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建築好きカメラマンが撮る、「東京建築祭2026」の名建築5

  • 2026.5.7
YOSHIHARU HARADA

建築を愛するカメラマン・原田義治が、「東京建築祭2026」に参加する名建築を独自の視点で撮り下ろし。なぜその場所に惹かれたのか、撮って何を感じたのか、そしてインスタグラムではどこを切り取るのか。写真家の視点から、建築の新たな魅力と“撮り方”のヒントを探る。


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旧岩崎邸庭園/上野・本郷・湯島

1896年(明治29年)、三菱財閥3代目・岩崎久彌の本邸として建設。設計は英国人建築家ジョサイア・コンドル。洋館はジャコビアン様式を基調とし、室内にはイスラム風の意匠も取り入れるなど、多様な装飾が融合している点が特徴で、敷地内には、接客空間としての洋館と、日常生活の場であった和館が渡り廊下で結ばれ、異なる生活文化が共存する構成をなす。庭園はかつて池泉回遊式庭園を擁していたが、現在は芝庭を中心とした開放的な空間となっている。明治期の上流階級の生活様式と、和洋折衷の建築思想を伝える貴重な文化財である。

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Q1.この建築のどこに惹かれましたか?

「外観の美しさに加え、当時の暮らしや細部の装飾、素材や意匠に込められたこだわりを体感できる点に惹かれました。また、渡り廊下を通じて書院造の和館へと連続し、日本建築の美を一体として味わえる構成も魅力です」(原田さん)

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Q2. 実際に撮ってみて、何を感じましたか?

「細部のデザインに強く惹かれ、自然と被写体に寄っていく感覚がありました。いわゆる“映え”とは異なるかもしれませんが、個人的には記録としてデザインを丁寧に残したいと感じました」(原田さん)

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Q3. インスタグラムではどこを切り取る?

「左右対称や面の構成に魅力を感じるため、東側正面を軸に撮影しました。感覚的に撮ることも大切ですが、自分の『好き』を言語化することで新たな視点が得られるとも感じています」(原田さん)

旧岩崎邸庭園
東京都台東区池之端1-3-45

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NOVARE Archives(清水建設歴史資料館)/潮見

2023年に竣工し、2024年3月より運営を開始した清水建設の展示・アーカイブ施設。敷地内には、同社二代目店主・二代清水喜助が手掛けた「旧渋沢邸」が青森から移築・復元されており、本施設はその歴史的建築に隣接する形で計画された。内部では模型や資料を通じて同社の建築の系譜を俯瞰でき、上下階で異なる視点から「旧渋沢邸」を眺められる構成が特徴。外装には3DスキャンとAI技術を活用したパネルを採用するなど、最新技術によって建築の記録と継承を可視化。歴史的建築と現代建築が対比的に共存し、過去と未来をつなぐ拠点となっている。

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Q1.この建築のどこに惹かれましたか?

「清水建設の歴史やプロジェクトを模型を通して学べる点に加え、1階と2階で異なる視点から旧渋沢邸を俯瞰できる構成に面白さを感じました」 (原田さん)

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Q2. 実際に撮ってみて、何を感じましたか?

「一見シンプルな黒い外壁に見えましたが、旧渋沢邸の床柱を3DスキャンとAIで再現し、手彫りの鑿(のみ)の跡まで表現していると知り、技術と意匠の融合に驚きました」 (原田さん)

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Q3. インスタグラムではどこを切り取る?

「外観を撮影しました。直線と曲線が同時に存在する構成にリズムを感じ、その関係性を意識して切り取りました」(原田さん)

NOVARE Archives(清水建設歴史資料館)
東京都江東区潮見2-8-20

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パレスサイド・ビルディング/神田・九段

1966年竣工。設計は日建設計の林昌二。皇居に面した細長い敷地に対応し、2棟の長方形オフィス棟を東西にずらして配置し、両端に巨大な白い円筒形コアを配している。この円筒コアとともに、水平に走るルーバー(ひさし)、縦に連なる雨どい、ガラス面との組み合わせが外観の特徴で、日本の戦後モダニズムを象徴する建築として評価される。オフィスや商業機能に加え、毎日新聞社の拠点としての役割も担い、その合理的な計画は以後のオフィスビルの原型となった。日本近代建築の代表作である。

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Q1.この建築のどこに惹かれましたか?

