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求めているものが手に入らなくて苦しい。でも、手に入っても苦しい理由

  • 2026.3.24

欲しいものを手に入れたとき、あなたはどんな気持ちになるだろう。

憧れていたブランドのバッグを買ったり、努力して権威ある賞を受賞したり、昇進して給与がアップしたりした時、最初の数日は、確かに幸せを感じるはずだ。しかし、その幸せは長くは続かない。

手に入れた時点がピークで、そのあとは徐々に気持ちは凪いでいく。そして、気づけばまた、「次のもの」を欲している————そんな経験は、誰にでも一度や二度あるはずだ。

19世紀ドイツの哲学者ショーペンハウアーは、この繰り返しこそが人間の本質だと看破した。人間が生きている限り、何かを手に入れてもまた次の欲が生まれ、その欲望には際限がない。何かを欲して得られない時間が繰り返しやってきて、求めても得られない苦しみを、一生涯に渡って感じ続ける人も少なくない。欲望に際限がないということは、つまり欲望に振り回される限り、永遠に満たされることもないということだ。

それゆえショーペンハウアーは、本当の幸せとは「満たすこと」ではなく、「求めないこと」から生まれる、と言う。

『求めない練習 絶望の哲学者ショーペンハウアーの幸福論』(カン・ヨンス著 吉川南訳 ダイヤモンド社)は、ショーペンハウアーの幸福論をわかりやすくまとめた一冊だ。

「求めているものが手に入らず、苦しい」
「欲しいものが手に入ったのに、どこか虚しい」

「幸せなのは一瞬で、すぐに次の欲望が出てきて際限がない」

そんな風に感じている方は、彼の幸福論から学べることがあるだろう。

「成功=幸せ」ではない

ショーペンハウアーにとって、幸福とはなんだろうか?

欲しいものを手に入れるなど、成功すれば幸福になれると考える人は多い。しかし、ショーペンハウアーは、成功と幸福の関連性を否定して、以下のように述べている。

「成功したければ望むものを手に入れるがよい。
幸せになりたければ、いまあるものを楽しむがよい。」

ショーペンハウアーにとって幸福とは、成功でも富でも成果でも出世でもない。彼は、「今この瞬間に大きな苦痛がないなら、すでに幸福を享受している」と定義している。

つまり、「肉体的、精神的苦痛を感じていないこと=幸福」だと考えたのだ。

人間は欲望を持ち続け、満たされてもすぐに飢餓感を覚え、不幸になる。であれば、快楽を積極的に追求するのではなく、苦痛を減らすこと、また、外側に新しいものを探しに行くのではなく、今すでに持っているものの価値をもう一度見直してみることこそ、幸福の源泉になり得る、というわけだ。

欲望の果てしなさを理解し、今あるものに感謝し、求めすぎないようにすることこそ、幸福への道なのだ。

「欲望が満たされる=幸せ」ではない

現代社会では、私たちは他者との比較を強いられ、成長や効率化を求められる。それゆえ、他者に勝つことや、自分の限界を突破して成長すること、コスパよく立ち回ることがよしとされがちだ。「もっと上を目指す」ことは、向上心があり、勤勉だと褒められる。しかし、「もっと上」に辿り着いたとて、そこが幸福の地である保証はどこにもない。

また、努力している時は夢中でも、あまりに簡単に欲望が満たされ、欲望の対象が消えてしまうと、人間は空虚と退屈に陥ってしまう。

ショーペンハウアーは、「空腹も苦痛だが、満腹もまた不快」だと述べている。

例えば、お金持ちになろうと努力して、使いきれないほどのお金を得たのち、空虚さを感じる人は少なくない。

欲望が満たされない間は欠乏感に苦しむ一方、欲望が過剰に満たされてしまうのも不快だとすれば、私たちは欲望とどう付き合っていけばいいのだろうか?

ショーペンハウアーは、「私たちは欲求の欠乏と過剰の、両方を避けなければならない。どちらも極端になれば不幸になるかもしれない。欠乏と過剰のバランスをとるべきだ」と示唆している。

人間として生きている限り、欲望は際限なく湧いてくる。であるならば、「過剰な欲望」に振り回されず、「求めすぎない」方法を探っていく必要があるのだろう。

あなたの見方を変えると、世界は変わる

現代は、普通に生きていたら欲望を刺激され、消費や成長を促される時代だ。だからこそ、欲望の扱い方を学び、幸福とは何かを見つめ直す必要があるだろう。

ショーペンハウアー「求めない」生き方とは、何もしないことではない。欲望に引っ張られるのをやめ、自分の軸で生きることを選ぶ、能動的な選択だ。

ショーペンハウアーは、「人間の幸福は、ポケットに何が入っているかよりも、頭の中に何が入っているかにかかっている」と述べている。

果てしない欲望とそれに伴う苦痛から逃れる道は、あなたの頭の中にある。

「求めているものが手に入らず、苦しい」
「欲しいものが手に入ったのに、どこか虚しい」
「幸せなのは一瞬で、すぐに次の欲望が出てきて際限がない」

そう感じているなら、意識を「外」から「内」へ向けてみてほしい。成功でも、承認でも、次の欲望でもなく、今この瞬間に苦痛がないことの静けさに、目を向けてみよう。
ショーペンハウアーが「求めない」と言ったのは、何も持つなということではない。持っていないものではなく、「すでにあるものを、ちゃんと見つめてみよう」という提案なのだ。

それだけで、世界は変わるだろう。

原宿なつき

関西出身の文化系ライター。harajyukunatuki@gmail.com

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