1. トップ
  2. ファッション
  3. ディオールから新香水。フランシス・クルジャンが紡ぐ、記憶をひらく新たな楽園「ディオール パラダイス」

ディオールから新香水。フランシス・クルジャンが紡ぐ、記憶をひらく新たな楽園「ディオール パラダイス」

  • 2026.5.21

ディオールの特別なフレグランス「ラ コレクシオン プリヴェ」から誕生した新作「ディオール パラダイス」。南仏の庭園に息づく記憶と光を香りへと昇華したのは、ディオールのパフューム クリエイション ディレクターのフランシス・クルジャンだ。アーモンドを核に、春のはじまりの空気や生命の芽吹きを表現した香りは、どのようにして生まれたのか。クリスチャン・ディオールの記憶と向き合いながら、クルジャンが見出した“楽園”のかたちに迫るインタビュー。

光に満ちた楽園の記憶、新フレグランス「ディオール パラダイス」

ラ コレクシオン プリヴェ クリスチャン ディオール ディオール パラダイス(オードゥ パルファン) 50ml ¥25,300 100ml ¥45,100, 200ml ¥63,140 5/20先行発売 5/29発売予定 Dior Courtesy of Dior

クリスチャン・ディオールにとって南フランスは、創造の源であり、心身を解き放つかけがえのない場所だった。太陽に照らされた花々と木々が広がるその光景は、まさに“地上の楽園”。その記憶をすくい上げるように、甘美なアーモンド シロップに、温もりを感じさせるウッド、そして魅惑的なトンカビーンが重なり合い、やわらかな光を帯びたウッディ フローラルの香りを描き出す。

着想の源となったのは、南仏グラース郊外に佇むラ コル ノワール城。ムッシュ ディオールが愛し、安らぎとインスピレーションを見出したこの庭園には、ジャスミンやローズ、ラベンダーが咲き誇り、なかでも冬の終わりに花開く何百本ものアーモンドの木々が、息をのむような光景を生み出していたという。ディオール パフューム クリエイション ディレクターのフランシス・クルジャンは、その記憶と情景を香りへと昇華し、幼少期の楽園と自然の再生を思わせる、光に満ちた余韻を紡ぎ出した。まるで、春のはじまりの光に包まれるように、穏やかで幸福な感覚へと誘うフレグランスだ。

ムッシュ ディオールにとって特別な場所。“失われた楽園”を香りで描き出す

南フランスのラ コル ノワール城 Courtesy of Dior, PHOTO:JEAN-MARIE BINET

――「ディオール パラダイス」は、クリスチャン・ディオールが南仏で過ごした日々に、香りでオマージュを捧げたいという想いから生まれたと語っておりましたが、記憶を香りで表現するうえで、アーモンドがなぜ鍵になりましたか。

アーモンドの花に着目したのは、その香りの美しさだけでなく、春のはじまりを告げる象徴的な存在だからです。白く可憐な花を咲かせるアーモンドは、まさに再生やルネッサンスを思わせるもの。その香しさを核に据えながら、ウッディなニュアンスを重ねることで、花の“白さ”や、春のやわらかな光のイメージを香りとして表現したいと考えました。
ちょうど最近、日本にいる友人から満開の桜の写真が届きました。春の訪れを告げる花が咲く瞬間に宿る高揚感や、待ちきれないほどの期待、そして心を揺さぶるような感動——そうした季節のエモーションも、この香りの中に落とし込んでいます。春という特別な時間がもたらす魅力そのものを、香りとして閉じ込めたかったのです。

――この香りは、ラ コル ノワール城の庭園にまつわるムッシュ ディオールの記憶や感情を紐解くことから生まれたのではないかと感じました。そうした彼の記憶を読み解く過程のなかで、どんな人物像が見えてきたのでしょうか。

