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紀行作家チョン・ウンスクが案内する、ディープな韓国の酒場。

  • 2026.4.17

伝統とモダン、自然と都会ーーさまざまな表情を持つソウルは韓国映画のもうひとつの主役。韓国映画に精通し、酒場を愛する紀行作家のチョン・ウンスクに、映画の舞台にもなった場所やちょっとディープなソウルを案内してもらった。

北漢(プカン)山の麓にあるサムジョンで一杯。「市内でありながら自然を感じられるロケーションは、山に囲まれたソウルならでは」(ウンスク)

Eun Sook Jung/チョン・ウンスク
紀行作家、コーディネーター。1967年江原道生まれ、ソウル育ち。90年代に日本留学を経験し、日韓両国で映画や酒場関連の執筆、コーディネーターなどを続ける。「月刊ホン・サンス」にコラム連載中。著書に『旅と酒とコリアシネマ』(A PEOPLE刊)、『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』(双葉社刊)などがある。https://x.com/Manchuria7

サムジョン samjeong[ 牛耳洞 ]

都会のオアシスで、炭火ウナギをつつく一興。

パンチャンと薬味がついた定番のウナギセット「민물장어」1kg 85,000ウォン。肉厚な国内産養殖ウナギは、ほんのり韓方風味がある甘めのたれで千切りショウガと一緒に食べるのがおすすめ。サムジャン(合わせ味噌)を付け、サンチュやエゴマで巻いても◎。ビール「맥주」1本6,000ウォン

2025年12月に日本で公開されたばかりのホン・サンス映画『小川のほとりで』。キャンパスでのシーンが多い中、キム・ミニ演じる主人公と俳優である叔父、大学教授の女性が渓谷沿いの店でウナギを食べるシーンが印象的だ。そのロケ地がサムジョン。創業60年を超える老舗で、3代目が引き継ぐいまも毎朝5時に養殖場からウナギを捕獲し、自らさばく。韓方を入れたオリジナルのたれで食べるウナギは力強く、サンチュで巻いても味がくっきり。「映画では、叔父と大学教授の間の男女関係を匂わせるように描かれたりしていますが、精力と紐付くウナギを囲むシーンに監督のリアリズムを感じます」(ウンスク)

上:渓谷沿いに立つ店。室内もあるがランチタイムは景色が楽しめるテラス席が人気。場所柄、登山帰りの客が多い。オーナーいわく「満席でも、疲れている登山客が来たら無理矢理席を作る」と、この場所ならではの気遣いを見せる。ウナギがなくなり次第閉店するので、予約もしくは早めの訪問がベター。下:監督デビュー30周年を記念し、5カ月連続で新作を公開する「月刊ホン・サンス」が開催(現在終了)。『小川のほとりで』はその2作目として公開された。©2024 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved

samjeong
サムジョン
삼정
서울시 강북구 삼양로181길 110
Ⓜ︎北漢山牛耳(S110)1番出口
営)11:00~21:00L.O.  ※売り切れ次第終了
不定休

モンフィ Monghee[ 南山 ]

大人の語らいにぴったりな、小さなワイン&ビールバー。

映画に登場したワインと。「ソジュ(焼酎)でもマッコリでもない。ワインは大学教授というスノッブな登場人物にぴったり」(ウンスク)

ホン・サンス映画に欠かせないのが"酒"。「『旅人の必需品』でもイザベル・ユペール演じる主人公がことあるごとにマッコリを飲んでいたし、お酒を飲んで語らいのシーンになることもたびたび。お酒は自分を解放させるためのフックになっています」(ウンスク)。コージーなバー、モンフィも『小川のほとりで』の語らいのシーンで登場。主人公たちが食べたチーズやワインのほか、カプレーゼなどおつまみメニューも充実。女性店主の温かな接客も評判よく、国内外からホン・サンスファンが訪れる。

左:ローヌ産ワインは、シラーを軸にグルナッシュを合わせ、骨子がありながらも柔らかな飲み口。「Marrenon/Grand Marrenon」ボトル49,000ウォン。チーズの盛り合わせは日によって内容が替わる「A Ch eese Platter」23,000ウォン。ニンニクが利いたバジルペーストは材料がある時だけサービスとして供される。右上・右中:『小川のほとりで』ではウナギを食べた数日後、主人公たちが訪れる。撮影に使われた席は山小屋風のインテリア。©2024 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.右下:サムジョンからひと駅、北漢山の麓の街にある。

