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菅野美穂インタビュー「まわりがどんどん若くなっていく。そこに教わりに行く感覚」映画『90メートル』3月27日公開

  • 2026.3.20

3月27日公開、映画『90メートル』で菅野美穂さんは難病を患った高校生のひとり息子がいるシングルマザーを演じています。この作品、中川駿監督のオリジナル脚本作品で半自伝的物語。公開時39歳の中川監督が実際に30歳で母を失った経験もあり、「終末期医療」「ヤングケアラー」の問題をリサーチした上で映画の軸を決めよう、と思われたそうなんです。
 
息子役には映画『ラーゲリより愛を込めて』『君たちはどう生きるか』の出演でも注目を集める山時聡真さん。これが……1977年生まれの菅野さんと同世代の方はもちろん、介護を経験された方、また「親が病気になったらどうしよう」「自分が病に倒れたらどうなるんだろう」と想像したことがあるすべての方にそっと、けれども力を込めてオススメしたい、しみじみといい作品でした。どうしてタイトルが『90メートル』なのかは、ぜひ、映画をご覧になってはじめて知ってください。よくある難病秘話ものとは一線を画す、親子の絆の物語について、そして同世代のあるあるについて。オトナミューズは菅野さんにゆっくりお話を聞かせていただける機会を得ました。聞き手は映画ライターのよしひろまさみちさんです。

――『90メートル』、素晴らしい作品でした。高校生の一人息子と2人暮らしで難病を抱えた母親役、すごい役に挑戦されましたね。
 
菅野美穂(以下 菅野) そうですよね。病気を抱えている設定なので、きちんとした知識を持っていないとダメですし、病を抱えて奮闘していらっしゃる方々にも失礼がないよう覚悟が必要だなって思いました。脚本には息子が母を思うがゆえに接することの難しさがあること、葛藤が描かれていたんですが、監督のすごく優しい目線を感じたんですよね。脚本を読んですぐ、中川監督とご一緒させていただきたいなと思いました。役作りの準備を進める中で「自分でできることが少なくなっていく自分」と向き合わなきゃいけないことや、その中で考えてしまうようなところもあることに思いを馳せつつ、紙資料はもちろん映像資料で勉強させていただきました。役だからといって、野次馬根性でずかずかと土足で踏み込んでいくようなのも違いますし、当事者の方がご覧になる機会があったときに、失礼にあたらないような役作りをしていきたいと思ったんですよね。もし私が若かったら、燃え尽きるまで研究しようみたいな気持ちでやったと思うんですが、歳を重ねて出会えた役だからこそ、今の私がどういうふうに感じて、思いを馳せることができたのか、ということにこだわって演じられたと思います。

『90メートル』
story 母・美咲(菅野美穂)と2人で暮らしてきた佑(山時聡真)。佑が高2になったとき、美咲が難病でからだが不自由になり、彼女の介護をすることに。ケアマネージャー下村(西野七瀬)らの助けでギリギリ生活を維持していたが、彼には大学進学で上京するか母との生活を続けるかの選択が……。
監督・脚本:中川駿/出演:山時聡真、菅野美穂、西野七瀬、南琴奈、田中偉登 ほか/配給:クロックワークス/公開:3月27日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー
© 2026 映画「90メートル」製作委員会

――いや、本当にすごいことをやってのけたと思いました。僭越ながら、ステップアップも3段抜かしくらいの勢いで。
 
菅野 あ、ほんとですか? 嬉しいですね。
 
――中川監督から直接オファーされたんでしょうか?
 
