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マルハニチロからUmiosへ。魚肉ソーセージから見える挑戦と決断

  • 2026.3.20

魚肉ソーセージが今、再び売り場での存在感を取り戻している。その背景には、タンパク質需要の高まりや備蓄意識の変化といった市場要因に加え、つくり手側の制度への挑戦や技術の積み重ねがあった。今回話を聞いたのは、魚肉ソーセージのリーディングカンパニーの1つとして知られるUmios株式会社(旧マルハニチロ株式会社)・チルド食品事業部 事業企画課の綿引悠太さん。

社名も変化の波を迎えたなか、原料の選定、レトルトを支える製造現場、特定保健用食品発売の舞台裏、心血管疾患リスク低減表示への道のり、さらにブランド刷新の戦略まで、1本の魚肉ソーセージが企業の歩みと現在地を映し出していた。

Umios(旧マルハニチロ)のチルド食品事業部 事業企画課 綿引悠太さん
Umios(旧マルハニチロ)のチルド食品事業部 事業企画課 綿引悠太さん

魚肉ソーセージって、何の魚でできている?

ーーまず基本的なところから伺いたいのですが、魚肉ソーセージはどんな魚を使っているのでしょうか?

【綿引悠太】文字通り主にお魚ですね。メインとしてはスケソウダラで、アラスカなどで獲れたものを使っています。寒いエリアで獲れるお魚ですね。一方で、弊社の場合は太刀魚とかエソ、ママカリとか、なかなか鮮魚では食べない魚も使っています。そちらはどちらかというと東南アジアなど暖かいエリアで獲れるお魚になります。そういったさまざまな魚を組み合わせながら作っています。

魚肉ソーセージについて、一から丁寧に教えてもらった
魚肉ソーセージについて、一から丁寧に教えてもらった

ーー季節によって、配合などに変化はあるのでしょうか?

【綿引悠太】厳密に言うと、その中での組み合わせは調整しています。どうしても自然、天然のものになるので、季節によって脂の乗り方が違ったり、弾力が違ったりします。最終製品が均一になるように、工場のほうで組み合わせながら作っています。同じお魚でもロットによって状態が違うことがありますが、そこはノウハウの中で調整しています。

1935年から続く、魚肉ソーセージの歴史

ーー魚肉ソーセージの歴史はどのくらいになるのでしょうか?

【綿引悠太】弊社で言うと1953年から始めていますので、70年ほどの歴史があります。ただ、食べ物としての発祥は1930年代までさかのぼります。当時はマグロがたくさん獲れていたのですが、冷蔵物流や家庭用冷蔵庫がない時代で、夏になると浜値が一気に下がってしまう。そこで常温で保存可能な加工品を作れないかということで、国主導で試作が始まりました。

1953年当時、久里浜支社で生産開始されたフィッシュソーセージ
1953年当時、久里浜支社で生産開始されたフィッシュソーセージ

記録では1935年に当時の農林水産省水産講習所の教授がマグロを使ってツナハムの試作販売を行ったとされています。弊社が本格的に作り始めたのは1953年で、その頃に参入したメーカーが今も多く残っています。

ーー昭和の時代に広く普及した理由はどこにあったのでしょうか?

【綿引悠太】安価で、常温で保存できて、すぐに食べられるという点が大きかったと思います。昭和世代の方はおやつとして食べていたという記憶が強いですよね。そうやって生活の中に入り込み、各社が改良を重ねながら続いてきました。

昭和のおやつが、今再び選ばれる理由

ーー昭和の懐かしい食べ物という印象がありますが、最近また注目されていますよね。

【綿引悠太】魚肉ソーセージ自体がここ10年で大きく変わったわけではありません。もともと色々な栄養が摂れる食品でした。ただここ数年でタンパク質への注目度が上がったり、SNSで情報が拡散されたりして、時代の流れと噛み合った部分が大きいと思います。

「“お湯ぽちゃ”はぜひ試してほしいですね」と、おすすめしてくれた
「“お湯ぽちゃ”はぜひ試してほしいですね」と、おすすめしてくれた

ーー御社としては、どのような取り組みをされてきたのでしょうか?

