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平熱のステージは信頼の証し。石田亜佑美×ハマ・オカモトが考える、ファンへの思いの伝え方

  • 2026.4.28

2024年末に13年間在籍した〈モーニング娘。〉を卒業した石田亜佑美と、ファンとして彼女の卒業公演を見届けたハマ・オカモト。2人が考えるライブを通してファンへと思いを伝える方法とは。

初出:BRUTUS No.1024「伝える力。」(2025年2月3日発売)

photo: Yu Inohara / styling: Hiromi Nakamoto (Ishida) / hair & make: Akemi Ezashi (Ishida), Go Takakusagi (Hama) / text: Yoko Hasada

ミュージシャン・ハマ・オカモト、アイドル・石田亜佑美
BRUTUS

ハマ・オカモト

僕が石田さんのファンになったのは、〈Juice=Juice〉「イジワルしないで 抱きしめてよ」のMVがきっかけでした。ケガをした他グループのメンバーの代わりに踊るという特殊な状況で、石田さんが代役に徹する姿がカッコよくて。そのプロフェッショナルさに胸を打たれて、アイドルに対する考え方が変わりました。

石田亜佑美

嬉しいです。ハマさんがそう話してくださるから、改めて「パフォーマンスに責任を持とう」と思えた。原点回帰的な出来事になりました。

ハマ

卒業公演で石田さんはみんなに何を伝えるのか、どう立ち振る舞うのかすごく気になっていたんです。どうしたって感傷的な雰囲気になりますけど、最後の舞台でファンとどんな気持ちを共有するかは、卒業する本人がコントロールすることだと思うので。

石田

ご覧になって、どうでしたか?

ハマ

ここ5年くらいライブやブログで積極的に発信していましたよね。

石田

そうですね。コロナ禍前後は、グループのためにファン以外の方々への発信を意識していました。ダンスが得意なので、YouTubeやTikTokで「踊ってみた」動画を公開するとか。でも、卒業発表してからはファンのみなさんに対する「ありがとう」の気持ちが勝ってしまって。ここ1年くらいはファンの方々への発信しかしてない。

ハマ

なるほど。だから卒業公演の時、多くを言葉にせずともたくさん伝わってくるものがあったんです。会場全員が“石田イズム”みたいなものを前提として共有できていた。特別な公演なんだけど、普段通りの石田さんのフルパフォーマンスでもある。これがすごくよかった。中には特別な演出もありましたけど、大部分は地で行けたんじゃないですか?

石田

まさに、自然体でした。ラッキーだなと思うのが、私が好きな私と、ファンの方々が好きな私が同じなんです。熱いライブが好き、でもふざけたこともやりたい。そういう「好き」をたくさん共有できているから、最後までありのままでいられたのかなと思います。

ハマ

ライブの演出には関わった?

石田

これまで一緒にライブを作ってきたスタッフさんに好きな曲だけ渡して、あとはお任せしました。自分の思いをうまく伝えられる方法って人それぞれだと思っていて、私は信頼できる方が考えて作ってくださった舞台を受け取り「負けませんよ!」と打ち返す方が、らしさを最大限発揮できる。

ハマ

ライブチームが「石田ならこれをやれるだろう」と考えてくれたと。

石田

ありがたいことに、私を好きじゃないと思いつかないだろうという演出ばかりでした。その気持ちに全力で応えることが、頑張りどころだなと。

ハマ

石田さんってオンもオフもこのままじゃないですか。それは強いですよね。ずっと正直だから、ファンもスタッフも自然と同じ思いを共有できているし、伝わり続けるんだと思います。

モーニング娘。
2024年12月6日の横浜アリーナ公演『モーニング娘。'24 コンサートツアー秋 WE CAN DANCE!〜Blå Eld〜石田亜佑美 FINAL』の様子。「みなさんは私に変わるきっかけをくれた人」と感謝を伝えた。画像提供:アップフロントプロモーション
『モーニング娘。'24 コンサートツアー秋 WE CAN DANCE!~Blå Eld~石田亜佑美 FINAL』の様子
中央が石田。画像提供:アップフロントプロモーション

平熱のステージは、ファンへの信頼の証し

石田

確かに、作られた自分では、13年もアイドルは続けられないですね。

ハマ

やっぱり無理は禁物ですか。

石田

はい。よく珍しがられるんですが、活動を続けるうちに、自然と自分の感情を共有することが好きになっていったんです。いつも発言する場所こそ考えていましたけど、舞台でも「あれが悔しい」「もっとこうしたい」と、思ったことを口にするようになった。そうやってある種ネガティブな部分も全部さらけ出してきたから、怖いものがなくなりましたし、ファンの方々をとても信頼しています。私の理解者たちに嘘をついても仕方ないって。

ハマ

卒業公演なので、合間のMCで活動を振り返ったり、過去の思い出話をしたり、普通は恣意的に感動を作ろうとしちゃうじゃないですか。でも、そういうのがほとんどなかった。むしろ「今日くらい仕込んでこいよ!」と思うくらいユルいMCでした(笑)。

