1. トップ
  2. 恋愛
  3. 秀吉の暴走を防いだのは秀長の「人の良さ」? スゴ腕経営者だった一面にも注目! 大河がもっと面白くなる歴史教養『教科書に載っていない日本史のおカネの話』【書評】

秀吉の暴走を防いだのは秀長の「人の良さ」? スゴ腕経営者だった一面にも注目! 大河がもっと面白くなる歴史教養『教科書に載っていない日本史のおカネの話』【書評】

  • 2026.3.24
教科書に載っていない日本史のおカネの話 丸山淳一/中央公論新社
教科書に載っていない日本史のおカネの話 丸山淳一/中央公論新社

この記事の画像を見る

日々きな臭くなる世界情勢の影響は? 物価高にあえぐ日本国内はどうなる? 連日、押し寄せるニュースの大半にはなんらか「経済」の視点を含んでおり、逆に「経済の仕組み」から「いま」が読み解かれることは当たり前。むしろそれを欠いたらナンセンスだろう。

一方、「昔」を考える歴史の観点ではあまり経済が意識されない。さすがに列強入り以降の日本現代史では世界経済が大きく関わってくるが、それ以前、たとえば戦国時代や江戸時代となるとどうだろう。「楽市楽座」「享保の改革」など語句は覚えていても、経済・財政政策として具体的に説明せよと言われても戸惑う人が多いかもしれない。日本の歴史を語る時、最も欠けている視点は「経済」ではないか――このほど登場した『教科書に載っていない日本史のおカネの話』(丸山淳一/中央公論新社)は、そんな疑問から生まれた1冊だ。

著者の丸山淳一さんは現・読売新聞編集委員で、30年以上経済関連の取材を続けてきたベテラン新聞記者だ。丸山さんは読売新聞オンラインで人気コラム「今につながる日本史」を連載しており、本書はその中から経済に関するエピソードを抜粋&パワーアップしてまとめたものだ。登場人物は織田信長、豊臣秀吉&秀長、田沼意次、長谷川平蔵、大石内蔵助、蔦屋重三郎、渋沢栄一など大河ドラマでも見たことがある面々多数(ちなみに来年の大河で取り上げられる小栗上野介忠順も登場する)。

たとえば現在放送中の『豊臣兄弟!』で俄然、注目の豊臣秀長。本書では兄・豊臣秀吉を天下人に押し上げた秀長の3つの才覚に注目する。一つ目はその温厚篤実な人柄。秀長は秀吉配下の大大名に政権の意向を伝える役割を担ったが、それができたのも彼がいい人だったからで、大名も彼が間に入るから秀吉と良好な関係を保つことができた。

2つ目は戦上手だったこと。秀吉に代わって全軍の総大将をつとめたこともあったが、下剋上の世の中で「絶対に寝返らない」相棒を持てたことが秀吉に利したのは当然だろう。そして3つ目が領国経営の才覚、つまり経済の才覚で、秀長は秀吉の本拠地・大坂ののどもとにある難地(寺社勢力が強いなど)の経営をまかされた。秀長は徹底した領地の検地、寺社に武器の提出を求めるなどさまざまな施策を実施したが、それはのちの「太閤検地」「刀狩令」へとつながっていく。つまり重要政策の実証実験の場をあらかじめ秀吉に提供したわけで、政権の強力な後押しになったのは間違いない。

残念ながら秀長は働きすぎて命を縮めてしまい、その後、調整役がいなくなった秀吉は暴走し政権は崩壊へと向かう。「忠実で有能な人に頼ってその才覚を使い果たしてしまうような組織は長続きしない」と、本書において「温故知新」の精神を貫く著者の視点も示唆に富む。

なお冒頭には歴史好きで知られるタレント・山崎怜奈さんとの対談も収録。各エピソードはそれぞれ完結しているので興味のあるところから読み進めても問題ないし、コンパクトでわかりやすいのもうれしい。世相は変わっても、さまざまな問題に直面した時の人の思考はそう変わるものでもないだろう。本書で「経済」に注目して先人たちの苦労&工夫の道のりを振り返れば、先の見えにくい今にも通用するヒントが見えるかもしれない。

文=荒井理恵

元記事で読む
の記事をもっとみる