【綿引悠太】2024年に発売した商品が一つの転機でした。日本で初めて、心血管疾患という疾患名をリスク低減表示として明確に謳うことが認められた商品です。いわば、日本初の心血管疾患リスク低減表示食品になります。テレビCM、ウェブ広告、サンプリングなどを行い、生活者の皆さまと魚肉ソーセージとの接点を増やしました。テレビで取り上げていただく機会も増え、それを見た方がスーパーで買い、料理に使い、SNSに投稿する。その循環が生まれました。

ーー具体的な食べ方提案もされていましたよね。

【綿引悠太】はい。「お湯ぽちゃ」と呼んでいる食べ方です。フィルムのままお湯に入れて1分間温めるだけで、工場できたての味を再現できるという提案でした。魚肉ソーセージは製造工程で加熱をしていますので、できたては温かいんです。工場に見学に来られたお客様ができたてを食べた際の「普段食べるものより格段においしい」という感想がきっかけでした。温めることで、ソーセージの中に入っている油が溶け出し、食感も変化します。ふわふわジューシーなソーセージを楽しんでいただけます。調理も簡単で、誰でもすぐに試せる。メディアでも取り上げていただき、非常に反応がよかった施策でした。

また、ここ数年は地震や豪雨など災害が続き、家庭内での備蓄意識が高まりました。その中で、冷蔵に頼らず常温で数カ月保存できる食品という点が、あらためて注目されました。非常食としてだけでなく、普段の食事にもそのまま使えるという汎用性があります。

さらに、物価上昇が続く中で、日常的にタンパク質をどう確保するかという課題もあります。お肉のソーセージと比較すると価格も抑えられており、1本でお魚由来のたんぱく質や、商品によってはDHAやカルシウムが摂取できる。すぐ食べられて、手軽に摂取できる。買い置きができて、すぐ食べられる。この実用性が、健康訴求と重なり、再評価のあと押しになったと感じています。

魚肉ソーセージは、2024年にクックパッドの食のトレンド大賞で第3位に入り、2025年にもクラシルの食トレンド分析にて検索伸長率1.4倍と取り上げられました。具体的な数字として結果が出たことは、社内でも大きな手応えになりました。

ーー若い世代の購買状況については、どのように感じていらっしゃいますか?

【綿引悠太】正直に言うと、数年前まではメインの購買層は50代以上でした。昭和の頃におやつとして食べていた世代が、そのまま買い続けてくださっている構図です。一方で、その下の世代には接点が薄くなっていました。仮にメインの購買層の高齢化がさらに進んでしまった場合、食品としてどうなってしまうのかという危機感はありました。

若い世代での接点は、以前は部活動の補食が中心でした。大学の運動部などでは、間食として取り入れているケースもありました。ただ、それはあくまで一部の層です。ここ数年で変わってきたのは、もっとライトな使われ方です。ジム帰りに1本食べる、仕事の合間にバッグから取り出して食べる、というような日常のワンシーンに入り込んできています。

昭和世代にとっては懐かしい食品ですが、若い世代にとっては「見たことはあるけれど、実はちゃんと食べたことがない食品」でもありました。そこに健康やタンパク質という文脈が重なり、初めて手に取る層が増えてきた感覚があります。

特定保健用食品、そして心血管疾患リスク低減表示への挑戦

ーー特保(特定保健用食品)に挑戦された背景について、あらためて伺えますか?

