1. トップ
  2. エピソード
  3. 「書類はそろっています」住所変更の手続きを進めようとした新人銀行員。直後、先輩に「ちょっと待って」と止められた“冷や汗ものの理由”

「書類はそろっています」住所変更の手続きを進めようとした新人銀行員。直後、先輩に「ちょっと待って」と止められた“冷や汗ものの理由”

  • 2026.7.5
undefined
出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。くまえり銀行員です。

今日は、新人時代に経験した「確認不足の怖さ」についてお話ししたいと思います。

銀行員の仕事というと、お金を数えたり、金融商品の説明をしたりするイメージがあるかもしれません。

ですが、実際の窓口業務で何より大切なのは「確認」です。

そして皮肉なことに、その確認を怠りそうになるのは、仕事に慣れてきた頃なのです。

「もう一人でできる」と思い始めた頃

入行して数か月。

最初の頃は何をするにも緊張していました。

お客様から伝票を受け取るたびに先輩へ確認し、少しでも迷えば質問する。

そんな毎日です。

ところが数か月もすると、窓口の流れが少しずつ見えてきます。

「あ、この手続きなら分かります」
「前にも対応しました」

そんな言葉が自然と口から出るようになっていました。

ある日、一人のお客様が窓口へ来店されました。

「住所変更をお願いしたいんです」

私は必要書類を受け取り、内容を確認しました。

本人確認書類も持参されています。手続き自体は何度も見たことがある内容でした。

私は心の中で思いました。「大丈夫そうだな」

そのまま処理を進めようとした時です。

近くで見ていた先輩が声をかけました。

「ちょっと待って。その確認、終わった?」

私は少し驚きました。

「え?書類はそろっていますよ」

すると先輩は、私が見落としていた箇所を指差しました。

「この部分、ちゃんと確認した?」

そこには、住所確認に関する重要なポイントがありました。

私は見たつもりになっていたのです。

「見た」と「確認した」は違う

結果として、その手続きは問題なく完了しました。

ですが、もし先輩が気付いていなければ、確認不足のまま進んでいた可能性がありました。

その時のことを今でも覚えています。

先輩は私にこう言いました。

「くまえりさん、『見た』と『確認した』は違うんだよ」

私は返す言葉がありませんでした。

確かに書類は見ていました。

でも、本当に確認していたかと言われると自信がありませんでした。

慣れてきたことで、「たぶん大丈夫」という思い込みが生まれていたのです。

銀行員が何度も確認する理由

銀行の窓口で手続きをすると、「何回も同じことを聞かれるな」と思った経験がある方もいるかもしれません。

実際、お客様から

「さっきも答えましたよ」
「そこまで確認する必要ありますか?」

と言われることもあります。

その気持ちはよく分かります。

ですが銀行員は、意地悪で確認しているわけではありません。

確認不足によるミスは、お客様の大切な財産に関わる問題へ発展する可能性があるからです。

特に近年は特殊詐欺やマネー・ローンダリング対策の強化に伴い、金融機関にはより厳格な本人確認や取引確認が求められています。

窓口で質問が増えたと感じる背景には、こうした事情もあります。

お客様の立場からすると少し面倒に感じるかもしれません。

それでも銀行員が慎重になるのは、「万が一」を防ぐためなのです。

ベテランほど確認を省略しない

新人の頃の私は、確認不足は経験不足が原因だと思っていました。

しかし長く働いて分かったことがあります。

本当に慎重なのはベテラン行員です。

経験を積んだ人ほど、「本当に合っているか」「思い込みはないか」を何度も確認します。

なぜなら、過去にヒヤリとした経験をしているからです。

仕事に慣れてくると、処理スピードは上がります。

その一方で、「いつも通りだから大丈夫」という油断も生まれます。

実はそこが一番危ない瞬間なのです。

新人時代、私が先輩から教わった言葉があります。

「分からないことより、分かったつもりのほうが怖い」

当時は少し厳しい言葉に聞こえました。

ですが今では、その意味がよく分かります。

たった一度の確認がトラブルを防ぐ

銀行の窓口で確認に時間がかかると、

「早く終わらせてほしい」

と思うこともあるでしょう。

しかし、その数分の確認が大きなトラブルを防いでいることがあります。

これは銀行だけの話ではありません。

契約書への署名。
住所変更の届け出。
ネットバンキングの登録情報。

日常生活の中にも、「たぶん大丈夫」で進めてしまいがちな場面はたくさんあります。

そんな時こそ、一度立ち止まって確認してみる。

たったそれだけで防げるミスは意外と多いものです。

私自身、新人時代のあの日の経験があったからこそ、今でも確認作業を大切にしています。

窓口で少し時間がかかったとしても、その裏側では銀行員が「大丈夫だろう」ではなく、「本当に大丈夫か」を確認しているのです。


ライター:くまえり銀行員

金融機関の窓口業務に携わり、日々さまざまなお客様対応を経験。忙しい日常の中で起こりがちな銀行手続きの行き違いやトラブルを、窓口の内側から見た視点で、読者に寄り添いながら伝えています。「知らなかった」が「なるほど」に変わる瞬間を大切に執筆中。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる