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東大卒コンビ・無尽蔵のコラム連載「尽き無い思考」/第36回(やまぎわ)「あなたが思う以上に、お笑い芸人は何も考えていない」

  • 2026.4.16
東大卒コンビ・無尽蔵のコラム連載「尽き無い思考」 提供:無尽蔵やまぎわ
東大卒コンビ・無尽蔵のコラム連載「尽き無い思考」 提供:無尽蔵やまぎわ

サンミュージックプロダクションに所属する若手の漫才コンビ・無尽蔵は、ボケの野尻とツッコミのやまぎわがどちらも東大卒という秀才芸人。さまざまな物事の起源や“もしも”の世界を、東大生らしいアカデミックな視点によって誰もが笑えるネタへと昇華させる漫才で、「UNDER5 AWARD 2025」では決勝に進出・「M-1グランプリ」では2024年から2年連続で準々決勝に進出し、次世代ブレイク芸人の1組として注目されている。新宿や高円寺の小劇場を主戦場とする令和の若手芸人は、何を思うのか?“売れる”ことを夢見てがむしゃらに笑いを追求する日々を、この連載「尽き無い思考」で2人が交互に綴っていく。第36回はやまぎわ回。

第36回(やまぎわ) 「あなたが思う以上に、お笑い芸人は何も考えていない」

お疲れ様です。やまぎわです。

さて、芸人に向けられる考察の目線は日に日に激しくなるばかりだと存じます。

「あのときテレビでこう言ってた」「それがこの雑誌での発言と一致していた」「つまりこの人はこういう面で相方を信頼しているんだ」「尊い」

そして、近年の風潮として「ダブスタ(ダブルスタンダード)」に厳しい、ということも感じております。「あのときはああ言ってたのに、これを批判するなんてダブスタだ!」と、芸人としての一貫性の無さが批判の対象になっています。例えば優しい人のイメージで世に出た芸人が少し棘のある発言をすると、そのギャップを突かれ批判されるというのは枚挙に暇がない例だと思います。

しかし、芸人はそもそもそんな考察・批判に耐えられるものなのでしょうか?

会社組織であれば、明確な「企業理念」を掲げ、あらゆる経営判断はその企業理念に沿う形で実行されます。さらには社会的責任を果たすため、多くの場合コンプライアンス・法務に関する部署を内に抱え、自己統制を繰り返します。

そこに所属する一人一人の社員の意思や価値観はある種捨象され、一通りの方向に向かう「点P」の如く真っ直ぐ動き続けます。もし企業が日和見的に方針を変え続けていれば、それは批判されて然るべきでしょう。

しかし、芸人というものは一人の人間であるが故に、その思想信条や動き方というのは常に一貫するとは限らず、ましてや共通の理念というものもありません。

むしろ会社のように「大いなる御旗」の下に迎合することを厭い、あくまで「個人の自由意志」を尊重してくれ、という態度の人間が多いと思います。

急にnoteを始めたこと。Xに上げたあの写真。ライブでのあの発言。

何も大仰で高尚な背景がそこにあるわけではなく、大抵は「そのとき思いついたから」に過ぎません。

それを考察して一つの結論を導いたところで、それはその芸人のほんの一側面にスポットライトを当てたに過ぎません。

僕ら一人一人の中には何種類かの人格が共存していて、今日の自分と明日の自分とでは同じ問題に対して違った答えを導くことだって往々にしてあります。

あなた自身が入社を決断した会社に行くことに辛さを感じる日があるのは当然のことです。それをダブスタとは誰も批判しません。

芸人は漫画のキャラクターではなく人間であり、そして人間はキャラクターのように単純ではありません。

人間らしさを求めつつ、芸人に完璧な漫画のキャラクターであることを望む観客がいるとすれば、それはある意味でダブスタなのではないでしょうか。

舞台に立ってる人間は「ただそこで生きている」と思っていただいた方が、より真実に近いかと思います。

高い作品性を追求した単独公演などを除けば、日々のお笑いライブ鑑賞は「劇公演鑑賞」というより「動物園鑑賞」に近いと思われます。

これは芸人のダブスタを許せ!という趣旨というよりかは、そう思ってもらった方がお笑いを楽に楽しめるかもね、といった提言くらいに思っていただければ幸いです。

人間を対象にした推し活はあらゆる人間関係と同じで、「近づけば近づくほどその人の厭な部分も見えてくると思うけど、それは大丈夫そう?」というリスクをご承認ください。

もちろん芸人も公共性を帯びれば、会社と同じで社会的責務を負い、遵法意識の低い発言や非道徳的な行動は避けた方が良いでしょう。大前提ダブスタは無い方が好ましいです。

芸人は芸人で「優しいお客さんに甘え過ぎるなよ」ということだろうと思います。いくら社会のしがらみから逃げてきたとしても、もっと考えて生きた方が本当は良いのです。

人に後ろ指をさされることは、普通の人以上にしない方が良いということですね。

僕もその方が得というのは重々承知しているので、これ以上の不用意な発言は控えることとします。

 提供:無尽蔵やまぎわ
提供:無尽蔵やまぎわ

■無尽蔵

サンミュージックプロダクション所属の若手お笑いコンビ。「東京大学落語研究会」で出会った野尻とやまぎわが学生時代に結成し、2020年に開催された学生お笑いの大会「ガチプロ」で優勝したことを契機としてプロの芸人となった。「UNDER5 AWARD 2025」では決勝に進出、「M-1グランプリ」では2024年から2年連続で準々決勝に進出。

無尽蔵 野尻 Xアカウント:https://x.com/nojiri_sao

無尽蔵 野尻 note:https://note.com/chin_chin

無尽蔵 やまぎわ Xアカウント:https://x.com/tsukkomi_megane

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