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「スト6」ウメハラ、MenaRDの挑戦に敗北——「獣道」4年半ぶり開催も75分遅延・誤表示連発で運営に批判も

  • 2026.5.14

2026年4月29日に川崎のCLUB CITTAにて、対戦格闘ゲームのイベント「Evo LEGENDS LIVE(EVO LL)」が開催された。

MenaRDの挑戦状から始まったウメハラとの10先勝負

EVO LLは、2025年2月にドミニカ共和国のプロゲーマーであるMenaRD選手からXに投稿された挑戦状をきっかけに行われることになった。ウメハラ選手が得意とする10先(10本先取)での勝負をしたいと懇願し、CAPCOM CUP12でのストリートファイターリーグ ワールドチャンピオンシップでの直接対決を経て、満を持して開催されることとなった。

会場となったCLUB CITTA
会場となったCLUB CITTA
無敵時間の物販ブース
無敵時間の物販ブース
REJECTの物販ブース
REJECTの物販ブース
MenaRD選手とウメハラ選手の歴史年表が掲示
MenaRD選手とウメハラ選手の歴史年表が掲示

10先ルールはウメハラ選手が主催するイベント「獣道」のレギュレーションであったが、今回は獣道ではありながら、EVOが主催する「Evo LEGENDS LIVE」としての開催となった。獣道はこれまでに4回開催されており、2021年12月に開催した獣道IVから4年半ぶりの開催だ。

獣道は毎回3カードの対戦(獣道IVのみ4カード)の対戦が行われており、今回のEVO LLもウメハラ選手対MenaRD選手戦以外にも、『餓狼伝説 City of the Wolves(餓狼CotW)』でラギア選手とGO1選手が、『鉄拳8』でアルスラーン・アッシュ選手とチクリン選手が対戦する。『餓狼CotW』と『鉄拳8』は7先での勝負となる。

1試合目『餓狼CotW』、SWC王者ラギアにGO1がフルセットで雪辱

1試合目は『餓狼CotW』での対決。2025年SNK World Championship(SWC)で優勝し賞金150万ドル(約2億3000万円)を獲得したラギア選手と、ESPORTS WORLD CUP(EWC)で優勝したGO1選手による『餓狼CotW』の頂上決戦といえるカードだ。対戦はGO1選手が予想通りのマルコを選択するも、ラギア選手は予想されたほたるではなく牙刀を選択。6-6のフルセットからフルラウンドまで持ち込まれ、最後はGO1選手が勝利を収めた。

【写真】世界王者対決はGO1選手が勝利。SWCでの雪辱を果たした
【写真】世界王者対決はGO1選手が勝利。SWCでの雪辱を果たした

2試合目『鉄拳8』、アッシュの3度のキャラ変更をチクリンが封殺

2戦目は『鉄拳8』で対決。『鉄拳8』はEVO(ラスベガス)とEVO Japanで7度の優勝を記録するアルスラーン・アッシュ選手が登場。EVO Japanの第2回大会で吹き荒れたパキスタン旋風の立役者だ。かたやチクリン選手は日本を代表する鉄拳のプロプレイヤー。そのパキスタン勢を倒しTekken World Tourで優勝し、『鉄拳8』とタイトルが変わってからのEVO Japanでも優勝した。

ただ、そのときのEVO Japanはパキスタン勢が参加しておらず、EVOで無類の強さを誇るアッシュ選手不在での優勝でもあった。対戦はチクリン選手は予想通りクライヴを使用。アッシュ選手は予想を裏切りザフィーナを選択。しかし、チクリン選手はこの奇策をものともせず連勝。そこでアッシュ選手は得意キャラのニーナにスイッチ。しかし、ここでもチクリン選手の勢いを止められず、ニーナで3連敗を喫す。

アッシュ選手はここでさらにキャラクターチェンジ。なんとこれまた予想外のアリサ。ザフィーナはまだ練習していたという話もあったが、アリサを使っていた情報はなく、これにはチクリン選手も面食らった様子だ。この奇策が功を奏し3連勝で一気に勝差2まで追いつく。なんとかアリサを攻略したチクリン選手は6勝となり、マッチポイントを迎える。対して、アッシュ選手はすかさずキャラクターチェンジ。今度はレオを選択する。3回目の奇策はチクリン選手に通じず、6-3でチクリン選手が勝利した。

勝利をかみしめるチクリン選手
勝利をかみしめるチクリン選手

メインイベント、ウメハラ対MenaRDは10-6でMenaRDに軍配

メインイベントは『ストリートファイター6(スト6)』のウメハラ選手(豪鬼)対MenaRD選手(ブランカ)の10先の戦い。5セット終了毎に1P側と2P側を交代し、コーチングはなく、インターバルの時間もかなり短い。ここまでに準備したものをすべてさらけ出して戦うレギュレーションだ。

EVO Legends FT10(10先)のルール
EVO Legends FT10(10先)のルール

対戦はウメハラ選手が絶妙な間合いから差し返しや相手のドライブラッシュを止めてからの反撃が決まり、幸先よく2連勝する。しかし、ここからMenaRD選手が反撃の狼煙を上げるとあっという間に5連勝で大逆転を決める。ウメハラ選手が思っていた以上に波動拳の対策ができており、苦しい展開に。

