合で台無しにしている。そう気づいても、その場では何ひとつ打ち明けられませんでした。たった一枚の紙を隠したことが、彼女にどれだけ寂しい思いをさせたのか。ひとりになった部屋で、僕はようやくそのことを考え始めました。

そして…

彼女が帰ったあと、引き出しから保証書を取り出して、しばらく眺めていました。そこに書かれていたのは、別の誰かの名前でも、やましい秘密でもありません。ただ、欲しいものはないと言った数日後の日付と、僕が自分のために選んだ時計の名前だけでした。

こんなものを隠して、彼女を遠ざけてしまった自分が情けなくなります。今度会ったら、この保証書を見せて、祝われるのが苦手だったことも、正直に話そうと思います。誰かに大切にされることから逃げるのは、もうやめにしたいのです。次の彼女の誕生日は、僕がいちばんに祝えるように。

(20代男性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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