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結婚直前に突如落ちた人生の落とし穴。大失恋したアラサーの崖っぷちからのリスタート【書評】

  • 2026.3.13
©ねむようこ/祥伝社 FEEL COMICS」
©ねむようこ/祥伝社 FEEL COMICS」

【漫画】本編を読む

『トラップホール』(ねむようこ/祥伝社)の主人公・ハル子は29歳。三十路を目前にし、仕事も順調、結婚も決まり、「このまま大人になっていくのだ」と信じていた。けれど、婚約者から突然婚約破棄を告げられ、描いていた未来は跡形もなく壊れてしまう。家族や友人は一緒に怒り、寄り添い、優しく慰めてくれる。それでも、なぜか心は軽くならない。善意に包まれているはずなのに、息が詰まるような感覚だけが残る。その違和感が、驚くほどリアルだ。

さらに残酷なのは、日常が彼女を容赦なく追い詰めていくこと。職場の同じフロアにいる元婚約者と、その新しい恋人。逃げ場のない現実が、何度も心をえぐる。失恋の痛みは、時間が解決してくれるほど単純なものではない。

そんな中、同級生会で再会した高校時代の同級生・浅野くんの「こっちに来れば?」という一言に背中を押され、ハル子は決意する。浅野くんの店でバイトを始めるものの、ふとした瞬間に思い出すのは元婚約者・健太のこと。寂しさを埋めるように浅野くんと関係を持ってしまうが、彼には妻がいた。物語は、さらに痛みを重ねていく。雨の中、バスタオル一枚で外に放り出される修羅場は、読んでいるこちらが目を背けたくなるほど痛々しい。

それでも、この作品はハル子を「哀れな被害者」として描かない。彼女は間違え、こじらせ、何度も同じ痛みをなぞる。それでも、生きていく。東京での生活は波瀾万丈で、住む場所も安定しない。これまで順調だったハル子にとって、それは人生の過渡期だったのかもしれない。

本作は、失恋を「きれいに癒す物語」ではない。壊れた心を抱えたまま、それでも日常を続けていく話だ。大失恋を経験したことがある人ほど、「わかりすぎてつらい」「これは自分の話かもしれない」と感じるかもしれない。

どん底の中で、みっともなく傷つきながら、それでも前に進もうとする。その姿は痛々しく、だからこそ目が離せない。この作品は、失恋の痛みを知っている人の心に深く刺さり、そしてきっと、あのときの自分を少しだけ肯定してくれる漫画だ。

文=ネゴト / すずかん

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