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「次にくるライトノベル大賞」単行本部門、第1位! 裏社会の男たちが異世界へ。幸せに暮らしていた勇者や悪役令嬢の生活を破壊していく!?【著者インタビュー】

  • 2026.3.23

今もっともブレイクが期待される新作ライトノベルを読者の投票で決める「次にくるライトノベル大賞」。2月23日に発表された今年の単行本部門で第1位に輝いたのは、著者・良い人による作品『異世界転生勧誘詐欺』だった。

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普通ならば高校生やサラリーマンなどが主人公になりがちな異世界転生ものだが、本作で異世界に旅立つのは、歌舞伎町にたむろする、裏格闘技のリングアナ、シーシャ屋、ホスト、スカウトなど、カタギとは縁遠い暮らしをしている男たち。

裏社会をサバイブしてきた彼らの流儀は異世界でどこまで通用するのか。近年の異世界ものの中でもかなりの異彩を放つ本作がどのようにして生まれたのか。そしてこの作品を生み出した良い人先生は本当に「良い人」なのか? 受賞を記念して話を訊いてみた。

本作を読んで異世界に警戒心を持ってください

――歌舞伎町にたむろするハイスぺな怖いお兄さんたちが異世界に転生する、という強烈な設定にまず目を引かれました。この発想に至ったきっかけを教えてください。

良い人:怪談好きの一家に生まれました。リビングには怪談話が流れていて、テレビにはお化けが映っていました。

私は家族が怖い物語で楽しんでいるのを見て、娯楽とは恐怖を感じることなのだと認識しました。よってそれ以来、恐怖映画ばかりを観漁っています。

映像の中の人々は、かけがえの無い日常をお化けに脅かされたり、幸せな一家を凶悪人物に壊されたり、大切な街を宇宙人やゾンビに侵略されたりしていました。

そればかり観ていた為に、私にとっての面白い物語の要素は「理解不能な生命体に大切なものを破壊されること」「罪のない人が物凄く嫌な思いをさせられること」になったのです。これを見ると私は「怖くて嫌だな」と思うと同時に、頭の中に埋め込まれたチップが「面白い」と喚いて振動するようになりました。

この式に則って、流行りの異世界物語を考えました。

式に当てはめると、かけがえのない異世界は「理不尽に破壊」されなくてはなりません。

破壊する者は「異世界に逃げ込んだ我々が最も恐れる侵略者」でなくてはなりません。

これにより、歌舞伎町にたむろするハイスペな怖いお兄さんたちが転生し、かけがえのない異世界を破壊するという設定になりました。

きっかけというよりは、「手持ちの部品がそれしかなかったので、拾い集めて繋ぎ合わせた」に近いのだと思います。

――強烈な回答をありがとうございます。本作ではそうした侵略者である主人公たちの悪役としての解像度がとても高く、軽いノリの会話やファッションの描写などもとても生々しく感じられました。彼らの存在にリアリティを出すために何か特別な取材を行ったのですか?

良い人:私は機械で圧縮されると、オタク成分でのみ構成された四角形に変わります。

よって我が身からはそういったノリの会話やファッション知識などは出てこなかったので、友人に相談したり、実際に歌舞伎町に何度も行って色んな人に話を聞いたりしました。

特別な取材を行ってみたいものです。陽キャ様を集めて監視カメラで眺め続けられたなら良いのですが、それをするとほぼデスゲームの主催になってしまいますね。

――この作品がよりヒットしてそうした取材ができるようになるといいですね。本作の主人公たちは全員悪人ですが、彼らの言動や思考、内面を描く上で意識していることや気をつけていることを教えてください。

良い人:悪の書き分けができればと試行錯誤しております。それと同時に、「言い方はキツイけどなんだかんだ言ってることは正しい」にならないように気をつけてもいます。

主人公はホイッスルを鳴らしたら終了の合図がない限り世界が終わるまでヒステリーを続けることができる無敵のエンジンを積んだいじめっ子であり、それ以上の何者でもないように調整しています。彼の未熟さや幼稚性をちゃんと書けたら、と頑張っています。

