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「やっぱりな…」好奇心で訪れた《噂の場所》で目にしたのは“ある物”で埋め尽くされた…後輩2人が二度と口にしなかった戦慄の体験

  • 2026.5.5
写真はイメージです。提供:アフロ

北九州で書店員を務めるかたわら、2016年から実に10年間、生配信サービス「TwitCasting」で恐怖の実話怪談を語り続けてきた、ホラーチャンネル「禍話(まがばなし)」の語り手・かぁなっきさん。多くのホラー作家たちもファンを公言している同番組は、これまでにドラマ化や書籍化も果たすなど、令和のホラー界隈を牽引してきました。

今回はそんな禍話から、名作として名高い「アイスの森」をご紹介します。大学の先輩と共に訪れたいわくつきのスポットで巻き起こる恐怖とは――。


『立入禁止』『防犯カメラ作動中』

写真はイメージです。提供:アフロ

フロントガラスの上でぶら下がる色あせた芳香剤。

少し背の低いワンボックスのドアを開けると、甘ったるい匂いとどこか懐かしい車内の空気が流れ出してきました。TさんとYさんが後部座席に体を押し込んでいると、前部シートのポケットに無造作に詰め込まれた懐中電灯が目につきました。

「先輩、この懐中電灯まだ持ってたんすね~」

以前、心霊スポットに行った時に買ってそのままになっていた懐中電灯。Tさんは先輩と遊んでいた日々が今日で最後なのを噛み締めていました。

夜の駐車場に響く低いエンジン音。

大学の敷地を抜けて薄暗い道を駆け抜けていく道中、窓の外に見えていたコンビニやアパートの明かりは、たちまち畑や木々の影に置き換わっていきました。

車内に流れるローカルラジオ局の音楽を聴きながら昔話で盛り上がっていると、いつしか車は山道をぐるぐると登り始めていたそうです。

「お、多分アレかも……」

O先輩がおもむろに車を山道の脇に停めると、ヘッドライトに照らされた先に「立入禁止」「防犯カメラ作動中」などと書かれた貼り紙、そして錆びた金網で仕切られた森の奥に続く山道の入り口が見えました。

