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熊本地震10年 県民の1割が詰めかけた避難所では何が起きていたのか

  • 2026.4.13

2016年4月に発生した熊本地震からまもなく10年になります。最大震度7の地震が同一地域で2度も起こったのは観測史上初でした。その後も余震が断続的に続いたことで、ピーク時には熊本県民の1割にあたる約18万人が避難所に避難しました。避難所に大勢が押し寄せたことによる課題も多く浮き彫りになったといいます。約40か所の避難所の運営者にヒアリング調査を行い、避難所開設の必須アイテムセット「避難所初動運営キット」を考案した、熊本大学副学長の竹内裕希子さんに話を聞きました。

避難所運営の実態調査をした、熊本大学副学長で教授の竹内裕希子さんに聞きました

——熊本地震では、多くの方が避難所に避難したそうですね。

避難所数はピーク時に855か所設置され、県民の1割にあたる約18万人が避難しました。最大震度7の前震、本震に加え、その後も繰り返し大きな地震が来たため、家の中にとどまることに不安を感じた人たちが避難所に押し寄せました。車中泊を選ぶ方もたくさんいました。

——避難所運営者へのヒアリング調査はいつ実施したのですか。

もともと防災の研究をしていて、地元の自主防災組織などとつながりがありました。私自身は震災時、出産のために県外にいて被災はまぬがれましたが、早く復帰して調査に関わりたいという思いが強く、育休を切り上げて2016年秋に大学に戻りました。その後、約40か所の避難所について、運営にあたった学校関係者や自主防災組織、自治会の方々などに運営方法や苦労した点、課題などを聞きとって回りました。

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避難所の開設 最初の間取りと避難者情報の把握が一番大事

——見えてきた課題は?

まず一つ目は、「間取りの問題」です。避難者を受け入れる前に、受け付け場所や居住スペース、物品を搬入する通路、更衣室、授乳室などを設けなかったために、要望があっても場所がなく授乳室などを用意できなかったり、寝ている人をまたいで移動するということが起きたり、支援物資を奥まで運び込めなかったりしたところがいくつもありました。

一度、避難者がその場所に落ち着いてしまうと、移動のお願いがしにくいという事情もあります。とにかく、開設時に間取りを決めてから、避難者を迎え入れる大事さを実感しました。

二つ目は、受け入れた避難者の把握が十分できなかった点です。避難者が各々入ったことで、いったい何人いるのか、障害の有無や要介護状態、健康上の不安のほか、乳幼児、妊産婦などを把握しきれませんでした。

避難者のニーズがつかめないため、外部への支援要請がしにくく、必要な支援物資も的確に伝えられません。避難者の把握の遅れは、支援の遅れにつながり、災害関連死のリスクを高めてしまう要因にもなります。

現場の課題から誕生した「避難所初動運営キット」

——こうした課題を少しでも解決しようと、考案したのが「避難所初動運営キット」なのですね。

キットには避難所運営をした人たちが、「なくて困った」「あったらよかったのに」というものを厳選し、必要最低限の25点を入れています。

まず、間取りを作る道具としてシート、立ち入り禁止区域を示すロープ、電源タップのほか、「受付」「更衣室」「ゴミ置き場」「禁煙」などと記した案内標識25枚も入れました。

避難所開設時に「禁酒」「火気厳禁」の掲示を出さなかったために、避難所内で飲酒をする人やカセットコンロで煮炊きする人が出て、運営スタッフが注意をしたところ「どこにダメと書いてあるんだ」と怒られ、トラブルになった例もありました。

間取りだけでなく、「禁煙」「土足禁止」など、避難所のルールを早い段階で掲示することも大事です。

避難者を把握するための道具としては、受付時に必要なボールペン10本、鉛筆12本、掲示用に大きく書けるスケッチブックのほか、黒と赤の太めの油性ペンなども入れました。「何も持たずに避難したためペンがなかった」という声を多く聞いたためです。また、避難者から「どの立場でモノを言っているんだ」と詰め寄られた運営スタッフもいたことから、役割を示す腕章5本も用意しました。

避難所初動運営キットは、必要最低限のものが8割そろっているというイメージです。それぞれの地域で防災訓練をする中で、自分たちが必要なもの、不足しているものを考え、残りの2割分を足してほしいと思っています。このキットをきっかけに、避難所を管理する施設管理者、地域住民、行政の3者で話し合う場やきっかけを持ってほしい。そんな願いを込めて未完成のキットにしています。

——いま、どのくらい活用されていますか?

2017年に商品化し、計1200個ほどを販売しました。熊本県内の自治体に寄付したほか、全国の自治会や自主防災組織などが取り入れてくれています。実際、2020年7月の九州地方を中心とした豪雨では、避難所を開設した県内の自治体で活用されました。ある自治体の担当者からは、「これまで避難所開設には職員が4人程度必要だったが、このキットと職員がひとりいれば開設が可能。行政職員の負担軽減に役立った」との評価もいただきました。

——南海トラフ地震や首都直下地震など、大災害はいつ発生してもおかしくないと言われています。避難所を利用する上で知っておくべきことはありますか?

避難所は自治体が指定していて、多くの場合自治体職員が開設や運営の中心的役割を担うことが計画されています。しかし、災害をある程度予見できる水害と違い、突然襲ってくる地震の場合は、職員自身が被災してしまったり、道路状況が悪くて到着できなかったりすることが想定されます。そうすると、そこに居合わせた学校関係者や施設管理者、地域の人たちが、避難所を運営していくことになります。熊本地震では、多くの避難所がそういう状態になりました。

ある避難所では、小学校の体育館で食品の配給の列に並んでいた在校生の保護者たちが、列が進まないことから運営側の手が足りていないことに気がつき自分たちが運営側に回って活躍。その後、地域の自主防災組織を結成した例がありました。

避難所の運営に自分たちも関われる、関わっていいんだ、ということを、ぜひ、多くの方たちには知っておいてほしいです。地域の皆さんが、積極的に運営者に回ることで得られるメリットは多くあります。例えば、自分たちの困り事や課題に対し、自分たちの資源やネットワークを柔軟に活用して対処できます。一方、行政職員が中心となると、どうしても他の避難所と横並びの対応になってしまいがち。公平性が重視され、例外が認められないなど、柔軟性に欠ける運営になるかもしれません。

ぜひ、日ごろから防災訓練などに積極的にかかわり、自分たちの避難所にどう関わることができるのか、地域の皆さんで話し合ってほしいと思います。

避難所初動運営キットについての問い合わせは、販売会社「イートラスト」へ。
問い合わせ先 kitinfo@etrust-net.jp

<防災ニッポン編集長・板東玲子>

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