石田

普段通りでしたね(笑)。思い返せば、その都度“今”と向き合い続けたアイドル人生でした。思い出は美化されちゃいますけど、私は常に今の自分が一番いいと思っている。だから自然体でいられるのかもしれません。

ハマ

そういう、石田さんの平熱を感じるステージはファンへの信頼の証しだと思いました。表現に対する解釈の自由度をファンに委ねているところがあるし、観客のリテラシーも高い。その関係性作りは、同じ舞台に立つ人間としても意識したいところです。

石田

ファンの方も、熱心に気持ちを伝えようとしてくれますね。私の長文ブログに、私以上に長いコメントをくれることもありますし(笑)。

ミュージシャン・ハマ・オカモト、アイドル・石田亜佑美
「アイドル石田亜佑美に多くの学びを得ました!」(ハマ)「こちらこそ。10年以上応援してくれて感謝です」(石田)

ハマ

パフォーマンス中はどんな伝え方を心がけているんですか?

石田

積極的に、目で会話するようにしてますね。基本、パフォーマンスする時は視線を送る先まできっちり決まっているんですけど、ライブでは遊び心を大切にしたくて。お客さんと目でコミュニケーションを取りたい、という気持ちを優先させていました。

ハマ

僕は性格的に絶対に目を合わせられないけれど(笑)、予定調和じゃないことを楽しむマインドは同じです。それがライブの醍醐味だと思うので、調子が悪かったら正直に謝るし、どんなミスも楽しむ。余白を感じられるステージの方が観客に多くのことが伝わる気がして、その余裕を生むために、日頃の練習を重ねることが大事。

石田

めちゃくちゃわかります。私も舞台でその大切さを感じてました。

ハマ

ちなみに、石田さんはある時から格段に伝えるのが上手になった印象ですが、何が変化のきっかけに?

石田

以前は楽屋でメンバーと話していても不安になるくらい、自分の話をするのが苦手でした。でも、一人でラジオ番組をやらせてもらえる機会をいただいて、意識が変わりましたね。

ハマ

ラジオはでかいですよね。

石田

しゃべれるようになりたいと思った時に、自分は伝えたいことを文章にした方が明確になるタイプだとわかって。一度話したいエピソードを書き出すなどして整理していました。無理せず自分らしく話したいから、しゃべり口調でザーッと書き出して。そうする間に、いつしか自然と本心でしゃべれるようになりました。あとは、どんな場面でも楽しむこと。楽しそうにしている姿が、一番ファンの方へと伝わるかもしれないですよね。

ハマ

〈モーニング娘。〉のライブを観るようになって思うのは、“舞台に立つ人を応援する”という行為は、ファンにとってその人が鏡になることだと思うんです。それはアイドルじゃなくても言えることかもしれない。

年齢も性別も違う赤の他人だとしても、自分の中で「本当はこうありたい」みたいな憧れが、応援している人の中に垣間見える。その共感ポイントに一つでも気づくと、自己投影が始まるという。特にアイドルはそこに特化していて、“推し”の影響を受けながら、自分と“推し”の成長がダブる瞬間があるんですよね。それこそが、応援する醍醐味かなとも思います。

石田

そうですよね。一方で、「あなたはあなた、私は私」と伝え続けることも大切。お互いを尊重してこその、信頼関係だと思っています。

ハマ

石田さんはそのあたりの伝え方が上手。舞台上での立ち振る舞いの一つ一つからもポジティブなエネルギーを飛ばしてくれるので、ファンも「私も頑張ろう」と自分の中で反芻(はんすう)できるんじゃないかな。僕も鏡になる側として、石田さんの伝え方に学びたいです。

ミュージシャン・ハマ・オカモト、アイドル・石田亜佑美
左/ハマ・オカモトさん、右/石田亜佑美さん。スカート38,500円(ティート トウキョウ/ザ・PR TEL:03-6803-8313)、ビスチェ39,600円(クリエイトクレイル/ザ・PR)、その他スタイリスト私物

石田亜佑美とハマ・オカモトが考える、アイドルがファンと信頼関係を築く伝え方4ヵ条

・自分を偽らず正直な気持ちを共有する。
・パフォーマンス中は観客と目で会話する。
・表現に対する解釈の自由度はファンに委ねる。
・「私は私」「あなたはあなた」と示し続ける。

profile

石田亜佑美(アイドル)

いしだ・あゆみ/1997年宮城県生まれ。2011年に〈モーニング娘。〉に加入、24年12月に同グループおよびハロー!プロジェクトから卒業。情熱的なパフォーマンスからダンスマシーンの異名を持つ。

profile

ハマ・オカモト(ミュージシャン)

1991年東京都生まれ。〈OKAMOTO'S〉のベーシスト。活動の傍ら他ミュージシャンのサポートも行う。

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