【綿引悠太】2005年に弊社のリサーラソーセージが、魚肉ソーセージで初めて特保商品として発売され、昨年20周年を迎えました。当時の魚肉ソーセージ市場は、ピーク時から比べると売上規模が目に見えて落ちてきていました。量販での露出も減少傾向にあり、昭和の頃におやつとして食べていた世代がそのまま主な購買層になっていて、若い世代への広がりが弱くなっていた。結果として、年齢層が固定化し、このままでは自然減となっていくのではないかという危機感がありました。

特保から心血管疾患リスク低減表示まで、新たな課題に挑んだ経緯や意義も語ってくれた
特保から心血管疾患リスク低減表示まで、新たな課題に挑んだ経緯や意義も語ってくれた
写真左から、DHA入りリサーラソーセージω(オメガ)、DHA入りリサーラソーセージ、DHA入りリサーラソーセージやさしい塩味
写真左から、DHA入りリサーラソーセージω(オメガ)、DHA入りリサーラソーセージ、DHA入りリサーラソーセージやさしい塩味

このまま既存の延長線上でいくと、じわじわと縮小していくのではないかという危機感は、社内でも共有されていました。一方で、魚を使ったソーセージである以上、体にいいという自負はありました。DHAも含んでいますし、タンパク質も摂れる。であれば、その価値をきちんと制度の中で証明して、正面から伝えていこうというのが、特保に挑戦した背景です。

ーー当時の特保制度は、かなりハードルが高かったのではないでしょうか?

【綿引悠太】かなり高かったと思います。エビデンスの提出も厳格ですし、表示できる文言も細かく決められています。ただ、制度が始まって間もない頃だったからこそ、挑戦する意義も大きかった。魚肉ソーセージというカテゴリ自体のイメージを、少しでも変えていきたいという思いがありました。

ーーそこから、今回の心血管疾患リスク低減表示へとつながっていく。

【綿引悠太】はい。特保で「血中の中性脂肪を下げる」などの表示はありましたが、今回のように心血管疾患という疾患名をリスク低減表示として謳える商品は、日本で前例がありませんでした。こういった表示にチャレンジしようと動き出したのが2020年頃です。

実際に消費者庁に認可されたのが2023年後半、発売は2024年2月。着想からおよそ3年です。その間、つくばの研究所が中心となり、数百本規模の論文を読み込みました。DHAやEPAが心血管疾患のリスク低減にどのように関与しているのか、どの条件で、どのくらいの量で、どの集団に対して有効といえるのか。細かく検証しながら整理していく作業でした。国内に前例がないので、単純に横並びで比較することもできません。審査の過程で表現が修正されることもありましたし、制度上の解釈も含めて、何度もやり取りを重ねました。

ーー表示やパッケージ面でも、ご苦労が多かったのではないでしょうか。

【綿引悠太】そうですね。私はパッケージやプロモーションを担当していますが、パッケージは50種類以上試作しました。色数や文字の大きさ、配置の違いを細かく検証し、そのたびに修正を重ねました。疾患名を扱う以上、薬と誤解されてはいけません。一方で、商品の特徴はしっかり伝えなければならない。色使いも、強すぎると過度な印象を与えてしまう可能性があります。文字の大きさ、配置、言い回し、そのすべてに神経を使いました。

パッケージデザインにも関与した綿引さん。何度も試行錯誤しながら、ようやくデザインが完成したという
パッケージデザインにも関与した綿引さん。何度も試行錯誤しながら、ようやくデザインが完成したという

ーー1日あたりの目安量についても教えてください。

【綿引悠太】特保を取得している弊社の「リサーラ」シリーズは基本的に1日1本を目安としています。この商品は1本でDHAが850ミリグラム、EPAが200ミリグラム含まれています。合計で1000ミリグラムを超えるn-3系脂肪酸を1本で摂取できる設計です。サプリメントと比較しても遜色ない量です。ただし、あくまで継続して食べていただくことが前提になります。

ーーサプリメントとの違いについては、どのようにお考えですか?

【綿引悠太】サプリは食事にプラスして摂る形になりますが、魚肉ソーセージは食事の一部として取り入れられます。咀しゃくしながら食べるという点もありますし、一般論として、DHAを含むn-3系脂肪酸は食べ物と一緒に摂取したほうが吸収がよいといわれることもあります。食事に取り入れられる、経済性という面でも、日常の中で続けやすい食品だと思います。

DHAと技術力を支える一貫体制

ーーDHAを本格的に取り入れたのは、いつ頃からなのでしょうか?

