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「彼ほど努力を積み上げている選手は見たことがない」元広島の広報が驚いた“努力の天才”

  • 2026.4.17

2026年も春の訪れとともにプロ野球の新シーズンが幕を開け、連日熱戦が繰り広げられている。2008年のドラフト3位で広島東洋カープに入団した小松剛(こまつ・たけし)氏は、5年間の現役生活を終えた後、広島の球団広報を経て、2022年から転職サービス「doda」等で知られる人材会社のパーソルキャリアに在籍し、日々の業務と向き合っている。なぜ、一般企業へのキャリアチェンジを決断したのか。これまでの人生を振り返りながら、その理由を語ってもらった。

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広島のリーグ優勝は、ベテランのリーダーシップとハードな練習のおかげ

画像: ニューヨーク・ヤンキースから2015年に広島カープに復帰を果たした黒田博樹投手は、チームが25年ぶりのセ・リーグ優勝を掴んだ2016年に引退した。写真はヤンキース時代 写真:GettyImages
ニューヨーク・ヤンキースから2015年に広島カープに復帰を果たした黒田博樹投手は、チームが25年ぶりのセ・リーグ優勝を掴んだ2016年に引退した。写真はヤンキース時代 写真:GettyImages

――引退後の2014年からは、球団広報としてセカンドキャリアを歩み始めました。2016年にはチームが25年ぶりのリーグ優勝、その後3連覇も成し遂げましたが、ベンチにいながら感じた強いチームの特徴や共通点はありますか?

当時の広島には、黒田博樹投手(※)や新井貴浩選手(現、監督)という絶対的なリーダーシップを持ち、チームを引っ張っていく自覚のあるベテラン選手が在籍していて、彼らの存在が大きなプラス要素をもたらしたと思っています。

黒田さんや新井さんは、チームの若手選手に対して真摯に向き合い、僕らのような裏方スタッフにも感謝の気持ちを伝えてくれるような方だったので、お二人がいてくださったおかげで、チームが一つにまとまったような印象を感じていました。

――練習やパフォーマンスの点では、何か違いがありましたか?

当時、打撃コーチを担当されていた石井琢朗さんと東出輝裕さんが、スイングの回数を増やす指導を徹底していて。シーズン中もホテルの空いたスペースで野手陣が素振りをするなど、かなりハードな練習に取り組んでいました。

画像: 広報時代の小松さん 本人提供
広報時代の小松さん 本人提供

試合の時も、ベンチで出番を待つ選手たちに「お前らも主役だからな!」と、コーチの皆さんが声がけをしていて。その言葉に奮起した選手たちも、ベンチ裏で入念に準備を進めていました。特に野手の皆さんはいつも前向きで、試合に臨まれていることが印象に残っていますね。カープが25年ぶりのリーグ優勝と、そこからの3連覇を掴み取ることができたのは、「選手の皆さんが積み重ねた努力の賜物に他ならない」と、僕も同じベンチに座りながら感じていました。

――そして2018年からは2軍のマネージャーと、広報を兼任されることになりました。2軍で働かれていた時に印象に残っている選手はどなたかいらっしゃいますか?

広島がリーグ3連覇した時に抑えを任されていた中崎翔太投手です。これまでの野球人生で、彼ほど努力を積み上げている選手は見たことがありません。「努力の天才」と言っても、言い過ぎではないと思います。

中崎投手は2019年に右膝、2020年に右腕を手術していて、思うような結果が残せない時期を経験しています。でも、そのような状況にも屈することなく、強い思いとともに辛いリハビリに励みながら、復活を目指して頑張っていました。高卒のドラフト下位(2010年6位)で広島に入団し、そこからリリーフエースのポジションを掴み、怪我を乗り越え、ベテランに差し掛かった今も安定した活躍を残せているのは、中崎選手が若手のうちからきちんと自分の軸を持ち、練習を続けられているからこそだと僕は感じています。

突然自由契約になり、将来に不安を感じる選手を減らしたい

画像1: 写真:パーソルキャリア
写真:パーソルキャリア

――充実したセカンドキャリアをお過ごしだったように見えますが、2022年に転職をご決断されます。なぜ、パーソルキャリアで働くことになったのでしょうか?

