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「ゆとり世代め」「Z世代は使えねー」パワハラ上司が涙を流す…メンエス嬢の言葉で父親の呪縛からの解放【作者に聞く】

  • 2026.3.8
加恋のマッサージを受けていると、父に認めて貰えなかった過去の記憶が蘇り、涙が溢れてくる。
加恋のマッサージを受けていると、父に認めて貰えなかった過去の記憶が蘇り、涙が溢れてくる。

メンズエステとは、マッサージを中心とした施術で心身の癒やしを提供する男性向けの店のことだ。そんなメンズエステを舞台にした創作漫画「メンエス嬢加恋・職業は恋愛です」では、美しくもどこかミステリアスなセラピスト・加恋が、店を訪れる“訳アリ”の客たちの心をほどいていく姿が描かれている。作者は漫画家の蒼乃シュウさん(@pinokodoaonoshu)。一見すると癒やしの物語だが、その裏側には人間の心の奥に潜む傷や孤独が丁寧に描かれている。

今回紹介するのは「満足できない男」の後編。常に苛立ちを抱え、周囲にきつく当たってしまうパワハラ気質の男が、加恋の施術を受けることになる。やわらかな手で背中をほぐされるうち、男の胸の奥に押し込めていた感情が少しずつ揺らぎ始める。気づけば目には涙がにじんでいた。そしてふと、幼いころの記憶が脳裏によみがえる。父から突きつけられた「お前は期待外れ」という言葉。その一言が、彼の心の奥に長く残り続けていたのだった。

「モラハラやパワハラをする人」を最初の客にした理由

蒼乃さんによると、この作品に登場する客たちは、誰もが何かしらの問題を抱えているという。なかでも最初の客として描いたのが、モラハラやパワハラをしてしまうタイプの人物だった。「客として登場する男たちは、いつも必ず何かの問題を抱えています。一番わかりやすい問題はモラハラやパワハラをしてしまう人かな?と思い、最初の客にしてみました」

物語では、パワハラをしてしまう男の背景として、幼いころ父から認めてもらえなかった記憶が描かれる。では、こうした人物の心理はどのようにして描いているのだろうか。蒼乃さんは、人が他人に強く当たってしまう理由は意外にも身近なところにあるのではないかと語る。

「誰でも大なり小なり、無意識に他人にモラハラやパワハラをしてしまうことがあると思います。他人に対してついイラッとしてしまったり、意見が違う人に出会うと受け入れるより先に反論してしまったり。親しい存在だと甘えてしまい、ついカッとなってキツいことを言ってしまったなんてことは、誰でも経験したことがあるのではないでしょうか」

さらに、その原因のひとつとして、心の奥に残ったままの傷の存在を挙げる。「他人にそんなことをしてしまう理由って実は自分の中にあって、気づかないトラウマを抱えていてまだ癒やされていないことが原因になっていることもあるのではないかなと。『パワハラやモラハラは悪い!』と一方的に攻撃するよりも、なぜ他人にパワハラやモラハラをしてしまうのだろうと掘り下げた方が、解決に繋がると思っています」

「あなたはちゃんとがんばっています」その一言が救ったもの

この物語で蒼乃さんが描きたかったテーマについても聞いた。作品の第1話は、主人公・加恋という人物を紹介する意味合いが強いエピソードでもあるという。

「1話目ですので、まずは加恋の自己紹介という感じです。こんな感じで毎回客を癒やしていく物語です。加恋はメンエス嬢だけど、決して客を依存させません。つまり、リピートさせないメンエス嬢なんです。実際にそれではやっていけませんが、そこは漫画ですので…(笑)」

施術の終わり際、加恋は男に静かに言葉を掛ける。「あなたはちゃんとがんばっています」。その瞬間、男はあることに気づく。父から言われたかったその言葉は、実は自分自身が誰かに言いたかった言葉だったのかもしれないと。

「また指名してもいいかな」と尋ねる男に、加恋はやさしく微笑んで答える。「あなたはもう大丈夫ですよ」。その言葉を聞いたとき、彼の表情はどこか軽くなっていた。きっともう、この店を訪れることはないのだろう。だが、加恋が救った心は確かにそこにあった。

次に店を訪れるのは、どんな悩みを抱えた客なのか。人の心の奥にある傷と向き合うこの物語は、これからもさまざまな人生を映し出していく。

取材協力:蒼乃シュウ(@pinokodoaonoshu)

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