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スポーツウェアにフードが付いたのはいつ? アスリートにも労働者にも重宝された防寒の知恵/何がダサいを決めるのか⑥

  • 2026.4.27
何がダサいを決めるのか 平芳裕子/ポプラ社
何がダサいを決めるのか 平芳裕子/ポプラ社

『何がダサいを決めるのか』を第1回から読む

『何がダサいを決めるのか』(平芳裕子/ポプラ社)6回【全8回】

ファッションの世界では「おしゃれ至上主義」が常識。しかし、世間一般の価値観は少し違うようです。「似合ってないと思われたくない……」「年相応じゃない服は着たらいけない」なんて、見えないルールに縛られていませんか? まるで「ダサい」ことが悪のように扱われるこの空気、一体どこから来たの!? 本書ではそんなモヤモヤを一気に吹き飛ばすべく、服の歴史や社会背景をもとに「ダサい」の正体を徹底解剖します。常識を脱ぎ捨てて、もっと自由におしゃれを楽しもう! 私たちが囚われているファッションの常識をアップデートしてくれる一冊『何がダサいを決めるのか』をお楽しみください!

※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)
※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

スポーツウェアの発展

一方、ジャージーを取り入れたのは、パリのハイファッションだけではありませんでした。アメリカでも、編みの技術が注目されるようになります。今日スポーツウェアの企業として知られる多くの会社が、二〇世紀初めに創業しています。たとえば「ラッセルアスレティック(Russell Athletic)」という、アメリカのスポーツウェアブランドがあります。同社は一九〇二年に設立され、当初は女性用下着を生産していました。その後、第一次世界大戦の勃発により布の需要が高まると、セーターや運動用シャツなど、製品の幅を広げていきます。特にスポーツ関連の衣料で発展しました。

一九世紀末から二〇世紀にかけては、さまざまなスポーツが流行しましたが、アメリカでとりわけ人気があったのはフットボールです。それまでのフットボールのユニフォームはウールで作られていたため、生地が擦れて毛羽だったり、皮膚に痒みを引き起こしたりすることがありました。ここで、通気性や伸縮性に優れ、着心地もよく丈夫なジャージーが注目されるようになったのです。ラッセルは一九三〇年代に陸上競技用ウェアの部門を立ち上げ、ニューヨークのスポーツ用品店にフットボール用のジャージーを提供し始めます。さらに、野球やバスケットボール用のパンツの製造も手がけるようになりました。

フードをつけた「チャンピオン」

では、いつからこのようなスポーツ用ウェアにフードが付くようになるのでしょうか。その歴史には、現代日本でもよく知られる「チャンピオン(Champion)」が深く関わっています。「チャンピオン」は、一九一九年にニューヨークのロチェスターで「ニッカーボッカ・ニッティング・ミルズ」という会社名で設立されました。「ニッカーボッカーズ」とは、ゆったりとした膝下丈のボトムスのことで、ボトムスの裾の部分は共布のベルトをつけてすぼめてあります。そのため、ゴルフやサイクリング、スキーなどの運動をする際に足さばきがよく、スポーツウェアとして男女ともに広く用いられました。

そして一九二〇年代はじめに、同社は「チャンピオン・ニットウェア・ミルズ」と会社名を変更します。設立当初も名称変更後も「ニット」という言葉が含まれることから、編み地の製品を生産していたメーカーだということがわかります。一九三〇年代初頭には、厚手の下着を縫製する技術を開発しました。スウェットの生産を始め、特に大学生のスポーツウェアとして用いられるようになります。さらに、士官学校の制服の一部を生産するようになり、フットボールのチームウェアも手がけるようになりました。

こうして一九三〇年代に、フード付きのスウェットが誕生しました。スウェットにフードを付けたのは、アスリートを外気から守るためでした。悪天候のフィールドでも競技をするアスリートたちは、試合や練習の合間に着用する保温性の高いウェアを必要としていました。そこで、厚手で大型のフードを付けたスウェットを製造することにしたのです。また、このような衣服は労働用にも適していました。保冷庫のなかで働く従業員、森林を管理する作業員たちは、寒い環境のなかで暖かさを保つ衣服を必要としていたからです。

フードがつくことで、保温性や防雨・防風性にすぐれ、またジャージーのために柔らかく動きやすい衣服が普及しました。ただ当時、大学や士官学校でスポーツをするのは男性がほとんどでしたから、フード付きスウェットを着ていたのも、もっぱら若い男性ということになります。この衣服が、二〇世紀の後半に人気を獲得していきます。

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