【綿引悠太】明確な起点としては、2005年にリサーラソーセージを発売したタイミングが大きいと思います。DHAという言葉自体は90年代前半から広がっていた印象がありますが、魚肉ソーセージに本格的に機能性として組み込んだのはこの商品が走りです。当時はCMもかなり打ちましたし、会社としても力を入れました。

魚肉ソーセージにDHAの機能性を最初に取り入れたのがリサーラ
魚肉ソーセージにDHAの機能性を最初に取り入れたのがリサーラ

ーーDHAは、すべて魚由来のものなのですか?

【綿引悠太】弊社は、魚肉ソーセージを生産する宇都宮工場の隣にDHAのプラントを持っていまして、そこでは魚由来のDHAを製造しています。サプリメントや乳児用ミルクにも使える品質のものです。一部、藻由来のDHAを扱う企業と提携している分野もありますが、魚肉ソーセージに使用しているものは基本的に魚由来です。

アラスカで獲れたスケソウダラをグループ内ですりみに加工し、社内で製造したDHAを配合して、ソーセージを製造する。原料から機能成分、製品化まで一貫して手がけられるのは、弊社の強みだと思っています。

ーーDHAを多く配合すると、風味への影響は出ないのでしょうか?

【綿引悠太】そこは技術の積み重ねですね。DHAは油ですので酸化しやすい性質があります。酸化するとどうしても臭いが出てきます。そのため、まずDHA自体の精製技術で臭いを低減しています。長年の研究の中で、かなり精度は高まっています。

さらに、ソーセージの中にしっかり混ぜ込み、封じ込める技術があります。練り込みの段階で均一に分散させ、外に出にくい状態にします。そしてパッケージでは酸素透過性の低い特殊フィルムを使用しています。酸素を通しにくくすることで、酸化を抑えます。

いずれにしても、魚をベースにした食品であること自体が強みです。機能性成分をあとから足しているものもありますが、魚という素材の中にある価値をどう活かすか。その延長線上にDHAがあります。

常温保存を可能にするレトルト技術

ーー先ほども常温保存のお話がありましたが、常温保存の仕組みについて教えていただけますか。

【綿引悠太】加圧加熱殺菌、いわゆるレトルト殺菌を行っています。メカニズムとしては缶詰と同じです。製造工程の中で高温・高圧をかけます。パッケージ上は120度で4分間と表示していますが、これは中心温度での加熱時間です。

高温で殺菌するレトルト釜
高温で殺菌するレトルト釜

通常、水は100度までしか上がりませんが、圧力をかけることで100度を超える温度域まで到達させています。バスケットに入れたソーセージを大きな釜へまとめて投入し、一気に加圧加熱していきます。

また、弊社の製造での大きなポイントは包材の密封の強度です。弊社のソーセージは「1秒OPEN」をうたって開封しやすいことをセールスポイントにしております。シールの強度が甘いと殺菌の工程で破裂してしまう。一方で強くシールをしすぎると今度は開けにくくなってしまいます。だからこそ必要になるのがシール具合の絶妙なバランスです。気温やフィルムの状態によって、日々調整をかけており、ここは長年培ってきた技術と言えます。

ーー魚肉ソーセージといえば、オレンジ色のフィルムの印象も強いですよね。

【綿引悠太】そうですね。昭和の頃は、商店の軒先で販売されることも多く、直射日光に当たるケースがありました。当時のフィルム技術では、色が付いているほうが遮光性が高いという背景があって、オレンジ色のフィルムが使われていました。

現在はフィルム技術が進化し、透明なものでも遮光性は大きく変わりません。ただ、「魚肉ソーセージ=オレンジ」というイメージが定着していることもあり、オレンジを採用するメーカーは今も少なくありません。弊社では商品によって透明フィルムとオレンジフィルムを使い分けています。中身が見えたほうが安心感があるという声もありますし、一方で従来のイメージを大事にしたいという考え方もあります。技術的な理由から始まった色ですが、いまは魚肉ソーセージのイメージとして定着しているとしても残っている部分があります。