驚くほど真っ暗な山道で…

写真はイメージです。提供:アフロ

その山道は驚くほどに真っ暗で、人里とは明らかに違う静けさと寒さが周囲を完全に包み込んでいたそうです。

「……マジで誰もいないな」

「うん。てか、こんなに人気ないとさっきの貼り紙があったことの方が逆に違和感あるな」

懐中電灯を持つTさんと、自身のスマホのライトで周囲を照らしているYさん。

「確かに。『監視カメラ作動中』って、どこにカメラあるんだよ」

後ろを歩く2人の明かりに照らされていたO先輩。

「もう廃墟みたいになってるってことなんすかね。これなら人に見つかることもなさそう」

「心霊スポットなのにそっち警戒してんのかよ」

「いや、大事ですよ、そこは!」

軽口を叩きながらしばらく山道を歩いていたそうですが、次第に周囲のあまりの静けさと、ただただ鬱蒼とした森の景色に飽きが来始めたそうです。

「アイスの森って言われてもなぁ~」

「今のところアイス要素ゼロのただの森ですね」

「これ、ワンチャンOBの先輩に騙された説も出てきたな……」

「やっぱそうっすよね……俺、言わないようにしてましたけど、100パー騙されてるって思ってましたよ」

「もっと早く言えよ、それ! だいぶ歩いて来ちゃっ……おっと」

O先輩が何かに足を取られたようによろけ、懐中電灯の丸い光の輪からパッと姿を消しました。

後輩2人が足元に見たものは…

「ちょっ……大丈夫ですか?」

「いや、なんか足に当たって……」

TさんとYさんが先輩の足元を照らすと、一本の小さな木片のようなものが転がっているのが見えました。

『たまちゃん』

細長い木片には、黒い手書き文字でそう書かれていました。

「なんだこれ……」

しゃがみこみ木片を手にとってまじまじと眺めているO先輩と、彼を照らしているYさん。そして、訝しがる2人の少し後ろにいたTさん。

写真はイメージです。提供:アフロ

ふと彼が懐中電灯を周囲に向けると、それは闇夜にぼーっと浮かび上がったのです。

「え……ちょっと2人とも! これ!」

平べったく、両端が丸く削られた同じような細い木片。それが周囲の地面にボコボコと突き刺さっていました。

『ぴーちゃん』
『ムギ』
『マロン』
『きなこ』

「これ……お墓、ですかね?」

「……うっ」

Tさんの言葉を聞いて、慌てて持っていた木片を放り投げたO先輩。

「これ、アイスの棒だ。“アイスの森”ってそういう……」

「……誰かがペットを違法に埋めていた場所ってことなんすかね」

「ちゃんとお墓作ってやればいいのに、アイスの棒って……」

ふと、O先輩がジーンズのポケットからスマホを取り出しライトを点け、山道の向こうをパッと照らしました。

先輩が照らした先に見えたのは無数の…

写真はイメージです。提供:アフロ

「どうしたんすか?」

「……やっぱりな。向こう見てみ」

「え?」

照らされた道の先には、アイスの棒がまだ無数に地面から突き出していたのです。

「うわ! こ、これ1人じゃなくて、何人も埋めに来てないとおかしい数ですよ!!」

じっとりと心に忍び寄る恐怖とは裏腹に呼び起こされる好奇心。それに突き動かされてしまった3人は、恐る恐るその足を山道の奥深くに進めてしまいました。

「……先輩、これ数異常じゃないっすか?」

「か、数もそうだけどお前、この名前もおかしいだろ」

『からす』
『みけねこ』
『いんこ』
『ぷーどる』
『からす』
『からす』
『いのしし』

ライトに照らされて次々と浮かび上がってくるアイスの棒たち。そこに記されていた名前は、もはやペットの名前ですらないものに変わってきていました。

サク、サク、サク、サク。

この森の先に何が待っているのか……――そんな薄暗い期待に先導されて、3人は暗い森の奥にどんどんと踏み込んで行ってしまったのです。

「こ、これ……いや、ねぇか……」

「なんだよ、言えよ」

「いや、さっき何人も埋めに来ているんじゃないかって言いましたけど、この書いてある文字、同じやつが書いてるっぽくないですか?」

「だとしたら完全にヤバいやつだろ……」

小声でそう話していたTさんとYさんでしたが、突然前を歩いていたO先輩が足を止めたことで会話が途切れました。

その時、3人の耳に聞こえてきたのは…

「どうしたんすか?」

「先輩?」

「……これダメだわ。これヤバいわ……」

先輩が照らしていた山道の先に目をやったTさんとYさん。その視線の先にはまた新たなアイスの棒がボコボコと群れを成して刺さっていました。

『どらいぶ』

『さんさいとり』

『きしゃ』

『かっぷる』

「これ…………」

そのとき、山道の左奥の暗がりから見知らぬ声がぬるりと耳に滑り込んできたのです。

「あー、きもだめしか」

めちゃくちゃに揺らめくライトの明かりと激しい呼吸音。

「うわぁぁぁああああ!!」

3人は叫び声を上げながら、転びそうになるのも厭わずに全力疾走で山道を駆け下りたそうです。

O先輩のワゴンに飛び乗り、Uターンをして山を降りて麓のコンビニに来るまで、誰も言葉を発しませんでした。

上ずった声を抑えながらTさんが口火を切ると、皆一斉に抱えていた胸の内を吐き出したそうです。

写真はイメージです。提供:アフロ

『嬉しそうな中年男性の声だった』、『ライトで一瞬照らしたはずなのに誰もいなかった』、『暗闇の中、音もなく俺たちのそばをつけていたのか?』、次々に吹き上がる疑問の答えが出るはずもなく、一同は青ざめたまま帰路に着いたそうです。

O先輩の卒業後、後輩たちの間でTさんとYさんはアイスの森に行った勇者として注目を集めたそうですが、そこへの行き先や何を見たのかについて、2人は決して語ることはありませんでした。

文=むくろ幽介

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