僕が選手時代に自由契約を言い渡された経験や、二軍マネージャーを任されていた頃に芽生えた思いがきっかけです。

毎年秋になると、自由契約を言い渡された選手たちがスーツ姿で僕のところにやってきて「お世話になりました!」と挨拶をし、寂しげに去っていく。その背中を見る度に、「もっと力になれることがあったのでは?」という後悔や、何も手を差し伸べられないもどかしさを感じていたんです。すると、漠然とした悩みを抱えながらも仕事に励んでいたある時、アスリートが集うオンラインのアカデミーで、「キャリアオーナーシップ」という言葉に出会いまして、「キャリアを自分の手で切り拓いていく」ことの大切さを感じることになりました。個人的にはカープの球団職員にやりがいを感じていましたが、誰かの人生を支援するような仕事にも興味があって。35歳の時に勇気を振り絞って、転職することにしたんです。

――パーソルキャリアでどんなお仕事をされていらっしゃるのですか?

現在はスポーツ関連求人を取り扱う「スポーツビジネス推進グループ」の一員として働いています。

画像2: 写真:パーソルキャリア
写真:パーソルキャリア

――小松さんにとってパーソルキャリアはどんな会社ですか?

高い目標や、意識を持つ方が働かれている会社だと思います。でも、一方では「誰一人として置いていかない手厚さもあり、教育制度が充実していて、それぞれのスピードで成長できる会社なのかなと感じています。あとは、社員のチャレンジをかなり前向きに支援してくれる傾向もあり、とにかくポジティブな会社だなと感じます。

――スポーツ業界の人材採用に関するお仕事をされている小松さんは、今後スポーツ業界がさらに発展していくために、何が必要だと思いますか?

スポーツ界もだいぶ変化の兆しを感じますが、新しいものを取り入れにくい傾向がまだまだ残っているように感じています。

どうしても目先の勝敗に焦点が集まりがちですが、競技が世の中にどのような好影響を及ぼしていくのか。スポーツを通じて人間を教育し、競技を通じて培った個性は、社会にどのように還元されうるのか。俯瞰した目線でスポーツの良い点を見つめながら、それを実行に移せる人材が求められているように感じます。

――スポーツ選手のセカンドキャリアは、多くの人が関心を寄せるトピックです。引退後に迷ってしまう元選手へのアドバイスをお願いします。

セカンドキャリアを見つけることができずに悩む選手の中には、現役中に次のキャリアについて考える機会やきっかけを持てないまま、引退のタイミングを迎えてしまったり、気持ちの整理がつかないまま現役生活を終えてしまったりするケースが多いと感じています。

実際にはとても難しいことですが、選手を続けているうちから、自分の考えに軸を持ったり、その後の人生で自分が何をしたいのかを考える習慣が大切なのかなと。まずは自分の得意なことや、持っている価値観を整理して、道を選んでいけば良いのかなと感じます。

――小松さんの今後の目標を聞かせてください。

まだまだサービスの開発に余地はありますが、「アスリートのキャリア支援」は、人生を懸けて取り組みたいテーマの一つなので、まずはそこをしっかり体現していきたいなと思います。

そして自分自身としては、プロ野球選手を引退し、時に路頭に迷いつつも、何とかここまでやってこられた。スポーツの世界からビジネスの世界にフィールドを移しても活躍できるんだという後進の指針になりたいですし、「現役の時よりも活躍できるように」という気持ちで、日々の業務に取り組ませていただいています。

画像: 突然自由契約になり、将来に不安を感じる選手を減らしたい

小松剛(こまつ たけし) プロフィール

室戸高校・法政大学を経て2008年ドラフト3位で広島東洋カープに投手として入団。2009〜2010年に一軍で計30試合に登板し、その後は育成契約や徳島への派遣でプレーした後、2014年からはカープ球団の広報・マネージャーとして活動。2022年よりパーソルキャリア株式会社へ転職し現職。プロダクト&マーケティング事業本部 ブランド・マーケティング本部 ブランドエクスペリエンス統括部 スポーツビジネス推進グループに在籍している。

筆者:Jun S.

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