Monghee
モンフィ 몽희
서울시 강북구 삼양로155길 17
Ⓜ︎ソルバッ公園(S111)2番出口
営)18:00~24:00L.O.
休)日
@_mong_hee

小説 ソソル[ 三清洞 ]

映画人たちが集う、隠れ家的バー。

奥の壁は山の岩壁をそのまま活用。運が良ければママ(店主)の歌が聴けるかも!?低音ボイスが紡ぐ歌声は鳥肌もの。

「狭いところほどコミュニティができる」とウンスクが語るとおり、三清洞の小径にある酒場、小説は夜な夜な映画人たちが集まる。俳優クォン・ヘヒョが訪れたり、俳優で監督のチョン・ジニョンがミニ上映会を開催することも。女性オーナーのヨム・ギジョンは歌手でもあり、彼女の酒場人生を題材にしたドキュメンタリー映画が話題になったこともある文化人。店にメニューはなく、スペイン風サラダや慶尚北道(キョンサンブクド)の地ビールといったお酒が店の定番。

上:慶尚北道産「安東ビール」を飲みたくなったらタモですくって。下:1988年に酒場をスタート。場所を転々と変え、2024年ソウルにカムバ。以前の店舗は『次の朝は他人』(11年)のロケ地にもなった。「映画的空間が恋しくなると来る」とウンスク。閉店時間はママと客次第。

ソソル
小説 소설
서울시 종로구 삼청로 106-9
Ⓜ︎安国(328)1番出口
営)18:00~
休)日 ※ほか不定休あり

楽園 ナグォン[ 鐘路 ]

下町のアトリエでディープな酒場体験。

料理5品とお酒でひとり50,000ウォンが目安。営業時間は日によるので、予約もしくは来訪前に電話が確実。豆腐とタラコをつまみつつ、60度ほどある手造りの酒を飲み交わす店主とウンスク。

広告マーケティングの仕事をしていた店主が5年前に開業。飲みながら打ち合わせをしていたスペースが、次第に世界のお酒が集まる博物館のような空間に。「鐘路3街という、人も店もカオスな街の雑居ビル5階。お酒好きが集まり、ひとつのテーブルを囲む雰囲気が、まさにホン・サンス的世界」(ウンスク)。気軽に一杯もOKだが、基本は店主におまかせ。料理と合わせたペアリングも完璧で、店主手造りの清酒やソジュも登場。一度足を踏み入れたら、ディープな韓国酒場の世界にハマること間違いなし。

左上奥:韓国の酒を中心に、手造り酒や世界の酒がずらり。奥の書は気分で替える。左上・左上中:画家・書道家としても活躍する店主、クォン・ドギョン。隣接のアトリエで一筆、「あなたと共に生きることが芸術」とフィガロへ揮毫。上右:階段しかないため帰りは特に注意!右上奥:料理は一期一会。この日は牛刺しと生牡蠣の盛り合わせが提供された。

ナグォン
楽園 낙원
서울시 종로구 수표로 132 5층 506호
Ⓜ︎鐘路3街(130、329、534)5番出口
営)夕方頃~
不定休
要予約

Jazzletter ジェジュレト[ 景福宮 ]

ノスタルジックな空気漂う大人の遊び場。

奥には低音用アンプと高音用アンプ、マスターがDIYした真空管アンプもある。

1970年代築の長屋をリノベーションしたジャズバー。「音響が最高にいい。ひとりで行ってもお客さんと交流できて楽しいし、何よりマスターがおもしろい」(ウンスク)。デザインを学び、写真やインテリアの仕事をしていたマスターが細部までこだわった空間にはLPレコードが約300枚、CDが約1500枚並び、リクエストも可能。ウィスキー片手にひとり楽しむもよし、マスターとカルチャー談議をするもよし、ここは大人の遊び場なのだ。

左:お酒はビールとウィスキーが基本。ポップコーンかチョコレートが付く。バーボンロック「에반스 위스키」グラス 8,000ウォン右:夜は静かなエリア。周りには『へウォンの恋愛日記』(2013年)のロケ地が点在する。

ジェジュレト
Jazzletter 재즈레터
서울시 종로구 사직로10길 9-2 2층
Ⓜ︎景福宮(327)7番出口
営)18:30~23:50L.O. ※早仕舞いすることもある
休)日 ※祝不定休
@jazz.letter

*「フィガロジャポン」2026年2月号より抜粋

photography: Youngwoong Yimcollaboration: JaKyung Jung  協賛:韓国観光公社(@kto.japan)

※20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。

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