1. トップ
  2. 恋愛
  3. 『春夏秋冬代行者 春の舞』絶対に許せない相手なのに、声を聞いて安心してしまう…愛憎渦巻く嵐の前触れのような最新7巻【書評】

『春夏秋冬代行者 春の舞』絶対に許せない相手なのに、声を聞いて安心してしまう…愛憎渦巻く嵐の前触れのような最新7巻【書評】

  • 2026.4.3
春夏秋冬代行者 春の舞 7巻 暁佳奈:原作、スオウ:キャラクターデザイン、小松田なっぱ:漫画/白泉社
春夏秋冬代行者 春の舞 7巻 暁佳奈:原作、スオウ:キャラクターデザイン、小松田なっぱ:漫画/白泉社

この記事の画像を見る

春・夏・秋・冬、4つの季節を顕現する現人神のごとき異能を持つ「代行者」と、その従者にして命を賭して彼らを守る「護衛官」。4人の代行者と4人の護衛官が紡ぐ壮大な和風ファンタジー『春夏秋冬代行者 春の舞』(暁佳奈/電撃文庫/KADOKAWA)。この春よりTVアニメーション化もされる本作のコミカライズ『春夏秋冬代行者 春の舞』の最新7巻(暁佳奈:原作、スオウ:キャラクターデザイン、小松田なっぱ:漫画/白泉社)が発売された。

中心となる人物は、春の代行者・花葉雛菊だ。幼い頃、テロ組織「華歳」に誘拐されて、長らく囚われていた。彼女が自由の身となり、護衛官の姫鷹さくらと共に旅に出るところから物語は始まり、季節を巡らせる者たちのドラマが丁寧に紡がれてゆく。

雛菊は世界に春をもたらす存在でありながら、その力ゆえに恐ろしい目に遭い、心に癒えない傷を負った。彼女を支えるさくらの忠誠心は“信仰”に近いほどに強く、深い。彼女たちの関係は単なる主従を超えて、魂と魂がむすびついているかのよう。

その他の季節の者たちも、さまざまな関係を築いている。冬の代行者・寒椿狼星とその護衛官・寒月凍蝶の、互いに信頼しあい、身を預けあうバディ関係。夏の代行者・葉桜瑠璃と、その姉であり護衛官・あやめの、実の姉妹だからこその率直な感情のぶつけあいと距離感。秋の代行者・祝月撫子とその護衛官・阿佐美竜胆は、唯一の異性同士の組み合わせだ。まだ幼い撫子を竜胆は徹底的に庇護し、撫子はひたすらに彼を慕う。

ちなみに狼星と雛菊は互いに想いあう仲であり、凍蝶とさくらは、かつて師弟関係にあった。冬と春は代行者たちも護衛官たちも近しい関係だったのだが、雛菊誘拐事件によって関係は砕かれた。

雛菊を――結果的に見捨てたことになった――冬側をさくらは憎み、今なお凍蝶を許していない。狼星もまた雛菊への贖罪意識に苦しんでいる。

損なわれた関係は修復され得るのか? この問いが常に物語の底に漂っている。

ストーリーが進むにつれて浮かび上がってくるのは、季節を顕現する神話的な力の裏側にある政治と陰謀、そして人びとの思惑だ。7巻では、3つのドラマが同時に進行する。

賊に拉致された撫子を救出すべく奔走する竜胆と、瑠璃&あやめの共闘。四季庁で籠城戦を展開する雛菊&さくら。2人を助けるため四季庁へ向かう狼星&凍蝶。見どころはたくさんあるが、特に感動的なのは以下の場面だ。

雛菊だけでなく庁内の職員たちを守り、奮闘するさくらだが、次第に追いつめられていく。そんな彼女に、凍蝶が携帯電話で言葉をかける。自分はおまえの味方だ、と。

絶対に許さない、許せないはずの相手なのに、声を聞いたらたまらなく安心してしまう――。

自分のなかには彼への信頼感が、まだ残っていた。忘れていたそれを、思いだした。

さくらのそんな気持ちが伝わってくる。

再び雛菊を奪わんと「華歳」が迫りくるなか、事態はどこへ向かうのか。季節を顕現する使命と、それを脅かす力。守る者たちの覚悟と錯綜する人間関係。絡まりあう全ての要素が、いよいよクライマックスへ突入する。春は芽吹きの季節だ。同時にそれは嵐の前ぶれでもある。

文=皆川ちか

元記事で読む
の記事をもっとみる