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【BTS連載vol.5 JIMIN】現代舞踊とハイトーンを武器に。“努力型の天才”が歩む、表現者の軌跡

  • 2026.3.8
<strong>JIMIN(ジミン)/1995年10月13日生まれ、韓国・釜山出身</strong> Zabulon Laurent/ABACA / Aflo

2022年6月に活動休止を発表してから約4年、2026年3月20日リリースの5thアルバム『ARIRANG』でBTSがついに再始動を果たす。4月からはソウルを皮切りに世界23ヶ国・地域を巡る大規模ワールドツアーを控え、7人揃った“完全体”の復活を世界が心待ちにしている。

これに合わせ、オフィシャルブックの翻訳も手掛けた“BTSのプロ”桑畑優香さんが、全7回の特別連載でメンバーの魅力を紐解いていく。第5回は、中性的なハイトーンとしなやかなダンスで存在感を放つ、“努力型の天才”JIMIN。デビュー当初の苦悩から現代舞踊を原点とする唯一無二のパフォーマンス、さらにはメンバーを気遣う“影のリーダー”的な一面まで掘り下げる。

焦燥から“唯一無二の歌声”へ。『花樣年華』シリーズで覚醒した、中性的なハイトーン

JIMINの声は、BTSの音楽の輪郭を際立たせる極めて重要な聴覚的要素のひとつ。音の聴き分けが苦手な人でも容易に見つけ出すことができるほど、圧倒的な個性を放っている。ボーカルラインのなかで彼が担うのは主にハイトーン。中性的で艶やかなその音色は、空気を含んだような柔らかさを持ちながら、楽曲の感情が最も高まる瞬間に強く響く。BTSの楽曲において、JIMINはしばしば“感情のピーク”を担うボーカルだ。

誘惑の危うさを帯びた「Blood Sweat & Tears」(2016)の冒頭のボーカル、あるいは「Magic Shop」(2018)での突き抜けるような高揚感。その一方で「Boy With Luv(feat. Halsey)」(2019)や「Make It Right」(2019)では、特有のグルーヴの上で声がしなやかに跳ね、曲のテイストを鮮やかに引き立てる。

しかし、その声は最初から自信に満ちていたわけではない。『BEYOND THE STORY ビヨンド・ザ・ストーリー:10-YEAR RECORD OF BTS』でJIMINは、デビュー当初の苦悩をこう振り返っている。「実力を伸ばすためには歌の練習をしなければいけないけれど、どうやって練習すればいいのか分からなくて。失敗するたびにトイレに行って泣いていましたね」。自分の音色や武器を見つけられない焦りのなかで、ひたすら歌い続けたという。

転機となったのは『花樣年華』シリーズ(2015~2016)だった。指先一つひとつの動きまで細やかに心を配りながら、彼は自身の繊細な声と身体表現を結びつける術を見出した。柔らかな声をリズムに乗せ、ヴァイブを生み出す。それは、JIMINにしか成し得ない表現になった。

その才能がソロアーティストとして開花したのが、2023年のアルバム『FACE』。「Like Crazy」は、ドレイク・ドレマス監督の同名映画(邦題は『今日、キミに会えたら』(’11))に着想を得た楽曲。軽やかなメロディの裏側には、パンデミック中に抱えた孤独や複雑な感情が投影されているという。

「どこか複雑で、なんとなく孤独。でもなんとなくハッピー」という曖昧で微妙な感情を歌い上げたこの曲は、米ビルボードのメインシングルチャートHot 100で1位を獲得。韓国語ソロ曲として初の快挙を成し遂げ、JIMINは世界的ポップスターとしての存在感を決定づけた。

現代舞踊に根ざしたしなやかな表現。その影響力は、音楽シーンに留まらない

アーティスト・JIMINのもうひとつの大きな武器がダンス。『BEYOND THE STORY ビヨンド・ザ・ストーリー:10-YEAR RECORD OF BTS』には、練習生としてソウルに上京した日、駅まで迎えに来たJ-HOPEと宿舎へ向かう道すがら、互いのダンスについて語り合い、「お互い助け合えるといいですね」と励まし合ったエピソードが綴られている。BTSのパフォーマンスにおいて、この二人がダンスの中核を担ってきたことを象徴する場面だ。

幼い頃に影響を受けたアーティストはマイケル・ジャクソンとアッシャー。JIMINはダンスについて「余計なことを考えなくてもいい別の世界へと運んでくれる、僕だけの空間でした。本当の自由を味わえたんです」と語っている(同書)。彼にとってダンスは、心から没頭できる喜びそのものだった。

J-HOPEがストリートダンスを原点とするのに対し、JIMINのベースは現代舞踊にある。釜山芸術高等学校で現代舞踊を専攻し、幼いころに身に着けた武術やブレイクダンスとコンテンポラリーの要素を融合させたしなやかな身体表現は、BTSのパフォーマンスに独特の美しさをもたらしてきた。柔らかさと力強さ、優雅さと荒々しさ。一見相反する魅力が同時に存在するのが、JIMINのダンスの最大の特徴だ。