特別に新しいクリスチャン・ディオールを発見した、という感覚はありませんでした。ただ、あらためて彼の言葉や記憶を読み解くなかで強く感じたのは、彼がいかに“記憶”というものをプルースト的に考えていたか、という点でした。彼はノスタルジーの中に多くのインスピレーションを見出しながら、それに安住するのではなく、ファッションや流行、香水を創り出すことで、常にそれを乗り越えようとしていた。

ラ コル ノワール城や庭園の美しさは、彼にとってかけがえのないものであると同時に、“失われた楽園”として自身の内面で昇華されて行ったのだと思います。彼は生涯を通じて、幼少期を過ごしたグランヴィルの庭園に、失われた楽園を再現しようと努めました。 そしてラ コル ノワール城の庭園こそが、彼の求める究極の形だったのです。幼少期の楽園の記憶を呼び覚ますよう、細部に至るまでこだわり抜いて設計されたものでした。プルーストの『失われた時を求めて』が示すような“失われた時間”と、ディオールが抱いていた“失われた楽園”のイメージがどこかで響き合う——そんな感覚を手がかりに、この香りを創り上げました。

――「ディオール パラダイス」という名前に込められた“パラダイス”とは、具体的にどのような風景やヴィジョンなのでしょうか?

まさに、みなさまの手元にあるこの香りそのものが“パラダイス”だと考えています。私は調香師なので、風景やヴィジョンを言葉で描くのではなく、香りによってパラダイスを表現したいと思いました。その結果として、このフレグランスが生まれたのです。

「ディオール パラダイス」は、陽光を閉じ込めた。アーモンドとシトラスの融合

Courtesy of Dior

――今回の香りは“春の光”がテーマのひとつだと伺いましたが、その光や季節感はどのように香りで表現されているのでしょうか。

たとえば、マンダリンのようなシトラスの香りによって、みずみずしいフレッシュさを表現しています。また、アーモンドにはほんのりとグリーンを感じさせるニュアンスがあり、そこにグルマン調のやわらかな甘さが重なります。芽吹いたばかりのアーモンドの少しカリッとした食感まで想起させるような香りですね。そうした要素を組み合わせることで、春の光や生命が芽吹く瞬間の気配を香りとして描き出しています。

――思い描いた“パラダイス”を表現するうえで、特に使いたいと考えた香料はありましたか。

まず最初に思い浮かんだのは、やはりアーモンドです。クリスチャン・ディオール自身がこの木をとても愛し、その香りにも深い愛着を持っていたと聞いています。特に1950〜60年代は、アーモンドは非常にポピュラーな香りでもありました。そうした彼のアーモンドへの想いが、この香りの出発点になっています。

その後は数週間かけて、さまざまな要素を加えたり、ときには引き算をしたりと試行錯誤を重ねながら、全体のバランスを組み立てていきました。これは今回に限らず、いつも行っているプロセスですが、そうして少しずつ、この香りの構成を完成させていったのです。

フランシス・クルジャン氏 Courtesy of Dior, PHOTO:JEAN-MARIE BINET

――最後に、クルジャンさんにとって香りを創ることとは、どのような意味を持ちますか?

私にとってクリエイションは、決してメランコリックなものではありません。むしろ、未知の世界へとつながっていく、とても前向きなプロセスだと捉えています。香りをつくるという行為は、新しい感覚や可能性を切り拓いていく、未来へ向かう創造だと思っています。たしかに簡単な作業ではありませんが、決して苦しいものではなく、むしろ軽やかに、幸せを感じながら、楽しんで向き合っています。

南仏の光に包まれた庭園の記憶、そして春の訪れを告げる生命の気配——それらを香りというかたちで結晶化させた「ディオール パラダイス」。プルースト的な記憶をたどりながらも、いまこの瞬間にひらかれる“新たな楽園”として描き出されたこのフレグランスは、まとう人それぞれの中にある温かな幸福の記憶をそっと呼び覚ましてくれるはず。

問い合わせ先/パルファン・クリスチャン・ディオール 03-3239-0618
https://www.dior.com/ja_jp

元記事で読む
の記事をもっとみる