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ピーター・ズントーによる新生LACMA(ロサンゼルス・カウンティ美術館)と、LAで泊まりたい最新アートなホテル2選

  • 2026.5.28
Hearst Owned

ピーター・ズントー設計によるLACMA(ロサンゼルス・カウンティ美術館)の新館「デイヴィッド・ゲフィン・ギャラリーズ」がオープン。アートの熱気が高まるロサンゼルス。今回は、注目の新生LACMAの全貌と、その余韻のままに滞在したい最新アートホテル2軒をお届け。

LACMA(ロサンゼルス・カウンティ美術館)新館がオープン

抜けるような青空の下、ロサンゼルスの大通りをまたぐように、巨大な空間が浮かんでいる。プリツカー賞建築家、ピーター・ズントーが手がけたLACMAの新館「デイヴィッド・ゲフィン・ギャラリーズ」だ。

「デイヴィッド・ゲフィン・ギャラリーズ」外観。 Tomoko Takahashi

このプロジェクトは、美術館館長兼CEOのマイケル・ゴーヴァンが20年の歳月をかけて構想してきた壮大な試み。その設計を託されたズントーは、街と美術館を隔てる重厚な壁を排除し、山々や都市を借景として取り込むオープンな建築を完成させた。

「デイヴィッド・ゲフィン・ギャラリーズ」内部の様子。 Tomoko Takahashi

先日開催された華やかなオープニングセレモニーには、コーチェラでの熱狂も記憶に新しいG-DRAGONをはじめとする世界中のセレブリティが集結。さらに、ディオールの2027年クルーズショーの舞台となるなど、オープン早々、ファッションとアートが交差する最前線として世界中の熱い視線を集めている。

「デヴィッド・ゲフィン・ギャラリー」オープニング・ガラに出席したG-DRAGON。 Amy Sussman / Getty Images

自然光を取り入れた展示室の空間設計

階段を上り、2階に位置する館内に足を踏み入れてまず驚くのは、コンクリート造の外観とは対照的な柔らかな雰囲気。一般的な美術館が、光を遮った閉ざされた空間で作品を見せるのに対し、ここでは特注のカーテン越しの柔らかな光が大窓から差し込む。
そのそばにたたずむ美術品は、選び抜かれた素材と光に包まれ、洗練された個人邸宅のリビングに迷い込んだような親密さを漂わせる。

特注のセルロースカーテン越しに柔らかな自然光が差し込む2階展示室。 Tomoko Takahashi

窓の外の山々に向き合うようにして仏像が配置されるなど、この環境だからこそ成立する絶妙な展示が随所にちりばめられている。

窓の外の景色と静かに向き合う仏像のシルエット。 Tomoko Takahashi

順路を設けない80以上の小規模展示

ここでは決められた順路はなく、直感のままにさまようことが推奨されている。迷い込んだ先で待ち受ける80以上の小規模展示は、知的な刺激に満ちている。

例えば、モネの美しい庭園風景からピカソの力強いキュビスム作品へといたる「ペレンキオ・コレクション」。印象派の傑作だけでなく、マグリットなどの前衛的な近代アートも加わり、1900年代の美術史の移行を一連の流れとして体感させてくれる。

「ペレンキオ・コレクション」の展示エリアより。 Tomoko Takahashi

また、日本をはじめ、アジアにフォーカスした展示も充実。日本の浮世絵と、その影響を色濃く受けたアメリカ人画家の作品を並置した空間では、浮世絵が異国のアーティストの筆致でどのように新たな表現へと昇華されていったのか、その連なりに息を呑む。

モダンなコンクリート壁に並ぶ、歌川広重の浮世絵とジェームズ・マクニール・ホイッスラーの作品。 Tomoko Takahashi

さらに、中国、韓国、日本の職人たちが互いに影響を与え合いながら発展させた青花磁器の変遷や、戦後の京都で既成概念を打ち破った前衛陶芸(今夏にはLAを拠点とする日本人陶芸家・クサカ シオの作品も加わる予定)など、東アジアの美の交差も鮮やかに描き出されている。

中国や韓国の技術から影響を受け、独自の発展を遂げた日本の青花磁器。左は19世紀前半の花瓶、右は18世紀後半の徳利。 Tomoko Takahashi

キュレーターが語る鑑賞体験のねらい

LAの景色を取り込んだ空間を歩いていると、どこまでも同じ景色が続くような錯覚に陥り、ふと方向感覚を失う瞬間がある。だが、それこそがつくり手たちが意図したものなのだ。順路に沿って鑑賞者を誘導するのではなく、自らの直感でさまよい、思いがけない作品と出合う。この迷子になるような体験そのものが、LACMAが提示する新しい価値だと、今回キュレーションを担当したダイアナ・マガロニ氏(現LACMA副館長・元メキシコ国立人類学博物館館長)は語る。

アンリ・マティスの大作と大窓の向こうに広がるLAの街並み。 Tomoko Takahashi

地域や年代という従来の序列を脱ぎ捨て、新たなくくりでアートを再解釈し並べる手法は、現代の潮流の一つではある。しかし、まるでLAの景色に浮かんでいるかのごとく風景に溶け込むズントーの建築と融合することで、ここでは唯一無二の鑑賞体験が生み出されている。