たとえば、2014年のMAMAでJ-HOPEと共に挑んだBlock Bとのダンスバトルでは、自ら提案したシャツを破り脱ぐ荒々しいパフォーマンスで強烈な爪痕を残した。一方で、2019年メロンミュージックアワード(MMA)のソロステージでは、「I Need U」の音色に合わせ、まるで風に息が吹き込まれたかのような、儚くも美しいスピンも。

JIMINの影響力は、もはや音楽シーンに留まらない。2023年、映画『バービー』の公開に際し、ライアン・ゴズリング演じるケンが劇中で纏った衣装が、JIMINが「Permission to Dance」(2021)のMVで着用したものと同じであることが話題となった。

これを受けてライアン本人がSNSを更新。「先に着たのはあなたで、一番似合っていた」と語り、「KEN」のロゴ入りギターをJIMINにプレゼントした。実はライアンは、JIMINがWeverseライブで「7回以上見た」と公言していたお気に入りの映画『きみに読む物語』(’04)の主演俳優。憧れの俳優から称賛を受けるという、まさにポップカルチャー界の奇跡のような交流は、世界中でバズを巻き起こした。

ポジティブさに溢れた“努力型の天才”。仲間を気遣う“影のリーダー”的な一面も

JIMINを語る上で欠かせない言葉、それが“努力型の天才”だ。地元・釜山のダンススクール「JUST DANCE ACADEMY」のキム・ギユン院長は、中学生時代の彼を「誰よりも上達が早かったが、それは理解力の高さ以上に、できるまで限りなくやり遂げる執念によるものだった」と明かす。

彼は日曜日も一人スクールに現れ、夜中の2時、3時までターンの練習に没頭した。24時間開放されていた練習室で、誰もいないなか、ただ一人ストリートダンスを踊り続けたJIMIN。ひたむきに学ぶ姿勢は驚くほどポジティブで、周囲の大人たちまでもが「何かを教えてあげたい」と思わされる不思議な魅力に満ちていたという。

Kevin Winter / Getty Images

学生時代に学級委員を務めていたJIMINは、BTSにおいてもメンバーの微細な感情の変化を察知する“影のリーダー”としての役割を担ってきた。『BEYOND THE STORY ビヨンド・ザ・ストーリー:10-YEAR RECORD OF BTS』には、仲間を気遣うJIMINのエピソードが数多く記されている。例えば、ドラマ『花郎<ファラン>』の撮影とグループ活動の両立に苦しんでいたVに「何もしてあげられないけれど、元気を出してほしい。本当に力になりたいんだ」と声をかけたこと。また、2018年、プレッシャーを抱えてひとりで酒を飲んでいたJUNG KOOKのもとへ駆けつけ、彼の苦しみを初めて聞いて共に号泣したこともあった。

ストイックで愛情深い一面の一方で、どこか甘えん坊で無邪気な一面も。バラエティ番組『RUN BTS!』では、ゲームに負けると拗ねたような表情を見せたり、メンバーの肩にもたれかかったりと愛らしいリアクションで和ませる場面も多数。

その天然ぶりが伝説となったのが、『RUN BTS!』の伝言ゲームで起きた「ラジモララ」事件だ。前のメンバーが伝えた「カルボナーラ」を、なぜか「ラジモララ」と聞き取ったJIMIN。全く意味不明な言葉を、自信満々に次のメンバーに伝えようとするその姿が「可愛すぎる」と話題になりSNSで瞬く間にミーム化。世界中のARMYを笑顔にした。

ソロアルバムに続き、最新アルバムの制作にも参加。謙虚さを胸に見据える未来

ソロアルバム『FACE』(2023)から『MUSE』(2024)に至る過程で、JIMINはほぼ全曲の制作に深く携わってきた。

そして、ついにベールを脱いだアルバム『ARIRANG』(2026)のトラックリストには、「They Don’t Know Bout Us」と「Into the Sun」のクレジットにJIMINの名前が記されている。昨年夏には、「Into the Sun」に同じくクレジットされているVが、JIMINと夕暮れの海辺で戯れる動画をInstagramに投稿し、ファンの間で大きな話題に。あれはただの個人的な思い出の断片だったのか、それとも新しい物語の始まりを予感させる伏線なのか。アルバムの全貌はまだ明かされていないが、期待は高まるばかりだ。

Michael Kovac / Getty Images

3月6日に公開された『GQ』のインタビューで、JIMINはこう語っている。「レガシーと呼ばれるには、まだ先が長い。まだ僕らは若く、未来はこれからです」。世界を席巻し、数々の金字塔を打ち立てた後でもなお、奢ることなく、先の景色を見据えている。謙虚さと静かな自信が、JIMINというアーティストを瑞々しく輝かせているのだろう。

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