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車検は通ったのに「えっ!?」雨の高速道路で車が横滑り…溝が十分に残っているタイヤに潜む“見えない寿命”

  • 2026.6.21
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「タイヤの溝はまだ残っているから大丈夫」

そう考えているドライバーは少なくありません。実際、タイヤ交換の目安として“残溝”がよく知られており、車検でも基準を満たしていれば問題なく通過できます。

しかし、梅雨時期になると「溝は十分あるのに雨の日だけ滑る」「高速道路で車がフラつく」といったトラブルが増加します。その原因は、見た目では分かりにくいタイヤの“経年劣化”かもしれません。

今回は、残溝だけで安全と判断したことで危険な体験をした事例をもとに、雨の日に潜むタイヤの落とし穴について解説します。

溝は十分残っていたのになぜ滑り始めたのか

あるドライバーは、梅雨入り後の雨天走行中に違和感を覚えました。

「なんだか交差点で曲がるときに滑る気がするな」

最初は路面が濡れているからだろうと考え、特に気にしていませんでした。

その車に装着されていたタイヤは、残溝が十分にあり、車検も問題なく通過していました。見た目にも大きなひび割れはなく、「まだ使える」と判断していたのです。しかし、その後も雨の日になると違和感は続きました。信号待ちから発進する際にタイヤが空転するような感覚があり、カーブでは以前よりも接地感が薄く感じられます。

「気のせいかな?」

そう思いながら乗り続けていましたが、実はタイヤには別の問題が隠れていました。タイヤはゴム製品です。たとえ走行距離が少なくても、紫外線や熱、酸素の影響を受けながら少しずつ劣化していきます。今回のタイヤを確認すると、製造からすでに6年以上が経過していました。溝は残っていても、ゴムそのものが硬くなり始めていたのです。

高速道路で突然ヒヤリ。ハイドロプレーニング現象の恐怖

事態が深刻化したのは、高速道路を走行していたときでした。雨脚が強まる中、追い越し車線へ移動した瞬間です。

「えっ!?」

ハンドルが急に軽くなったような感覚があり、車体がわずかに横へ流れました。幸い大事故には至りませんでしたが、危うくガードレールへ接触しそうになったといいます。原因は、路面上の水膜によって発生したハイドロプレーニング現象でした。

ハイドロプレーニング現象とは、タイヤと路面の間に水が入り込み、タイヤが水の上を滑るような状態のことです。この状態になると、ハンドル操作やブレーキ操作が正常に伝わりにくくなります。

「溝があるなら排水できるのでは?」と思うかもしれません。

確かに溝は排水の役割を担っています。しかし、タイヤの性能は溝の深さだけで決まるわけではありません。ゴムが硬化すると、路面の細かな凹凸に追従できなくなり、特に濡れた路面ではグリップ力が大きく低下します。新品時には柔軟だったゴムも、経年劣化によって徐々に弾力を失います。その結果、水をかき分ける能力や路面を捉える力が低下し、雨の日ほど性能差が顕著に現れるのです。

残溝だけでは不十分!タイヤは「年齢」も確認しよう

後日、整備工場で点検を受けたところ、このようなやりとりがありました。

「溝は残っていますが、かなり硬化していますね」
「交換した方がいいですか?」
「雨の日の安全性を考えると、その方が安心です」

ドライバーは初めて、残溝だけでは安全性を判断できないことを知ったといいます。タイヤの状態を確認するとき、多くの人は溝ばかりに目を向けがちです。しかし実際には、製造年やゴムの硬化状態も非常に重要な判断材料になります。タイヤの側面には製造時期を示す刻印(「DOT」から始まるコード、またはメーカーの製造番号)があり、その末尾4桁の数字で製造年週を確認できます。

例えば「2221」と記載されていれば、2021年の22週目に製造されたタイヤです。もちろん保管状況や使用環境によって劣化速度は異なりますが、一般的には5年以上経過したタイヤは定期的な点検が推奨されます。特に梅雨時期や高速道路を利用する機会が多い人は注意が必要です。

「溝が残っているから大丈夫」

そう思っていたタイヤが、実は雨の日の危険を抱えているかもしれません。安全に走行するためには、残溝だけでなく製造年やゴムの状態にも目を向けることが大切です。梅雨本番を迎える前に、一度タイヤの“年齢”も確認してみてはいかがでしょうか。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り約8年間整備に従事し、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。 年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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