ねじねじから1秒へ。パッケージ革命の軌跡

ーー開けやすさの進化についても伺えますか。

【綿引悠太】魚肉ソーセージを買わない理由として、「開けにくい」という声は以前から寄せられていました。ハサミが必要なタイプもあれば、赤いシールを引っ張って開ける方式もあったんです。当時としては画期的ではあったものの、途中で切れてしまうこともあり、必ずしもストレスフリーとは言えない面もありました。

つまんでぴっとひっぱる「1秒OPEN」を採用した、おいしいおさかなソーセージ
つまんでぴっとひっぱる「1秒OPEN」を採用した、おいしいおさかなソーセージ

その後弊社は「くるんパック」という、切ってくるっと回して開ける方式に移行し、2015年からは「1秒OPEN」という商品名に変更しました。さらに開けやすい方法を追求した結果、2021年からは現在のつまんでひっぱる形式の製造を開始しました。つまみ部分をひっぱるだけで、結合部分が一気に開くのでどこからでもスムーズに開けられます。

ーーひと昔前は、歯でねじねじ捻って開けたりしていましたよね。

【綿引悠太】そうですね。実際にパッケージにも「歯で開けないでください」と書いています。歯が欠けてしまう可能性がありますので。食品でそういう注意書きがあるのは珍しいかもしれませんね。つまんでひっぱる開け方は、今のところ弊社だけの方式です。

「先端をねじねじ捻ってオープンしていた方が、1秒OPENを体験すると、大変驚かれます(笑)」と開封方法の進化を語る綿引さん
「先端をねじねじ捻ってオープンしていた方が、1秒OPENを体験すると、大変驚かれます(笑)」と開封方法の進化を語る綿引さん

そして、フィルム自体も商品ごとに使い分けています。特にDHAを多く含む商品は、酸化を防ぐために酸素のバリア性の高い特殊フィルムを使用しています。最近は柄付きフィルムも展開しています。コスメを意識したデザインで、ピンクや白を基調にしています。魚肉ソーセージを食べていることをあまり強調したくないという声もありましたので、カバンの中に入れても違和感がない、あえて魚肉ソーセージらしくないデザインを意識しました。

【画像】女性向けの鮮やかなパッケージデザインも
【画像】女性向けの鮮やかなパッケージデザインも

さらに、女性をメインターゲットに鉄分を1日分摂れる商品も出しています。1本(30グラム)で鉄分を「1日分」摂れるような設計にこだわりました。スパイス等で香りや味わいを調整し、鉄臭さが出にくいよう開発担当とも試作を重ねました。健康訴求とおいしさを両立できるよう、取り組んでいます。

こだわり魚種シリーズと、魚を使い切る発想

ーーちょっとユニークだなと思ったのですが、こだわり魚種シリーズは、どのような発想から生まれたのでしょうか?

【綿引悠太】もともとは、魚肉ソーセージって赤いパッケージで、スーパーのどこかに置いてあって、種類をあまり意識せずに「魚肉ソーセージ」として選ばれる商品だったと思うんです。一方で、弊社は缶詰も多く扱っていますが、サバ缶、サンマ缶、イワシ缶と、魚種ごとに選ばれますよね。今日はサバにしよう、今日はサンマにしよう、と嗜好性がある。魚肉ソーセージにも、そういう選ぶ楽しさを出せないかと思ったのがきっかけです。

2017年から始めて、これまで種類の入れ替えを行いながら、約7年間で16魚種を市場に出してきました。5から6種類程度のレパートリーで展開しながら、次の魚種へとバトンタッチしていく形式です。

ーー扱われている魚種も、かなり幅広いですよね。

【綿引悠太】マダイ、ブリ、ホッケ、ウナギ、イカ、カキ、金華さば、アカジンミーバイなど、いろいろやりました。たとえば、ホッケは食品パッケージにあまり使わない紫を基調にしたデザインにしました。魚肉ソーセージの棚で紫は目立ちますから。