菅野 直接ではなかったんです。御縁があってこの脚本を読む機会をいただいて、それから監督とプロデューサーにお会いしました。監督も含めて、現場では私が最年長になるので……。
 
――あ、たしかにそうなりますよね。お姉さんの立ち回り。
 
菅野 いえいえ(笑)。どの現場でもそうなんですが、まわりにいる方がどんどん若くなっているので、歳を重ねていくと見えなくなること、または若い方が見えていることを教わりに行く感覚です。これから私が俳優のお仕事を続けていくにあたって、絶対に必要だと思ってます。
 
――わー。まさにうちの読者に聞かせたい。キャリアを積んである程度落ち着いた年齢層の女性は、おそらく一番悩むのはまわりとのジェネレーションギャップだと思っていまして。そこを謙虚に受け止める力ってこれからは絶対に必要ですよね。
 
菅野 ほんとにそう思いますよ。視野や感性は、経験を積めば積むほど、自分の好みの方向に偏ってしまいがちじゃないですか。ところが、若い方々とお話ししていると、自分が全く知らなかった世界のお話を聞かせていただくこともありますから。
 
――たとえばどんなことがあります?
 
菅野 映画でいうと、今の若い方が好むものってド直球のものよりかは、ちょっとだけ毒が入っているものが多いと思うんですよ。私たち世代はストレートなラブロマンスや感動作で育ってきてると思うんですが、若い方にヒットする作品ってちょっとしたねじれやフックがあるんですよね。

――中川監督はその中間世代ですよね。どちらの世代も俯瞰で見えてる感じがしません?
 
菅野 そうなんですよ! 今までもそうでしょうけど、中川監督と組んでみたいという方、とても多いと思いますもん。私自身、まだ子育ての真っ最中で、お仕事フル稼働できる体制ではないので、恐縮なことにタイミングが合わないとご一緒できないんですが、そんな中でこの作品でご一緒できたのは御縁だと思いますしすごく嬉しいことでした。主題歌もMrs. GREEN APPLEの大森元貴さんのソロですし、監督や山時聡真さんも含めて、清らかな若い人たちとの御縁だなって思ってます。
 
――毒とは真逆ですが(笑)。
 
菅野 この作品に関しては毒というよりも、透明度の高い人たちが作り出した人生の厳しさと優しさの対比ですよね。ほんと、出られてよかった(笑)。

――監督から役作りなどのために勧められた映画や本ってありました?
 
菅野 映像資料をはじめ、病気に関する資料はたくさんいただきました。それと、監督ご自身がお好きな作品をお伺いしたんですが、『スワンソング』とアスガル・ファルハーディー監督の『別離』を勧めていただきましたね。
 
――あ、納得……。人生の優しさと厳しさだ。
 
菅野 こういうおすすめって本当にありがたくて。世の中がものすごいスピードで動いているし、映画もドラマも追いつけないほどの勢いで新作が出ていますもんね。子育てがもうちょっと落ち着いたらまとめて拝見しようと思っているんですよ。
 
――このラインナップを出すところが中川監督らしいですね。心根が非常に優しいけど、毒がある作品ばかりです。
 
菅野 面倒見のいいお兄さん、みたいな感じを持ちながらも、10代の刹那の輝きを映像に残していける、すごく稀有な監督だと思います。今回は山時聡真さんが10代の息子役ですが、以前からドラマで拝見していて素晴らしい芝居をされてるな、って思って楽しみにしていたんですよ。
 
――現場ではいかがでした?
 
菅野 驚いたのが、激しめの芝居から優しいお芝居もできて、とても振り幅が大きいこと。もっと静かなタイプの方だと勝手に思っていたんですが、感情をいろいろとお芝居で出すことができるのがすごくて。たとえば、鬱屈とした感情を持ちながらもそれを母親にぶつけたら傷つけてしまうから言えないで悶々とする、みたいなお芝居って、その感情を知らなきゃできないと思うんですが、「なんでこの人知ってるの!?」って思ってしまったくらい。それで現場でお話をうかがったら、ご家族を大事にされていて大好きなんですって。
 
――超素直でまっすぐ育ったんですね。自分ら世代と大違い。
 
菅野 そうなんですよ! 私たちの世代の10代のころって、親に反抗するのが当たり前で、悪口も言いまくってたじゃないですか。山時さん、まったくそういうのがないんですよね。

――多分今の若い方、ほとんどそうなんでしょうけど、昭和のど根性世代からするとすごくヘルシーですよね。高校生の息子がいる母役というのはちょっと早かったですか?
 
