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【MLB】「フレーミング」の終焉と「空間把握」の台頭 MLBの勢力図を塗り替える“ABSのリアル”と新たな戦略論

  • 2026.4.9
ABSチャレンジを求めて頭を叩くシーンも増えている(C)ロイター
SPREAD : ABSチャレンジを求めて頭を叩くシーンも増えている(C)ロイター

2026年シーズンからMLBで本格導入された「ABS(自動ボール・ストライク判定)チャレンジシステム」は、単なる誤審防止の枠を超え、野球という競技の戦術的根幹を揺さぶっている。
スプリングトレーニングでの練習運用でも、スタジアム全体が判定に熱狂するなどエンターテイメントとしても野球の形が変わりつつあるこのABSに関して、先日MLB公式サイトは「A comprehensive dive into what we've learned so far from ABS challenges(ABSチャレンジからこれまでに分かったこと:包括的考察)」という記事で論じている。

■重要なのはチャレンジのタイミング

記事内では、マリナーズ対ガーディアンズの開幕シリーズにおいて「打者が躊躇している」ことに言及。ABSチャレンジを行いたいものの、打者の多くがヘルメットを叩くことを躊躇しているというのだ。「選手たちは今、投球ごとにリアルタイムの計算を強いられている。チャレンジ権は希少なリソースであり、際どい判定の多くは決断を下すにはあまりに不明瞭だ。そして2秒が経過すれば、チャレンジの窓は閉ざされる」と記されているように、わずか2秒という時間での判断、1試合2回までの失敗という制限の中で“いつ、誰が”チャレンジを行うのかが大切になる中で、打者はチーム戦略を優先して躊躇しているのだろう。
そして、シーズン最初の1週間である程度の傾向が出てきた。記事によると、カウント別の最多チャレンジ数だったのが「2ストライク2ボール」の27件だったという。一方で、初球である「0ストライク0ボール」でのチャレンジが25件で2位にランクインするというデータも。記事内において「カウントによる『得点期待値(run-value)』の差は極めて大きい。例えば、フルカウントでの一球は、走者が出るかアウトになるかで得点期待値が『.730』も変動する。対照的に、初球のボールかストライクかの差はわずか『.070』に過ぎない』と言及しており、今後運用が進むにつれてチームごとの特色も出てきそうだ。
記事内ではさらに、「チャレンジのタイミングを決める最大の要因は勝利確率(Win Probability)の変化だ」とも指摘。「これまでのチャレンジの54%は6回以降に行われた。6回以降は試合時間の44%しか占めないが、一般的にレバレッジが高まる時間帯だ」というように、やはり試合の勝敗が決定的になる場面でのチャレンジが多く、試合序盤でのチャレンジはあまりメリットがないことを選手、チーム共に理解して運用している傾向にあるようだ。

■新たなタイプの捕手台頭も?

そして最も重要な論点として挙げられるのが「誰がチャレンジを行うべきか」だろう。投手、捕手、打者の3人が対象者のこの制度。記事内では「投手の成功率が最も低い」「捕手はもっとチャレンジしてもいいはずだ」と言及。実際に、昨シーズンマイナーリーグで試験運用されていた際の成功率は投手41%、打者50%、捕手56%だったという。
この数値をみても、今後捕手に求められる“価値”は再定義されるかもしれない。これまで捕手の評価において大きな比重を占めていた「フレーミング」はその価値が極めて低くなる一方、「ストライクゾーンの絶対的な空間把握能力」が求められるのではないだろうか。この変化は、捕手の市場価値を一変させる可能性があり、今後新たなタイプの“名捕手”が誕生するかもしれない。例えば、今季開幕から4連続チャレンジ成功を誇るヤンキースのオースティン・ウェルズ捕手のような存在は、“精密なセンサー型捕手”としての新境地を切り拓いている。

いずれにせよ、ABSチャレンジ・システムは単に誤審を減らすためだけではなく、「期待値というリソースをどう管理するか」という新しい戦略性をベースボールの中に作り出した。今後、チームごとによる運用差や、選手ごと成功率が明らかになってくれば、より戦略として重要なファクターになっていくだろう。

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