写真右上から時計回りに、沖縄産いかを使ったお魚ソーセージ、銚子産いわしを使ったお魚ソーセージ、鹿児島産うなぎソーセージ、山陰産のどぐろを使ったお魚ソーセージ、北海道産たらこソーセージ
写真右上から時計回りに、沖縄産いかを使ったお魚ソーセージ、銚子産いわしを使ったお魚ソーセージ、鹿児島産うなぎソーセージ、山陰産のどぐろを使ったお魚ソーセージ、北海道産たらこソーセージ

こだわり魚種シリーズは、あくまで“選ばれる商品”でありたいと思っています。高級魚だから売れるわけではなく、売り場で想像できる魚であることが重要なんです。お寿司屋さんで見かける魚、名前を聞いて味が思い浮かぶ魚のほうが、手に取られやすい傾向があります。過去に販売したアカジンミーバイは沖縄で獲れる赤い高級魚で、中国などでは特に高級魚として扱われています。ただ、日本国内での知名度はそこまで高くなく、販売上の難しさはありました。ですから、単に珍しい魚を出すのではなく、「知っている」「想像できる」というイメージとのバランスを見ながら決めています。

ーー原料面での工夫についても教えてください。

【綿引悠太】例えばウナギなら、蒲焼を製造する過程で出る端材から身を取り出して使っています。そのほかの魚種でも、三枚におろしたときの中骨に付いた身を有効活用しているパターンもあります。イカはソデイカの耳の部分を活用しています。ソデイカの耳は、普通に食べると硬いのですが、ソーセージ加工の工程で加圧加熱殺菌をかけると柔らかくなります。

水産に強みを持つ会社として、魚をできるだけ無駄なく使うという視点は常にあります。ただし、産地や魚種を絞り込めば絞り込むほど、漁獲量や価格変動のリスクも大きくなる。高級魚に挑戦するおもしろさと、日常食品としての価格帯を守る現実。その両方を見ながら設計しています。

ーー味づくりで特に意識されていることは?

【綿引悠太】魚らしさを出しすぎると癖になりますし、出さなすぎると何の魚かわからなくなります。そのバランスです。タイは開発当時、塩焼き風と煮付け風の両方を試作しました。イカはイカ自体の食感を意識して、通常のソーセージとは異なる食感に仕上げました。エキスの配合や練りの強さを細かく調整しています。

ーー今後、新しい魚種に挑戦する可能性もありますか?

【綿引悠太】今後も挑戦を続けたいと思います。安定的に取り寄せることができれば、日本国内に限らず世界中の魚が選択肢となると思います。

ーー最後に、10年後の魚肉ソーセージはどのように進化していると思われますか?

【綿引悠太】10年前に、ここまで開けやすくなるとは思っていませんでしたし、疾患名を掲げる商品を出すことも当時は現実味がなかったです。健康志向がさらに高まれば、より必要とされる食品になっていくはずです。高齢化が進む中で、幅広い世代にとってもっと身近な存在へと広がっていければと考えています。

マルハニチロからUmiosへ、その決断の背景

魚肉ソーセージの話を聞いたあと、社名変更というトピックについても広報担当者に話を聞いた。3月1日から社名は「マルハニチロ」から「Umios(ウミオス)」へと変わった。創業以来続いてきた名前を手放す決断。その背景には、海を起点に社会課題に向き合う強い決意があるという。

社名変更をお知らせするホームページ
社名変更をお知らせするホームページ
社名変更後のホームページ
社名変更後のホームページ

ーー社名変更の背景について教えてください。

【広報担当者】今回の社名変更は、単なる名称変更ではありません。「食を満たす企業」から「社会課題を解決する企業」へと進化する、わたしたちの決意を示すものです。

新社名Umiosには、「Umi(海)」「One(ひとつ)」「Solutions(解決)」という3つのキーワードが込められています。「Umi」には私たちのルーツである「海」を起点に価値を生み出していくという想い、「One」にはステークホルダーや社会全体、そして地球と「一体」となっていくという意思、「Solutions」には食を通じて地球規模の社会課題を解決する企業へと進化する決意を表しています。

「Umi(海)」を社名に掲げることには、誇りと責任があります。海とともに生き、つながりを大切にしながら、社会の問いに“解”で応える存在でありたいと考えています。

ーー具体的に、どのような社会課題に向き合っていきたいと考えていますか?