ダイナミックな屋外の大階段。 Tomoko Takahashi

目指すは“市民のインフラ”

また、「市民のインフラになる」というゴーヴァン館長のヴィジョンのもと掲げられた、ホスピタリティの精神にも注目したい。新設された教育センターはチケットなしで開放され、誰もが日常的にアートに触れることができる。秋にはレストラン、バー、シアターが開業予定である。

現代美術家ジェフ・クーンズによる、本物の植物を用いた巨大な彫刻。 Tomoko Takahashi

時代や地域を超えた数多の傑作が点在する空間へ、あえて迷い込む究極の贅沢。新生LACMAは、多様性の街・ロサンゼルスをそのまま体現する美術館なのだ。


LAで泊まりたい、最新のアートなホテル

アートの余韻に浸りながらLAに滞在するなら、気分に合わせて対照的な二つのエリアから拠点を選びたい。海辺のリラックスしたカルチャーを味わうサンタモニカか、世界的建築が密集するダウンタウンか。ご自身のスタイルに合わせて極上のステイを。

1. ザ・ジョージアン・ホテル(The Georgian Santa Monica)/サンタモニカ

海を一望し、独立したリビングとこだわりのバーを備える「オーシャン・ワンベッドルーム・スイート(約57㎡)」 Tomoko Takahashi

1933年に誕生し“サンタモニカのファーストレディ”と称されたアールデコ建築が、華麗なリノベーションを経てよみがえった。往年の優美な意匠を残しつつ現代の快適さをインストールした客室は、ミッドセンチュリー調の家具や心地よい現代アートが配され、まるでハイセンスな友人の邸宅のよう。備えつけのレコードでアナログな音色に浸るもよし、マーシャルのスピーカーにスマートフォンをつないでお気に入りのプレイリストで寛ぐもよし。ルームキーに刻まれた「Come for sunset, Stay for sunrise(夕日を見に立ち寄り、そのまま朝まで過ごしたくなる)」という言葉どおり、海辺の時間を優雅に過ごすことができる。

陽光と海風を感じるオープンテラスのカフェで絶品のブランチを味わった後は、ホテルの自転車を借りて、ビーチ沿いのサイクリングロードを走りベニスビーチへ。フランク・ゲーリー設計による巨大な双眼鏡のような建物など、アイコニックな建築を探索するのもLAらしい楽しみ方だ。夜は、かつてのライブバーを改装した地下のスピークイージー(隠れ家バー)へ足を運びたい。歴史を受け継ぐゆったりとしたボックスシートに身を沈め、生演奏を聴きながらステーキを味わう大人の時間が待っている。

また、ホテル内の「ギャラリー33(Gallery 33)」では数カ月ごとにキュレーションが変わる展示が行われている。今回の滞在時にはアーティストのケリー・ラム(Kelly Lamb)の展示が開かれており、偶然にもご本人から直接話を聞くことができた。

「ギャラリー33」にて。滞在時にはケリー・ラムの個展「Pomegranate Moon(ザクロの月)」が開催されていた。 Tomoko Takahashi

このように、滞在を通して生きた多彩なカルチャーに触れられるのもこのホテルの大きな魅力。働く方々のホスピタリティも心に残る。


所在地:1415 Ocean Ave, Santa Monica, CA 90401 USA

2. コンラッド・ロサンゼルス(Conrad Los Angeles)/ダウンタウン

自然光がたっぷり降り注ぐ「デラックス・ワン・キングベッド(約32㎡)」 Tomoko Takahashi

建築や現代アートを愛する人にうってつけなのが、ダウンタウンに誕生したコンラッド・ロサンゼルス。現代建築の巨匠フランク・ゲーリーが手がけた話題の複合施設内にあり、フロント階のテラスに出ると、同じくゲーリー作の「ウォルト・ディズニー・コンサートホール」の美しい全貌を特等席で見下ろすことができる。現代アートの殿堂「The Broad」や、日本人建築家の磯崎新が設計を手がけた「ロサンゼルス現代美術館(MOCA)」、そしてLA最古の商業ビル「ブラッドベリー・ビル」も徒歩圏内という、まさに名建築の宝庫。

客室はウッディで落ち着いた温かみがありながら、ボタン一つで直感的に操作できるスマートなシャワーやタッチパネル式の照明など、ノンストレスな最新設備が整う。アメニティにはバイレードの人気フレグランス「モハーヴェゴースト」が用意され、テレビを開けば話題のHBO Maxがアカウントなしで楽しめるなど、細部までいたれり尽くせり。部屋に用意された飲料水の紙パックにゲーリー建築がプリントされているなど、空間とリンクしたこだわりもうれしい。

ホテルのプールと隣接するレジデンス棟。 Tomoko Takahashi

プールサイドでそびえ立つレジデンス棟を見上げながらリラックスすれば、都心にいることを忘れるほどの静寂に包まれる。まさに建築好きにはたまらない、LAダウンタウンにおける新たな滞在先といえるだろう。


所在地:100 S Grand Ave, Los Angeles, CA 90012 USA

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