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かつて「区役所」で働く“公務員”だったトップ俳優。世界を震わせた「異次元」の存在感→日本人史上“2人目”の逸材

  • 2026.5.29

芸能界に入る前の意外な職業や、ユニークな人生の変遷を経て表舞台へと進んだ名優たち。多様な人生経験から培われた唯一無二の感性や、豊かな人間味がにじむ演技によって、観る者を魅了しています。今回は、そんな“異色の経歴を持つ俳優・女優”をテーマに、5名をセレクトしました。

本記事ではその第1弾として、役所広司さんをご紹介します。世界最高峰の映画祭で賞賛を浴び、今や日本を代表する名優として世界にその名が響き渡る役所さん。実は、かつてはごく普通の公務員として働いていたという意外な原点がありました。その驚きの経歴と、世界を魅了した至高の名演の秘密に迫ります―。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

公務員から名優へと至る転換点

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インタビュー 役所広司   (C)SANKEI

1956年1月1日、長崎県に生まれた役所広司さん。今や日本の映画界を背負って立つ存在である役所さんの原点は、意外にも区役所職員という、俳優とは無縁の職業にありました。高校を卒業後に上京した役所さんは、千代田区役所の土木工事課に配属され、約4年間にわたって公務員として勤務します。

しかし、毎日の慣れない満員電車での通勤は、役所さんにとって限界を感じるほど過酷なものでした。通勤中に体調が悪くなってしまうほど満員電車に嫌気が差していた役所さんは、定年まで勤め上げる未来を想像できずにいたそうです。東京での生活に見切りをつけて故郷の長崎へ帰ろうと考えていた頃、役所さんの人生を180度変える運命の出会いが訪れます。それが、日本を代表する名優である故・仲代達矢さんの舞台でした。それまで本格的な演劇をほとんど観たことがなかった役所さんは、そのステージに凄まじい感動を覚えます。

長崎へ帰る前の運試しとして、仲代さんが主宰する若手俳優養成所「無名塾」のオーディションを受験したところ、高い倍率を突破して見事に合格。22歳で区役所を退職して無名塾へと入門し、区役所職員という経歴にちなんで「役所広司」という芸名を与えられたのです。その後は、NHK連続テレビ小説『なっちゃんの写真館』で連続テレビドラマ初出演を果たすと、NHK大河ドラマ『徳川家康』で演じた織田信長役が大きな注目を集め、一躍ブレイクを果たします。ここから、日本を代表する人気俳優への階段を全速力で駆け上がっていくこととなりました。

映画『PERFECT DAYS』寡黙な清掃員役に世界が震撼

役所さんが近年の映画界で最も大きな衝撃を与え、世界的な快挙を達成した作品が、映画『PERFECT DAYS』です。本作は、東京・渋谷の公共トイレの清掃員として働く男・平山の慎ましくも美しい日常を描いたヒューマンドラマ。代わり映えのしない毎日のなかで、木漏れ日を愛し、古本を読み、カセットテープで音楽を聴くという、小さな幸せを丁寧にすくい取る男の生き様を描いています。あまりに静かで、だからこそ人間の尊厳に満ちた見事なストーリーと映像美に、SNS上では「文句無しの大傑作」「この作品に出会えて良かった」「名作中の名作」といった絶賛の声が絶え間なく寄せられました。

名匠・ヴィム・ヴェンダース監督によって作られた本作の功績は国内にとどまらず、世界中で凄まじい評価を獲得しました。「第47回日本アカデミー賞」で優秀作品賞を受賞しただけでなく、映画界の最高峰である「第96回米アカデミー賞」において国際長編映画賞にノミネート。「第36回東京国際映画祭」のオープニング作品にも選出され、世界的な注目を集める傑作となったのです。

そんな本作で、役所さんは主人公の平山を熱演。ほとんど言葉を発しない寡黙なキャラクターですが、手元の丁寧な動きや、ふとした瞬間に見せる穏やかな微笑み、感情が揺さぶられる場面での複雑な表情など、言葉を超えた圧倒的な表現力を披露しました。その圧巻の演技に、SNSでは「日本国民みて」「とてつもない傑作」「目だけで伝わる」「神がかった演技」「異次元」といった称賛や驚嘆の声が続出。役所さんがかつて区役所職員として実直に働いていた経験があるからこそ、清掃員という仕事に対する敬意や、何気ない日常の美しさを、リアルに体現できたのです。

役所さんの名演は、観客のみならず業界内でも圧倒的な評価を受けます。「第46回ヨコハマ映画祭」主演男優賞、「第47回日本アカデミー賞」最優秀主演男優賞、「第18回アジア・フィルム・アワード」特別功労賞といった数々の賞を受賞。さらには、「第76回カンヌ国際映画祭」で最優秀男優賞を受賞するという、日本人としては映画『誰も知らない』の柳楽優弥さん以来19年ぶり、史上2人目となる歴史的な快挙を達成し、役所さんのキャリアを象徴する作品となりました。

コメディから重厚な人間ドラマまで…世界を視野に挑み続ける名優の現在地

かつて満員電車に揺られていたごく普通の青年は、今や世界の映画界からリスペクトを受ける至高の名優となりました。その勢いは増すばかりで、近年でも映画や配信ドラマなどさまざまなジャンルの話題作で圧倒的な存在感を示しています。

2025年には、映画『雪の花 ―ともに在りて―』にて、蘭方医・日野鼎哉役を熱演。松坂桃李さん演じる主人公・笠原良策の師として、物語の精神的支柱となる重厚なたたずまいを披露しました。また、細田守監督の最新アニメーション映画『果てしなきスカーレット』では、冷酷非道な国王・クローディアス役の声を担当し、声の芝居でもその実力を証明。

2026年には、8月に公開予定の中島哲也監督の最新作映画『時には懺悔を』に出演。西島秀俊さんや満島ひかりさん、黒木華さんら豪華キャストとの共演も含め、早くも大きな注目を集めています。また、役所さんが主演を務めるNetflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』が10月に世界独占配信スタート。宮藤官九郎さん脚本、磯山晶さんプロデュースによる本作では、承認欲求の塊となった元大御所俳優・高瀬川玄役をユーモラスかつ悲哀たっぷりに演じる役所さんの姿が観られることでしょう。

どのような役柄であっても実直に、そして時に大胆にアプローチを続ける役所広司さん。年齢を重ねてなお凄みを増していく役所さんが、これから先もどんな演技で私たちを驚かせてくれるのか、注目せずにはいられません。


ライター:天木拓海
映画・アニメ・ドラマなど、エンタメ作品を観ることを趣味としているライター。エンタメ関連のテーマを中心に、作品考察記事/コラム記事などを手掛ける。

※記事は執筆時点の情報です

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