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「自分を愛さないと、他人は愛せない」は本当か?心理学者が検証

  • 2026.3.4
Credit: canva

「まずは自分を愛しなさい。そうすれば本当の愛が見つかる」

恋愛アドバイスで一度は耳にしたことのある言葉ではないでしょうか。

自分を大切にできない人は、他人も大切にできない。そんな“常識”のように語られてきた主張を、心理学者たちが真正面から検証しました。

ドイツ・レーゲンスブルク大学(University of Regensburg)の研究チームは、自己愛と恋愛の関係をデータで確かめることを試みました。

その結論は単純な「イエス」でも「ノー」でもありませんでした。

どうやら問題は、「自分を愛しているかどうか」よりも、「どのように自分を扱っているか」にあるようなのです。

研究の詳細は2026年1月5日付で学術誌『Discover Psychology』に掲載されています。

目次

  • 「自己愛」ってなに?ナルシシズムとはまったく違う
  • 「自分を愛さないと、他人は愛せない」は本当だったのか?

「自己愛」ってなに?ナルシシズムとはまったく違う

まずチームが取り組んだのは、「自己愛とは何か」を定義することでした。

一般に、自己愛という言葉はナルシシズムと混同されがちです。

しかしナルシシズムは誇張された自己重要感や過剰な承認欲求を指す心理学用語であり、健全な自己愛とはまったく異なります。

心理学の近年のモデルでは、自己愛は大きく三つの要素に分けられます。

第一が「自己接触」です。

これは自分の感情や内面状態をはっきりと認識することを意味します。自分の強みや弱みを把握する、いわば“気づき”の能力です。

第二が「自己受容」です。

自分をありのまま受け入れる態度です。

否定的な感情も含めて受け止め、欠点を責めすぎない姿勢が含まれます。

第三が「セルフケア」です。

これは外向きの行動に関わります。

自分を丁寧に扱い、幸福を育てる行動を選ぶことです。

休養を取る、楽しい活動をする、苦しいときに自分を労わるといった行動がここに含まれます。

さらに研究では「自己コンパッション」も測定されました。

自己コンパッションとは、失敗や困難の場面で自分を友人のように扱う姿勢です。厳しく責めるのではなく、優しさを向ける態度です。

ここで重要なのは、自己愛は単なる自己評価の高さではなく、「自分をどう扱うか」という態度と行動の総体だという点です。

一方、他者との恋愛については「愛の三角理論」が用いられました。この理論によると、恋愛は次の三要素から成り立ちます。

・親密性(情緒的なつながりや温かさ)

・情熱(興奮や欲望)

・コミットメント(長期的に関係を維持する決断)

この三要素がどのように組み合わさるかで、恋愛の質が変わると考えられています。

そして実際の調査研究には、460人の成人が参加。

平均年齢は約27歳で、全員が恋愛関係にありました。

参加者は自己愛の三要素、自己コンパッション、そして現在の関係における親密性・情熱・コミットメントを詳細な質問票で評価しました。

「自分を愛さないと、他人は愛せない」は本当だったのか?

分析の結果、興味深いことが分かりました。

「自己受容」と「セルフケア」は、確かに、親密性・情熱・コミットメントのすべてを有意に予測しました。

つまり、自分を受け入れ、丁寧に扱っている人ほど、他者への恋愛関係も強く感じている傾向があったのです。

これは直感的にも理解しやすい結果です。

自分を過度に否定しない人は、パートナーの欠点も受け入れやすいかもしれません。また、自分を大切にする習慣がある人は、相手にも同様の態度を向けやすいでしょう。

しかし意外だったのは、「自己接触」だけでは恋愛の質は予測できなかったことです。

自分の感情をよく理解していること自体は、情熱や親密性の高さにはつながりませんでした。

つまり、「自分を知っている」ことと、「自分を大切に扱っている」ことは別なのです。そして恋愛に影響していたのは後者(「自分を大切に扱っている」こと)でした。

さらにもう一つ、重要な結果がありました。

恋愛関係全体の満足度を予測していたのは、自己愛そのものではなく「自己コンパッション」でした。

失敗や困難のときに自分に優しくできる人ほど、関係全体への満足度が高い傾向があったのです。

これは意味深い結果です。

恋愛には必ず衝突や挫折があります。

そのとき自分を責めすぎる人は、他者との恋愛関係そのものも悲観的に捉えやすい可能性があります。

一方で、自分を穏やかに受け止められる人は、恋愛関係の揺らぎにも柔軟に対応できるのかもしれません。

問いの答えは「部分的に正しい」

では、「自分を愛さないと他人は愛せない」は本当なのでしょうか。

今回の研究が示したのは、その命題は単純化しすぎだということです。

自分を知っているだけでは十分ではありません。しかし、自分を受け入れ、丁寧に扱い、失敗時に優しくできる人は、より親密で情熱的、かつ満足度の高い関係を築きやすい傾向があります。

重要なのは「自分を愛しているか」という抽象的な自己評価ではなく、「日常でどのように自分を扱っているか」という具体的な態度と行動です。

恋愛を良くしたいと思ったとき、相手を変えることばかりに目が向きがちです。

しかし今回の研究は、意外にも「自分への接し方」が静かに関係の土台を形づくっている可能性を示しています。

自分を責める声が強いときこそ、自分をどう扱っているかを振り返ってみる。

その小さな態度の違いが、恋愛パートナーとの関係に波紋のように広がっていくのかもしれません。

参考文献

Psychologists test the popular belief that you must love yourself to love a partner
https://www.psypost.org/psychologists-test-the-popular-belief-that-you-must-love-yourself-to-love-a-partner/

元論文

Self-love and love in a romantic relationship are partly related
https://doi.org/10.1007/s44202-025-00536-z

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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