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「NHKの無双状態」「久々にハマったドラマ」10年前、実力派女優が32歳で挑んだ“難役”

  • 2026.5.9

ドラマや映画の中には、ありえない設定から人間の本音を照らし出す作品があります。今回は、そんな中から“実力派の名演が光るNHK作品”をテーマに5本セレクトしました。本記事ではその第3弾として、ドラマ『コピーフェイス~消された私~』(NHK総合)をご紹介します。

週刊誌記者が飛行機事故で重傷を負い別人の顔で生きることになる本作は、サスペンスでありながら、愛と正義の間で揺れる人の弱さを描いた作品です。栗山千明さんが32歳で挑んだ1人2役の魅力とはーー?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です 

※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ 

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「モエ・エ・シャンドン ”EFFERVESCENCE”」フォトコールセレモニー 栗山千明   (C)SANKEI
  • 作品名(放送局):ドラマ『コピーフェイス~消された私~』(NHK総合) 
  • 放送期間:2016年11月18日〜2016年12月23日 
  • 出演:栗山千明(広沢和花/朝倉芙有子 役)、佐藤隆太(朝倉柊二 役)、玉置玲央(朝倉洋人 役)ほか 

本作は、アメリカの作家サンドラ・ブラウン氏のサスペンス小説を原作にした全6回のドラマです。舞台は、陰謀が渦巻く美容外科クリニックです。

フリーの雑誌記者である広沢和花(栗山千明)は、朝倉クリニックの悪事を追うため、理事長夫人・朝倉芙有子に近づきます。しかし、芙有子と同じ飛行機に乗った際、事故に巻き込まれて重傷を負います。

救出された和花は芙有子と間違われ、最新の医療技術によって芙有子と瓜二つの姿に整形されました。記憶を失っていた和花は、しばらく理事長夫人として朝倉家で暮らしますが、やがて自分が本当は週刊誌記者だったことを思い出します。ここから物語は、他人の人生を生きながら真実を暴くのか、それとも愛した相手との暮らしを守るのかという選択へ進んでいきます。

具体的に印象に残るのは、和花が芙有子の遺品のパソコンを見つけ、編集者の橘慎一(鶴見辰吾)にパスワード解除を頼む場面です。その後、和花は芙有子のパソコンから朝倉クリニックの医療過誤に関する情報へ近づいていきます。

外見は理事長夫人でも、証拠を探る視線や判断は記者のままです。その二重性が、本作の緊張感をわかりやすく支えています。

別人の顔で生きる記者が、愛よりも真実を選ぶまで

本作の見どころは、登場人物の選択を一つずつ積み重ねていく丁寧さです。飛行機事故や全身整形、記憶喪失という要素だけを並べると非日常的ですが、NHKドラマ10らしく家族の食卓や病院内の会話を通して和花が少しずつ追い詰められていく過程が描かれています。

特に印象的なセリフは、最終回で和花が由麻に伝える「これから3人で暮らそうね」という言葉です。これは、柊二(佐藤隆太)が和花に改めてプロポーズした後、和花が娘の由麻(中川江奈)に向けて言った言葉です。

和花は自分が芙有子ではないと告白し、いったん朝倉家を出ました。さらに、病院側の弁護士から金銭と引き換えに記事を書かない誓約書への署名を迫られます。それでも和花は、佐枝子(田島令子)から柊二と洋人(玉置玲央)の出生の秘密を聞き、朝倉クリニックの不正隠ぺい事件を記事にしました。

その結果、記事は大きな反響を呼び、洋人は警察に連行され柊二は病院を辞めて本来望んでいた建築の道へ戻ります。つまり「これから3人で暮らそうね」は、単なる幸せな一言ではありません。

和花が記者として真実を書き、柊二が自分の人生を取り戻し、由麻を含めた3人が新しい家族として歩き出すことを示す言葉です。サスペンスの結末を、事件の解決だけでなく生活の再出発として見せている点に、作品の完成度を感じます。

栗山千明さんが32歳で挑んだ、記者と理事長夫人の1人2役

本作を“実力派の名演が光るNHK作品”として推したい最大の理由は、栗山千明さんの1人2役です。栗山さんは、真実を追うフリーの雑誌記者・広沢和花と、クリニック理事長夫人・朝倉芙有子を演じ分けています。

片方は不正を暴こうとする取材者で、もう片方は事件の鍵を握る理事長夫人です。同じ顔でありながら、立場も話し方も周囲から向けられる視線もまったく違います。

娘の由麻が熱を出した場面では、和花が母親の立場で看病し、柊二との距離が縮まりました。記者として証拠を探す一方で、目の前の子どもを放っておけない和花の表情が変わり、視聴者は和花が誰として生きようとしているのかを考えさせられます。栗山さんは、記者としての鋭さや母のように寄り添う柔らかさ、そして正体が露見する恐怖を一つの役の中で揺らして見せていました。

荒唐無稽に見える設定の中で、和花が真実を書き柊二が自分の道へ戻り由麻と新しい暮らしを始めるまでを見届けると、本作は単に顔が変わることを描いたドラマではないと感じます。愛だけに身を委ねるのではなく、愛する人のために真実を選ぶ物語だからこそ、栗山千明さんの1人2役が最後まで効いています。

SNSでは「NHKの無双状態」「つよすぎ」「久々にハマったドラマ」など称賛の声が続々。緊張感と温かさを同時に残す本作は、まさに“実力派の名演が光るNHK作品”と呼ぶにふさわしい一作です。ぜひ一度、和花の選択を見届けてみてください。


※記事は執筆時点の情報です