菅野 あ、そうでもないですよ。年齢的には私にも高校生くらいの子がいてもおかしくないですから。うちはまだ小学生ですが、確実に佑の世代になることをちょっと考えちゃいましたよね。こんな素直ないい子に育ったら嬉しいな、と思ってました。
 
――この作品は素直な母への思いを描きつつも、ヤングケアラーの問題にも踏み込んでいるのが素晴らしいですよね。
 
菅野 そうなんです。私もこの問題を調べれば調べるほど行き届かないところや、高齢化社会の日本だからこそできることがあるはずなのに人手が足りていないこと、サポートも及んでいないところがあるんですよね。私がどうこうできることではないんですが、とはいえ、大人が道筋を整えてあげなきゃダメだ、と思いました。
 
――劇中でも大人たちが勝手なこと言ってますよね……。佑の先生が「困ったら先生に言っていいんだぞ」って言うけど、何言ってんだって思っちゃいました。追い詰められれば追い詰められるほど、こういう子は言わないはず。
 
菅野 そうなんですよね。ちゃんとしたい、ちゃんとやってる子ほど言い出せないですもの。私の父が10年前に他界しているんですが、最期に介護してたんですよ。家族24時間体制で。そうすると、みんな疲弊していってどんどん不機嫌になって喧嘩になるんですよね。結局は心もからだも健康でないと、人のケアなんてできたもんじゃない。
 
――まさにそこですよね。
 
菅野 それに介護する側だけでなく、される側の気持ちも考えないといけませんしね。コミュニケーションが絶対必要。認知に問題が起きたらソレすらできなくなるので、ピンピンコロリが一番ですよね……一番むずかしいんですが(笑)。
 
――わかりみがすごいです。あたし、毎朝仏壇にそれお願いしてますよ。
 
菅野 何か突発的に起きても絶対に延命治療されるから、それこそ夢物語でしかないんですけどね(笑)。私たちの世代が背負っていく十字架みたいなものになりそう。

――そんな十字架を背負った私ら世代にメッセージを。
 
菅野 監督がおっしゃってたのは、僕のこれまでの人生では分かりやすい「悪代官みたいな人」には会ったことないんですとおっしゃってたんです。でもそれって多分、中川監督がいい人だからだとも思うんですよね。この映画のよさは、人生は優しく、人は優しいっていうことをそよ風に乗せてこちら側に届けてくれるようなところがあるんですよ。厳しいこと、つらいことも描かれているし、現実にある問題もきちんと入っていますが、これを観て人の優しさを信じるのも大事だと感じてもらいたいですね。
 

映画『90 メートル』
3月27日(金)全国公開
©2026 映画『90 メートル』製作委員会
配給:クロックワークス
キャスト:山時聡真 菅野美穂
西野七瀬 南琴奈 田中偉登
監督・脚本 : 中川駿
主題歌:大森元貴「0.2mm」(ユニバーサル ミュージック / EMI Records)

ジャケット¥181,500、ブラウス¥86,900、パンツ¥121,000(全てヌメロ ヴェントゥーノ/イザ)、イヤーカフ¥337,700、イヤリング¥312,400、左手人さし指リング¥679,800、中指リング¥4,180,000、バングル¥1,694,000(全てTASAKI)

interview&text_MASAMICHI YOSHIHIRO
photograph_KAZUYUKI EBISAWA[MAKIURA OFFICE]
styling_CHIKAKO AOKI
hair & make-up_ICHIKI KITA[Permanent]

お問い合わせ先
イザ TEL:0120-135-015
TASAKI TEL:0120-111-446

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