MenaRD選手待望の10先が始まった
MenaRD選手待望の10先が始まった
盟友であるオオヌキさんとコクにいさんも全力応援
盟友であるオオヌキさんとコクにいさんも全力応援

ここでメモを再確認するウメハラ選手。ここで1セットもぎ取るも試合を制しているのは依然MenaRD選手。この状況に活路を見いだしたのはダウンしたあとのOD昇龍拳による逆択。アグレッシブに攻めてくるMenaRD選手には刺さりまくり、5-5と追いつき、さらに6-6と互角で終盤戦に突入。しかし、反撃もここまで、ここから4連勝でMenaRD選手が勝利を収めた。

勝利したのはMenaRD選手
勝利したのはMenaRD選手

EVOをはじめ、各大会で好成績を残すMenaRD選手はまさに絶頂期にあると言える。ウメハラ選手が試合前に「今が全盛期だから」と発言したものの、『スト6』になってから『SFV』で見せた精彩は欠いている。それでも最強のプレイヤーからの挑戦を真っ向から受け、できる限りの準備をし、残した結果が10-6だった。

獣道は結果がすべて。これまで倒してきた相手と同様にウメハラ選手は獣道の舞台から去るのみなのだ。会場で観戦した人、配信で観戦した人、すべてがこの試合を観てよかったと思うことだろう。筆者も取材できたことを誇りに思っている。この挑戦したMenaRD選手に、受けて立ったウメハラ選手に、そして対戦の場を作ってくれたEVOに感謝したい。本当に感謝しかない。

ウメハラ選手にサインをしてもらったTシャツを掲げるMenaRD選手
ウメハラ選手にサインをしてもらったTシャツを掲げるMenaRD選手

「獣道」を冠する違和感。因縁なきエキシビションの様相

最高の試合を観たうえでも、違和感を覚えるイベントでもあったのは確かだ。その点についても言及していきたい。

各試合とも拮抗した内容で見応えのある対戦だということは誰の目にも明らかだろう。ただ、これが獣道であるかというとやはり疑問だ。試合終了後にMenaRD選手が「勝敗はどうでもよかった。ウメハラ選手と10先をやることに意味があった」と言ったことは本当の気持ちだろう。その点ではウメハラ選手もMenaRD選手の挑戦を受けたという時点で、その役目を終えていると言える。

ただ、獣道の本筋としては負けたらすべてを失う、負けるわけにはいかない戦いという理念がある。そしてお互いに負けられないだけの因縁がある。挑戦を受けたほうはリスクマッチであり、受けないほうが得というのもある。それだけに、これまでの獣道の多くの戦いでは、負けた選手の落胆っぷりが見ていられない状態だったが、今回負けた3選手ともそこまでの悲壮感は感じ取れなかった。

ウメハラ対MenaRD以外の2戦もこれまで獣道の対戦であった因縁じみたものも薄かったように感じる。Evo LEGENDSというタイトルの通り、EVOで活躍した実力者によるエキシビションマッチの様相が強かった。実際、MCのライアン・ハートさんがエキシビションマッチと発言してしまったことは実態を表しているのだろう。

出場選手にも獣道の理念が浸透していたかも疑問だ。『鉄拳8』のチクリン選手はともかく、アルスラーン・アッシュ選手はチクリン選手に対してそこまでの因縁を感じているようには思えず、獣道の本質をわかって出場したかも怪しい。勝っても負けても笑みを浮かべ、ともすればEVO Japan本戦前の余興にしか感じていなかったのかもしれない。これは憶測なので、実際は違っていたら申し訳ない。ただ、そう感じとれた。

ころころキャラクターを変えるアッシュ選手。この対戦に準備してきているかどうか疑いたくなる行動だった
ころころキャラクターを変えるアッシュ選手。この対戦に準備してきているかどうか疑いたくなる行動だった

『餓狼CotW』の対戦も昨年の世界大会であるEWCで優勝したGO1選手とSWCに優勝したラギア選手の頂上対決となったが、こちらも因縁じみたものは汲み取れなかった。因縁じみたものを感じるカードとしては、現状だとジョニィ選手対すーも選手との対戦が頭に浮かぶ。やはりこのレベルの因縁が獣道の対戦カードには必要だと感じた。

ステージ演出も普通の対戦イベントと変わらないものだった。これまでの獣道はゲームセンターを使用したという不可抗力によるものだが、対戦台の周りに観戦者が集まり、実況もすぐ脇で立って行われていた(前回の獣道Ⅳはコロナ禍であり、無観客でRed Bull Gaming Sphere Tokyoで行われたのでこれに当てはまらない)。まるでランバージャックデスマッチのように逃げ出すこともできない場で多くの観客に監視された状態でプレイする緊張感は、いくら人数が多くなっても表情が見えない観客に見られての対戦とは全く違うものだろう。

