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齊藤工の捉えた有村架純は、清楚かつミステリアス。

  • 2026.5.21

美しい横顔だ——映画『マジカル・シークレット・ツアー』は、富が集まる国シンガポールを走る車の窓から外を眺める有村架純のアップから始まる。東南アジアの湿度を帯びた潤った肌、見慣れないキラキラした風景に戸惑いとときめきを憶える表情。

『花束みたいな恋をした』しかり、テレビドラマで演じる役柄を観ていても、有村架純という人は庶民的で人懐っこい愛らしさのある造形なのに、どこかつかみどころのない雰囲気を持っている。

「清楚さや親しみやすさの奥に、簡単には掴ませない“芯”がある方だと思います。感情を大きく見せるより、呼吸や間で物語を深く進めていく。柔らかいのに強く、強いのにどこか揺らぎがある。その余白に俳優としての艶があるのだと感じています」(齊藤)

2025年4月茨城県にて、映画『マジカル・シークレット・ツアー』撮影時。以下同。

本作の前半、ほとんどのシーンで赤ん坊を抱えている。まだ保育園に通う男の子の手を引きながら、母親役を熱演する。でも作品が進むにつれて、子を愛し「母性」を生き抜くというよりも、ひとりの人間として「したたかに」スリルを感じながら人生の楽しみ方を見出していくような役柄であることがわかる。清楚なのに強く、強いけれども揺らぎがある微妙な心情の主人公を、自然に演じきれる。それが有村架純の実力だと思う。

「実は『ハガネの女 season2』(2011年)でもご一緒していましたが(同じシーンはなかった?)、当時もいまも有村さんは、作品にとってベストの場所にご自身を置く人でした。今回は特徴的な状況の母親という役に向き合いながらも、その役柄だけに飲まれず、ひとりの人間の痛みや強さを丁寧に残していく。
このポートレートは、撮影の谷間にひっそりと撮らせていただきましたが、役柄と有村さんの中間のような、もしかしたらば、現場中の共演者にしか切り撮れなかったであろう、絶妙かつベストな表情、瞬間をカメラに向けて下さいました」(齊藤)

おそらく、レンズを通して見る有村架純は、クリエイターからすると無数のメッセージを受け取れる人物なのだろう。『マジカル・シークレット・ツアー』のラストも、冒頭シーンと同じようにバスの車窓越しに有村の表情をカメラが捉える。彼女が演じた役柄が、何を得て、何を失ったか。本作のメッセージを背負ったラストの表情には、観客に対しても無数のメッセージを投げかけている。

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