「白い円筒コアを中心に、ガラスや雨どい、水平ルーバーが交差する外観の造形に強く惹かれました。また、屋上からの眺望は都心にいることを忘れるほど開放的です」(原田さん)


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Q2. 実際に撮ってみて、何を感じましたか?

「モダニズム建築でありながら現在も使われ続けていることで価値が更新され、古さを感じさせない造形であることを実感しました」 (原田さん)

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Q3. インスタグラムではどこを切り取る?

「象徴的な円筒形コアと、その背後に広がる丸の内のビル群を重ねて撮影しました。異なる時代の建築が重なる構図に魅力を感じました」(原田さん)

パレスサイド・ビルディング
東京都千代田区一ツ橋1-1-1

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港区立郷土歴史館/品川・三田・白金

1938年、内田祥三の設計により公衆衛生院として建設された建築で、「内田ゴシック」と呼ばれる独自の様式を示す。スクラッチタイルの外壁、ゴシック調アーチ、左右対称の構成が特徴で、重厚かつ端正な外観を持つ。2002年に公衆衛生院が改組・移転した後、2009年に港区が取得し、歴史館を中心とする複合施設として2018年に保存・再生された。文化財としての価値を維持しつつ、耐震補強や設備更新を行い現代的に再生された点も重要。近代建築の保存活用の好例として評価されている。

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Q1.この建築のどこに惹かれましたか?

「これまで誌面で見てきた『内田ゴシック』を、実際の空間として体験できたことが印象的でした。スクラッチタイルの質感や、正面から見た際の強い対称性に圧倒されました。また、エントランスから続く中央ホールと吹き抜けの構成にも惹かれました」(原田さん)

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Q2. 実際に撮ってみて、何を感じましたか?

「旧講堂は当初の姿をよく残しており、満席の状態でこの空間を見上げたときの光景を想像させる力がありました。建築が持つ時間性を強く感じました」 (原田さん)

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Q3. インスタグラムではどこを切り取る?

「ガラス越しに外観を撮影しました。フィルターのように一層介在することで、空間にわずかなニュアンスの変化が立ち上がります」(原田さん)

港区立郷土歴史館
東京都港区白金台4-6-2 ゆかしの杜内

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カナダ大使館/六本木・赤坂・青山

1991年竣工。日系カナダ人建築家レイモンド・モリヤマによる設計で、カナダ政府の外交拠点として計画された。建築はカナダの自然観と日本の美意識を融合した空間構成が特徴で、敷地内には「カナダ・ガーデン」をはじめ、ギャラリーや図書館、シアターなど文化交流機能を備える。外交施設としてのセキュリティや機能性を満たしつつ、開放的で人を受け入れる空間を両立している点に特徴がある。都市の中で文化と外交を媒介する建築として位置づけられる。

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Q1.この建築のどこに惹かれましたか?

「石造を基調としたモダンな外観と、4階から赤坂御用地へと抜ける視界の広がりに惹かれました」 (原田さん)

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Q2. 実際に撮ってみて、何を感じましたか?

「初めて大使館という場を訪れ、直線的でシャープな構成から、美術館のような印象を受けました。4階の『カナダ・ガーデン』では、オブジェに意味が与えられ、日本庭園へとつながる構成の中に、両国の文化的関係性が表現されていると感じました」 (原田さん)

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Q3. インスタグラムではどこを切り取る?

「地下のシアター空間を撮影しました。配置や反復、並びを意識することで、構成そのものを強調できると考えています」(原田さん)

カナダ大使館
東京都港区赤坂7-3-38

原田義治(Yoshiharu Harada)

北海道札幌市出身。長山一樹氏に師事し、2025年に独立。ファッションや広告撮影に携わる傍ら、ライフワークとして日常の風景や建築のスナップを撮り続けている。建築を「日常において最も身近な芸術」と捉え、時間や光によって変化する表情を独自の視点で切り取る。無機質な空間の中に潜むわずかな色彩や温度をすくい上げる、静かで緊張感のある表現を得意とする。

東京建築祭2026
会期/2026年5月16日(土)〜24日(日)※特別公開:5月23日(土)、24日(日)
開催エリア/上野・湯島・本郷 、神田・九段、日本橋・京橋、大手町・丸の内・有楽町、銀座・築地、新橋・竹芝・芝浦、品川・三田・白金、六本木・赤坂・青山、渋谷(※新規追加)、その他

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