【広報担当者】創業146年の歴史の中で、第一創業、第二創業を経て、そして現在、私たちは大きく3つの事業課題と向き合っています。1つ目はこれまで私たちが主戦場としてきた日本市場の縮小、2つ目は温暖化による海洋環境の変化や、乱獲による天然水産資源の減少。3つ目はコストの上昇です。146年培ってきた圧倒的な資源調達力、高度な加工技術力、幅広い食材提供力をベースに、消費者起点のバリューサイクルをグローカルに展開する。そして、持続可能なタンパク質の提供と健康価値の創造で応えていくことが、私たちの使命だと考えています。

ーー天然資源の枯渇や超高齢社会化といった社会課題に対するUmiosの「Solutions」を教えてください。

【広報担当者】世界人口が100億人に迫る今、良質なタンパク質の確保は地球全体の課題です。天然の水産資源が有限だからこそ、わたしたちは持続可能なタンパク質提供の新たな形を創造しています。たとえば、高水温に対応できる新魚種「スギ」の養殖本格化、サンマの事業化レベルでの試験養殖成功に加え、魚の細胞を培養して生産する「細胞性水産物」の研究開発も進めています。海の資源量に依存しない、新しいタンパク質提供の可能性をひらくべく、日々取り組んでいます。

また、日本では「病気になってから治す」時代から「病気にならない体をつくる」時代へと変わりつつあります。魚という“健康食材”の価値を、生活者の皆さまにさらに伝えるために、単に魚を“売る”のではなく、技術の力でその本質的な価値を引き出し、健康を支える力に変えていきます。日本初の心血管疾患の疾病リスク低減特定保健用食品「リサーラソーセージω(オメガ)」のような“未病”に貢献するソリューションや、摂食嚥下が困難な方向けのムース食など、多様なライフステージに寄り添い、誰もが健やかに暮らせる社会の実現を目指しています。

ーー最後に一言お願いします!

【広報担当者】Umiosは、海という地球の「命の源」とともに歩みながら、時代の問いに真摯に向き合い、その答えを社会に届け続ける存在でありたいです。パーパス「For the Ocean, for life.」のもと、「海を起点とした価値創造力で『食』を通じて人も地球も健康にするソリューションカンパニー」として、これからも社会に貢献してまいります。

海を起点に、次の時代へ

魚肉ソーセージという身近な商品を入口に、原料や製造技術、特保への挑戦、そして心血管疾患リスク低減表示という新たな領域へと視界が開けていく。そこから浮かび上がるのは、市場縮小という逆風の中でも価値を問い直し続けてきた姿勢だ。常温で置ける安心感、1本でDHAやタンパク質を補える設計、若い世代へじわりと広がる動き。積み重ねてきた技術と戦略が、確かな土台となっている。

1日分の鉄分が摂れるもの、n-3系脂肪酸を配合した肌の健康を助けるもの、塩分30%カットの減塩タイプなど、消費者が抱える特定の健康課題にピンポイントで応えるバリエーションを展開
1日分の鉄分が摂れるもの、n-3系脂肪酸を配合した肌の健康を助けるもの、塩分30%カットの減塩タイプなど、消費者が抱える特定の健康課題にピンポイントで応えるバリエーションを展開

社名はマルハニチロからUmiosへと変わった。それでも、海を起点に価値を届けるという軸は揺るがない。その先に続く未来の一端を、魚肉ソーセージが担っている。

取材・文・撮影=北村康行

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※取材日の都合上、掲載写真中の商品パッケージには一部旧社名表記が含まれています。

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