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シイタケを食べた女性、背中に「鞭で打たれたような跡」が浮かび上がる症例

  • 2026.5.29
Credit: canva

シイタケは、味噌汁や煮物、鍋料理にもよく使われる身近な食材です。

しかしごくまれに、このありふれたキノコが、見た人を驚かせるような皮膚症状を引き起こすことがあります。

米マウントサイナイ医療センター(MSMC)による2021年の症例報告によると、米国フロリダ州に住む当時23歳の女性が、シイタケを食べた翌日、背中に強いかゆみを伴う赤い発疹を発症

その模様は、単なる湿疹というより、まるで鞭で打たれた跡のような線状の赤みだったのです。

研究の詳細は2021年10月15日付で医学雑誌『Journal of Education & Teaching in Emergency Medicine』に掲載されています。

目次

  • 背中に広がった「線状の赤い発疹」
  • 原因は「シイタケ皮膚炎」だった

背中に広がった「線状の赤い発疹」

女性が救急外来を訪れたのは、背中のかゆみを伴う発疹が2日間続いたためでした。

発疹は最初、背中の上部に小さな炎症として現れました。

そのため女性はまず救急診療所を受診し、ステロイド薬や抗ヒスタミン薬による治療を受けました。

しかし症状は治まらず、発疹は背中の下部へと広がっていきました。

医師が診察したとき、女性の背中には不規則な赤い線がいくつも走っていました。

水ぶくれや皮むけはなく、発疹は背中に限られていました。

また、呼吸困難や喉の腫れ、胃腸の不調といった典型的な強いアレルギー症状もありませんでした。

体の痛みや関節の腫れ、神経症状も見られず、血圧や心拍数、呼吸数も正常範囲でした。

つまり、全身状態は比較的安定していた一方で、皮膚だけに奇妙な線状の異変が現れていたのです。

実際の画像/ Credit: 2021 Lee, et al, CC BY 4.0

医師たちは、発疹の原因を一つずつ確認していきました。

本人は、傷が自分でつけたものでも、誰かにつけられたものでもないと説明しました。

新しい化粧品や香水、洗剤などを使い始めたわけでもなく、虫刺されの心当たりもありませんでした。

自己免疫疾患の既往や、髄膜炎を疑わせる症状もありませんでした。

そこで医師たちが最近食べたものを尋ねると、女性は症状が出る前日にシイタケを食べていたと話しました。

この食事歴が、診断への大きな手がかりになりました。

原因は「シイタケ皮膚炎」だった

医師たちが診断したのは、シイタケ皮膚炎でした。

これは、シイタケを食べた後にまれに起こる皮膚反応で、鞭で打たれたような線状の発疹を特徴とします。

このような発疹は、医学的には鞭毛(べんもう)状皮膚炎と呼ばれることがあります。

名前だけ聞くと物々しく感じますが、これは実際に鞭で打たれたという意味ではなく、見た目がそのような模様に似ていることを指しています。

シイタケ皮膚炎は、日本の研究者によって1977年に初めて報告されました。

原因としては、シイタケに含まれる「レンチナン」という成分が関係すると考えられています。

レンチナンは多糖類の一種で、一部の人では免疫反応に関わるサイトカインの分泌を促し、炎症や発疹につながる可能性があります。

過去の報告では、生のシイタケや加熱が不十分なシイタケを食べた場合と関連づけられてきました。

ただし、この症例報告では、女性が以前にもシイタケを食べたことがあり、そのときは異常がなかった点も記されています。

さらに、症状が治まった後も女性はシイタケを定期的に食べ続けましたが、同じ発疹は再発しませんでした。

なぜこのときだけ反応が起きたのかは、症例報告の中では明らかにされていません。

そのため、この症例をもって「シイタケを食べると危険」と考えるのは行き過ぎです。

むしろ重要なのは、見た目が外傷のように見える発疹でも、実際には食べ物が関係した皮膚反応である場合があるという点です。

治療は、かゆみや炎症を抑える対症療法が中心でした。

女性は、外用ステロイドや抗ヒスタミン薬などの使用を続けるよう指示されました。

当時、女性は授乳中であり、発疹の原因が母乳に影響しないか心配していましたが、医師たちは授乳を続けても問題ないと説明しました。

その後、症状は約3週間で消えたと報告されています。

シイタケ皮膚炎はまれな症状で、科学文献で報告されている例はすべて合わせても、およそ100件程度とされています。

報告例の多くはアジアで見られますが、今回のように米国でも発生することがあります。

シイタケは世界中で食べられるようになっており、医師がこうした皮膚症状を見たとき、食事歴を尋ねることの重要性が高まっています。

身近な食材が、まれに思いがけないサインを皮膚に残すことがあります。

今回の症例は、体に現れた奇妙な模様を読み解くには、皮膚だけでなく、直前の食卓にも目を向ける必要があることを教えてくれます。

参考文献

Diagnostic dilemma: Whiplike rashes appeared on a woman’s back after she ate shiitake mushrooms
https://www.livescience.com/health/immune-system/diagnostic-dilemma-whiplike-rashes-appeared-on-a-womans-back-after-she-ate-shiitake-mushrooms

元論文

A Culinary Misadventure: A Case Report of Shiitake Dermatitis
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10332740/

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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