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生理や更年期で「申し訳ない」と自分を責めてない? 2026年、日本のSRHRが変える“私の体の主導権”

  • 2026.3.28
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話を聞いたのは……
草野洋美(HIROMI KUSANO):
公益財団法人ジョイセフ、シニア・アドボカシー・オフィサー。SRHRに関する活動を行う市民社会グループが集まるプラットフォーム、SRHR for ALLアクション!の事務局担当。日本のSRHRとジェンダー平等の状況を改善に取り組んでいる。

「私のからだは、私のもの」──世界共通の当たり前の概念

本誌で「SRHR」という言葉を前面に出した特集を最初に組んだのは、2020年7月号。そこから何度か特集を組んできた。しかし残念ながら「SRHR」という言葉はまだ日本社会で広くは浸透していない。そもそも「SRHR」とは、Sexual and Reproductive Health and Rightsの略語で、直訳すると「性と生殖に関する健康と権利」、女性をはじめすべての人の 性と心身の健康を守る概念だ。

「産む・産まないを女性自身がコントロールするべきとする概念が始まったのは20世紀初頭の欧米の女性たちの運動がきっかけです。人口抑制のため特に開発途上国で女性たちの意志に反した避妊・不妊・中絶などが行われたこともありました。産む・産まないを含む性と心身の健康と権利の問題に初めて言及したのが、1994年にエジプトのカイロで開催された国際人口・開発会議(ICPD)。産む、産まないは個人が決めることであり、自分の体に関することを自分自身で決められることが人権であると初めて定義されたのです。

そして、翌年の北京会議では、女性の人権には、強制・差別・暴力を受けることなくSRHRが守られることも含まれると明記されました」と話すのは、日本でSRHRに関する情報提供や発信などを行っている公益財団法人ジョイセフのシニア・アドボカシー・オフィサーの草野洋美さんだ。この北京会議では、日本を含む189カ国が参加し、SRHRを人権の重要な概念とする動きが広がった。My Body, My Choice(私のからだは、私のもの)のスローガンは、1969年にアメリカのフェミニストが掲げた言葉で、その後SRHRを象徴するワードとしても広く浸透している。

日本での「SRHR」の言葉の浸透度は驚くほど低い

では、日本ではSRHRについてどれぐらい浸透しているのだろうか?

「ジョイセフが定期的に行っている『性と恋愛』の調査の中で、2025年に『SRHRって説明できる?』という質問に対して、15~29歳が2.4%、30~64歳では1.2%という結果でした。SRHRの言葉だけを説明すると『性と生殖に関する健康と権利? なんだか難しそう』と思われてしまう。でも、実際には誰もが生きていくうえで関わる事柄なのですが、それが伝わっていないと感じます。生殖とつくと、セックスに関することとか健康情報であると思ってしまう人が多いですが、それだけではありません。内容は多岐にわたり、恋愛、セックス、月経や性感染症、避妊、妊娠、中絶、出産、不妊、男性不妊といった婦人科領域やそれ以外の健康に関する事柄、また、性暴力の問題も大きなテーマです。

こういった事柄について、社会や周囲の声ではなく、自分で決定していい、とお伝えしたいのですが、日本の場合、自分の体について自己決定する機会を無意識の中で奪われてきてしまい、それが当たり前と感じている人がとても多い現状があります。例えば、生理で体調が悪くて仕事を休むときに、生理で休んでいいとわかっていても『申し訳ない』と思ってしまう……。セックスを要求されたときに生理中だと相手になぜか『申し訳ない』と感じてしまう……。メディアの発信をみても「不調を乗り切るために」といつも体調も機嫌もよく、きれいにしていることがまるでよしとされているかのよう。わかりにくいSRHRを自分事として感じてもらうとすれば、『自分の体を申し訳なく思うのをやめて、自分らしく快適に生きる権利』とお伝えするのがいいかもしれません」

SRHRは私たちの基本的人権であるにもかかわらず、その概念すら知られていないという現実がいまだにある。人権を尊重した性教育の遅れも大いに影響していると言えそう。出典:国際協力NGOジョイセフ「性と恋愛」意識調査2025 Hearst Owned
9000人を対象にしたこの調査結果から、日本社会には依然として産むべきという圧力が存在し、特に男性にその傾向がある。出典:国際協力NGOジョイセフ「性と恋愛」意識調査2025 Hearst Owned

私たちは「申し訳なく思わされてしまう社会」に生きている

SRHRの取材をすると、日本の現時点が世界の中でいかに遅れているか、驚愕することが多い。「確かに、低用量ピルの解禁も欧米など他国に比べて、40年も遅れていました。今回、緊急避妊薬の薬局販売が開始されますが、これも他国では当たり前です。他の国では、女性たちが当たり前に言葉にできたり、購入できたり、使用できるものが、日本にはないという現状があります。

しかも、そのこと自体、社会の中で問題視されず見過ごされてしまう。社会の基準が、古い男性の視点の価値観で今も回っている部分は少なくありません。今国が積極的に進めている少子化対策に関しても、産まない選択がしにくい社会構造を強化する危険性があります。実際、2025年の『性と恋愛』の意識調査で『子どもを産めるのに産まないのは、わがままだと思う』の質問の回答から、日本には『産むべき』という社会的圧力が今も根強く残り、特に男性にその傾向が強いことがわかりました」。

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日本と同じように家父長制が残る韓国も日本と同じようにSRHRの分野では遅れていた部分もあった。しかし、近年目覚ましい変化が見える。性暴力に関する法改正、性教育の浸透、デジタル性犯罪などの問題が起きるたびに、声を挙げ、国が動いている。日本で、そういう動きがみられないのはなぜなのだろうか?「日本は民衆の力で国を動かしたという成功体験の歴史がないことが、デモなどの運動が広がらない原因ともいわれています。ですが、緊急避妊薬の薬局販売を成し遂げたように、変化は確実に生まれてきています。だからこそ、申し訳なく思うのをやめよう、みんなのSRHRを守ることを連帯して実現したいと思うのです」

From Harper's BAZAAR April 2026 Issue

 

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