一般客をステージに入れることは無理だとしても、練習に付き合った数多くのプレイヤーが周りを囲み、その中でプレイすることはやってもよかったのかも知れない。そういう意味では今回は純粋な獣道ではなく、あくまでも「Evo LEGENDS」だったのだろう。

75分の開演遅延、画面表示ミス…目立った運営の課題

試合の素晴らしさと相反して運営の劣悪さが目立ってしまったイベントでもあった。音声トラブルにより75分も開演が遅れたうえ、そのことについて現地も配信もアナウンスは一切なく、待たされる状況となった。

現地では配信されている画面に加え、左右に大きく選手名と選手の顔が映し出されており、大型スクリーンの前で選手の対戦台が用意されていた。配信画面のワイプで映し出された選手の顔と選手名、1P側、2P側、そしてトータルの勝敗数は合っていたが、現地のみにあった選手名と選手の写真はその逆となっており、対戦台にいる選手も配信画面とは左右が逆になっていた。遠目に見ていた観客にとっては右側にいる選手は結局どっちの選手なのかわかりづらい状況だった。ウメハラ対MenaRD戦は5セット毎に席の入れ替えをしていたが、大型スクリーンの表示も実際の座席と逆になるように入れ替わってしまっていた。

ステージ上の対戦台は右がGO1選手、左がラギア選手。大型スクリーンの左右に表示された顔写真と名前も一致している。ただ、配信されている部分のワイプは右がラギア選手で左がGO1選手。1P側はGO1選手が使うマルコで、2P側はラギア選手が使う牙刀。そして画面下の勝敗表示も右がラギア選手で左がGO1選手。右と左の情報が混在しており、気持ちの悪い表示に
ステージ上の対戦台は右がGO1選手、左がラギア選手。大型スクリーンの左右に表示された顔写真と名前も一致している。ただ、配信されている部分のワイプは右がラギア選手で左がGO1選手。1P側はGO1選手が使うマルコで、2P側はラギア選手が使う牙刀。そして画面下の勝敗表示も右がラギア選手で左がGO1選手。右と左の情報が混在しており、気持ちの悪い表示に

MenaRD選手が9セット目を獲得し、マッチポイントとなった試合は実況やゲーム音によって試合が開始されたことがわかったが、画面は真っ黒のまま。しばらくして画面が表示されたと思ったら、ゲーム画面の一部がズームアップした状態で表示された。また、最後の最後で「WINNER DAIGO」という誤った表示を出してしまうトラブルもあった。

ウメハラ選手紹介時の経歴。最上部の2010年のタイトルがSUPER STREET FIGHTER 6と存在しないタイトルに
ウメハラ選手紹介時の経歴。最上部の2010年のタイトルがSUPER STREET FIGHTER 6と存在しないタイトルに
最終試合が始まると同時に会場のスクリーンは真っ黒に。プレイヤーの画面がちゃんとゲーム画面になっており、試合が始まっているのがわかる
最終試合が始まると同時に会場のスクリーンは真っ黒に。プレイヤーの画面がちゃんとゲーム画面になっており、試合が始まっているのがわかる
スクリーンに画面が復帰したと思いきや、なぜか選手の顔や勝敗数のオーバーレイはなくなっており、ゲーム画面も一部を拡大した画面になっていた
スクリーンに画面が復帰したと思いきや、なぜか選手の顔や勝敗数のオーバーレイはなくなっており、ゲーム画面も一部を拡大した画面になっていた
エンディングセレモニー終了後、実況解説の2人にマイクが移されたときに、スクリーンにはWINNER DAIGOの文字が
エンディングセレモニー終了後、実況解説の2人にマイクが移されたときに、スクリーンにはWINNER DAIGOの文字が

エンディングも進行に戸惑いが見られた。MenaRD選手とウメハラ選手のインタビューやセレモニーが行われたあと、締めのあいさつもなく、ステージから実況席に切り替わったが、どのタイミングで締めをしていいのかもわからなかった状態だった。

先ほどの開始遅延や締めのあいさつなど、MCや実況以外に、会場アナウンスを用意すべきだっただろう。「本日のプログラムはこれですべて終了です。忘れ物なきよう手荷物をお確かめのうえ、気をつけてお帰りください」のひと言を入れれば済む話だ。結局、終わったのか終わってないのかよくわからない状況の中、三々五々に会場をあとにするしかなかった。

ウメハラ選手は「今回は準備する時間が多くあったので」と発言していたが、運営も同じだけ準備する時間はあったのではないだろうか。もちろん、企業である以上、ほかの仕事をしていたと言うのが現実だろう。しかし、そうだとしても準備不足を感じさせる結果となってしまったのは、惜しまれるところだ。

獣道は対戦格闘ゲームのみならず、対戦ゲームのイベントとしてもかなり異質で、それだけに多くの人を引きつけてきた。その本質を大切にしつつ、今後の運営改善に期待したい。

著者プロフィール・岡安学

ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。イベント取材をはじめ、法律問題、マーケットなど、多角的な切り口でeスポーツを取り上げる。さまざまなゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『ゲームビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)、『みんなが知りたかった 最新eスポーツの教科書』(秀和システム)などがある。

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