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ガブリエル・シャネルのスタイルを体現したメゾン、シャネルの継承と拡張。

  • 2026.4.11

これまでにないほどクリエイティブディレクターの交代が相次いだ2026年春夏。新任者たちは、メゾンの伝統をどのように引き継ぎ、発展させていくのか。マチュ・ブレイジーによるシャネルの挑戦を解き明かす。

CHANELby Matthieu Blazyマチュー・ブレイジー

ジャケット¥1,104,400、プルオーバー¥579,700、スカート¥851,400、トランクス¥290,400、ベルト¥165,000、ネックレス¥214,500、ブレスレット¥335,500、シューズ¥217,800(すべて予定価格)/以上シャネル(シャネル カスタマー ケア センター)

マスキュリンなグレンチェックのジャケットとミディ丈のスカートの切りっぱなしの裾にはメゾンを象徴するチェーンが。ジャケットの袖をまくると裏地に小さく刺繍されたダブルCが姿を現す。

ガブリエル・シャネル、男性ワードローブを用いたスタイル。

マスキュリンな装いで乗馬を楽しむガブリエル・シャネル。左がガブリエルが唯一愛した男性、ボーイ・カペル。© Private Archives/All rights reserved. Courtesy of CHANEL

2024年末にアーティスティックディレクターに就任したマチュー・ブレイジー。彼がデビューコレクション発表に向けて注目したのは、メゾン創業者、ガブリエル・シャネル自身。なかでも、彼女とボーイ・カペルとのラブストーリーだった。

イギリス出身のボーイは、ガブリエルが親しくしていた元騎兵隊将校、エティエンヌ・バルサンの友人だった。当時の女性には珍しくゴルフやスキー、ヨットや釣りなどのスポーツやレジャーに興じ、バルサンとともに乗馬も楽しんでいた20代前半のガブリエルは、1907年、狐狩りで有名な南仏の町、ポーでボーイに出会う。作家のポール・モランによるガブリエルの回想録『L'Allure de Chanel』(Hermann刊)によれば、「美貌で、濃い栗色の髪をして、見る者をひきつけずにはいない」青年、ボーイにガブリエルは瞬く間に恋をしてしまい、パリまで追いかけて同居することになる。羊の革のコートと質素な上着を着ていたガブリエルは、「そんなに気に入っているのなら、いつも着ているその上着、イギリスのテーラーで、『エレガント』に作りなおしたらいいじゃないか」とボーイに言われ、それが服作りのきっかけに。石炭の運輸業で成功していたボーイは、ガブリエルたっての希望で開店したパリの帽子店や、ドーヴィルのブティックに資金援助をした。「稀に見る精神の持ち主で、独特で、若いのに五十代の経験をつみ、穏やかで陽気でしかも威厳があり、皮肉のきいた厳しさをもっていて、ひとを魅了し支配した。ダンディな外見とはうらはらにとても真面目で、ポロの選手やいい加減な事業家とはくらべものにならない教養があり、深い内面性があって、魔術や占星術のことまで知っていた」とガブリエルが評するボーイは、1919年に交通事故で死亡。ガブリエルにとって、「わたしが愛したただ一人の男」だった。

1912年、ノルマンディ地方、エトルタのビーチに佇むガブリエル。漁師たちの装いにヒントを得たセーラーシャツを着用している。© Private Archives/All rights reserved. Courtesy of CHANEL

マチューは、そんなガブリエルがボーイから借りて身に着けていたフランスの老舗シャツメーカー、シャルべのシャツとパンツの装いから出発し、シャルべと共同で裾にフォルムを保つためのアイコニックなチェーンを縫い付けた3型のシャツを制作。生地の端を切りっぱなしにしたマスキュリンなスーツジャケットを合わせた。

1913年、ドーヴィルに開店したブティックの前で。ポロ選手に借りたセーターからヒントを得たというジャージー素材のアイテムも展開した。© All rights reserved. Courtesy of CHANEL

『L'Allure de Chanel』で「スポーツ服を作ったのは自分のため。他の女性たちがスポーツをしていたからではなく、私がスポーツをしていたから」とも言っていたガブリエルは、シャネルの服に自身の好みや姿勢、考え方を反映させ、最初に身に纏っていた。新任者は通常、まずアーカイブをリサーチするものだが、それを作り上げた創業者をテーマとしたマチューは正しい選択をしたと言える。シャネルとは、ガブリエルのスタイルを体現したメゾンなのだから。

(参考文献)『ガブリエル・シャネル展 MANIFESTE DE MODE』図録(三菱一号館美術館・2022年)ポール・モラン著、山田登世子訳『シャネル─人生を語る』(中央公論新社・2024年)

問い合わせ先:シャネル カスタマー ケア センター0120-525-519(フリーダイヤル)https://www.chanel.com/jp/

*「フィガロジャポン」2026年4月号より抜粋

 

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