逆に、異世界人である凶悪危険人物のチャッキーなどは、非現実的な言動や思考を目指しています。

刃物を持った人物が支離滅裂なナゾナゾみたいなことを言ってきたら「あ、これは助からなさそうだな」とガッカリしてしまいますよね。そんな話の通じない怪奇さを大事にしています。

とはいえ、そんな不気味生命体も人である以上電気代や更新料を払ったり、切れた電球を替えたりするような生活もしているはずなので、急に普通の人みたいに話すという一面もなるべく忘れずに書いています。

怪奇人物にもちゃんと生活があって、「シンクの汚れってクエン酸が効くんだな〜!」と思う瞬間だってある。そんなラブリーな素顔を大事にしていきたいですね。

――本作ではそんないじめっ子であるコモンたちによって、ハーレムを築いていた勇者や悪役令嬢など他の様々なパターンの転生者が次々とひどい目に遭わされます。良い人先生は普段から異世界転生ものを読まれているのでしょうか? またそれ以外では、どのような本をお読みになりますか?

良い人:異世界転生ものはよく読みますし、大好きです! 大好きな夢の世界だからこそ、身近な上位存在である陽キャ様に畏れ多くも破壊して頂き、一種マゾヒズム的な浅ましい喜びと侵略者への恐怖を満たしております。

本作は概念上の異世界であり、他作品の異世界は私が思いついた侵略者如きには屈さぬ頑丈さと清潔さを持っているはずだと考えています。

私は自分の望んだ形をした不愉快生物に夢の世界を蹂躙されると脳がジンジンになるという不可解な回路を持っているもので、どうしてもこうなってしまうだけなのです。

異世界転生もの以外では、天狗に関して詳しく書いてある本や、古美術についての本を一気に読んで一時的に詳しくなり、暫く経って八割忘れるということを繰り返しております。短期記憶というものは信用なりませんね。

――元々本作はWEBで連載されていましたが、それまでに小説の執筆経験はあったのでしょうか? またWEBに連載する上でテンポや読みやすさなど意識している点はありますか?

良い人:細々と活動をしておりましたが、一次創作は今回が初めてです。一次創作をWEBで連載するという経験もなく、友人に相談してカクヨムさんに掲載させて頂きました。

どういうテンポで、どんな設定で、どんな書き方が好まれるかを全く知らず、何も考えず垂れ流していました。

誰もいない道を大声で歌いながら歩いているような感覚です。少しでも何か意識していれば良かったな、と思っております。

――登場人物たちを悪く、そして格好よく描き出す白油先生のイラストも本作の大きな魅力のひとつだと感じます。完成したイラストを初めて見たときの感想と、特にお気に入りの一枚があれば教えてください。

良い人:初めて主人公を描いてくださったのが白油先生でした。数年前からずっとこのキャラクターたちを捏ねていたのですが、昔から交流のあった白油先生が慈悲深くもイラスト化してくださり、初めてそれを見た私は途端に社会性を失いました。強烈な喜びに動物的な反応以外にできなくなってしまったのです。

それからというもの白油先生の描いてくださったイラストを毎日眺めて(今も見ています)物語を考えています。頭の中の人物がイラストとなって視覚化できた瞬間はある種の神秘体験でありました。

生き生きとした劇場性のイラストは知性と感情の両方に訴えを起こす完全さがあり、私はあれから取り憑かれたように彼らを書いています。

お気に入りの一枚は第2巻の71ページの挿絵です。我々は決して陽キャ様に逆らえないのだと直感的に理解できる超絶技巧のイラストは、文字には不可能な視覚的説得力の全てを担ってくださっています。

この場を借りて心からの感謝を。是非その目でお確かめください。

――チーム歌舞伎町の面々をはじめ、男性なのに女神をやっているチャッキーや、独自の思考回路で行動する悪魔のハンマーとジェットなど、どのキャラも大変クセが強いのですが、彼らの中で良い人先生のお気に入りのキャラは誰でしょうか?

