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その夢は誰のためのものなのか? 小学校受験にのめり込んでいく母親たちの姿を通して、過熱する現代教育の闇を描く【書評】

  • 2026.5.30

【漫画】本編を読む

『君の背中に見た夢は』(外山薫:原作、たちばな豊可:漫画/KADOKAWA)は、小学校受験をめぐる家族の光と闇を描いた同名小説のコミカライズ作品である。

大手化粧品メーカーで働く新田茜は、ふたりの子を育てるワーキングマザー。中学受験の過酷さを知ったことをきっかけに、娘の小学校受験へと関心を持つようになる。テレビ局記者の夫を持ち、世間的には「パワーカップル」と見られる茜夫婦。しかし、受験の世界で待っていたのは、さらに上の富裕層との苛烈な競争だった。塾などの教育費はかさみ、仕事と家庭の両立は困難を増し、にもかかわらず夫は十分に協力してくれない。子どものためにできる限りの可能性を与えたいだけだったのに、茜は次第に受験の熱に巻き込まれていく。

本作が描き出すのは小学校受験によって歪んでいく家族の姿だ。「子どものため」という思いは本物でも、受験への対策が進めば進むほど、親の焦りや見栄、不安が入り込んでくる。さらに塾で出会うママ友たちもまた、それぞれに事情や苦しみを抱えており、華やかに見えながらも家庭の裏側にある孤独や競争心を浮かび上がらせていく。

やはり印象的なのは「小学校受験で試されるのは子どもではありません。家族です」という本作のキャッチコピーだ。子どもの能力はもちろんだが、親の経済力、子どもにかけられる時間、夫婦の協力体制、家庭の方針も問われる世界には、教育の名のもとに「格差」が存在する。

結局「子どものため」とはなんなのかという問いが読後に残る。親が子どもに夢を見ることは当然のことだが、それが子どもの負荷となり、親自身の承認欲求を満たすだけのものになってはいないだろうか。本作は小学校受験を通して、現代の教育が持つ闇の側面を鋭く描き出した作品である。

文=馬風亭ゑりん

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