良い人:どのキャラも好きですが、お気に入りなのは超常現象ほどモテる「シャオ・カルト」というキャラクターです。

見る者全ての思考回路を焼き払い、男女問わず恋と欲望の雨に打たれ続けるカカシと変える恐るべき美貌衝撃体である、というキャラクターは書いたことがないので新鮮に楽しいですね。

モテ過ぎるキャラクターはあまり扱ったことがないですが、理屈を凌駕する人類頂点存在だと仮定して進めると案外楽しくてついつい書き過ぎてしまいます。

彼のことは新種のウィルスとして扱っています。誰しもがその光(ひかり)麗(うるわ)しさに極限のパニックとヒステリーを起こし、狂気を膨らませてしまう人物が主人公でもなんでもないという点が特にお気に入りです。

美しすぎて逆に迷惑ですらある彼の波乱怒涛人生だけで、一冊書いてみたいな〜という気持ちがあります。

彼はキャラクターというより、人の恋心を強制的に引き摺り出す怪異に近いですね。恐ろしくて何よりです。

――一般的な異世界転生ものとは一味違った内容となっていますが、これまで異世界転生作品をあまり読んでこなかった方にも、本作を勧めるとしたらどんな点を挙げますか?

良い人:異世界転生ものをご存知なくとも、なんとなく異世界は幸せが溢れているらしいということは皆さんご存知かと思います。行けば幸せが約束された楽園であると認識されているかもしれません。

しかし歴史上、幸せが約束されていると謳った新天地や国家、労働場所は蓋を開けてみれば恐ろしい過酷さが敷き詰まった場所ばかりでした。人々は騙されたと嘆く暇もなく、その場所で死ぬまで働かされてしまいます。

人々が異世界に対し妄信的になればなるほど、得をしているのは誰でしょうか?

異世界人です。我々は異世界人に「異世界は素晴らしい場所である」と刷り込まれているのです。

故に、本作は「異世界転生勧誘詐欺」というタイトルなのです。

そういうお話です。もしあなたが異世界に対し美しい幻想を抱いているのであれば、本作を読んで警戒心を持ってください。

死後、女神に「異世界に転生しませんか」と言われても断ってください。

本作は女神に騙されて労働力にされないための警告本でもあるのです。

――強烈な紹介をありがとうございます。では最後にこれから本作を読む方へ向けて特に推したい部分の紹介と、一言メッセージをお願いします。

良い人:「無双くんは好きな女の子をデートに誘う勇気もないのになんで魔王倒せると思ったん?」

「お化け屋敷も入る勇気もないくせになんでダンジョンは行けると思ったの?」

「学校で隣の席の人とも仲良くなれなかったのに社交界では活躍できると思ったんだ?」

「体育の授業でペアも作れなかったくせにハーレムは作れるんだ?」

「高校デビューも大学デビューも失敗したのに異世界デビューは成功するんだ?」

──本作は、こういう心にもない言葉を主人公たちが言ってきます。

どうしてそうも具体的で不愉快な嘲笑をしてくるのか。我々の幸せの邪魔をするのか。我々はこの侵略者にどう立ち向かっていけば良いのか。壊されゆく異世界は再建できるのか。

チートや無双劇は、本当に何もかもを薙ぎ倒すことができる万能の武器なのか?

そう考えながらページをめくってください。

彼らを討伐できたなら、異世界や無双は栄光を取り戻し、万丈の楽園になるはずなのです。

私と一緒に、彼らを倒す方法を考えてください。

あなたの力が必要です。

***

こちらの質問に対して次々と刺激的な回答を寄せてくださった良い人先生だが、実際の作品もこれらの回答と同様、非常に濃厚な内容となっている。上記のインタビューで気になった方は、ぜひ一度本作を手に取ってほしい。期待を裏切らない強烈な読書体験が待っていますよ!

取材・執筆:マイストリート

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