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夫の舌打ちで動悸、上司のメールで不安。「こんなことで落ち込むなんて…」私の心が弱いせい?──メンタルヘルスの専門家が教える“心の守り方”

  • 2026.3.3

「自律神経」って言葉、よく耳にしますよね。実は、“交感神経と副交感神経”の2種類だけではないんです。メンタルヘルスの専門家・吉里恒昭氏によると、“ポリヴェーガル理論”では自律神経を3つに分けて理解するのだそう。

吉里氏がこの3つの自律神経を赤・青・緑の3色で表現し、さらに独自の“ポリ語”を使って、体と心の調子を整える方法をわかりやすく解説した著書では、イライラ、不安、無気力、トラウマなど、さまざまな負の感情からラクになるメソッドが紹介されています。

今回はその中から、「イライラしたり逃げ出したくなる」ときの理由や対処法をご紹介します。

※本記事は書籍『イライラ、不安、無気力、トラウマ……負の感情がラクになる 「ポリヴェーガル理論」がやさしくわかる本』(吉里恒昭 :著/日本実業出版社 )から一部抜粋・編集したものです

 

「3つの自律神経」は、どんな働きをする?

赤=交感神経:「動く・活動する」ときに働く神経です。赤が強く働くときは危険に遭遇して「戦う・逃げる」必要があるときです。「アクセル」の神経とも呼ばれ、この神経が活発な状態は、「能動的な状態」ともいわれます。

青=背側迷走神経複合体:「止まる・休む」ときに働く神経です。青が強く働くときは命の危険に遭遇して「体が固まり、シャットダウンする必要がある」ときです。「ブレーキ」の神経とも呼ばれ、この神経が活発な状態は、「受動的な状態」ともいわれます。

緑=腹側迷走神経複合体:「安全な場所にいる・安心だと感じられる」ときに働く神経です。アクセルとブレーキの調整をする「チューニング」の神経とも呼ばれます。

 

赤色の反応が出てくるケースを知ろう

例を挙げてみましょう。ポリ語による表現方法の例示にもなります。

「お父さんが舌打ちをしたのでドキドキ、ソワソワして私は部屋から出た」という人がいました。この場合、「お父んの舌打ちが刺激になり体が赤くなって離れた」と表現します。

「知人2人が楽しそうにこちらをチラチラ見ながらおしゃべりしていて、笑われているのかもしれない、ちゃんとしなきゃいけないと、ずっと考えてしまいました」という人がいました。この場合、「知人が笑っている様子が刺激になり体が赤くなった」と表現します。

「先生からのメールに『成績が悪いのであなただけ特別居残り勉強してもらう』と書いてあって、その日の夜はなかなか眠れなかった」という人がいました。この場合、「成績が悪いと書いてあるメールが刺激で体が赤くなった」と表現します。

ここで挙げたようなケースの場合、とりあえず、「お父さん・知人・先生のメールからいったん離れることで、体が過剰な赤になることを防ぐ」ことが「体を調整する第一歩」と考えられます。

「これくらいのことでドキドキするのは私のメンタルが弱いからだ」「笑われても気にしなければいいのだからポジティブに考えよう」というような捉え方もありますが、ポリ語では、「刺激」があったので、生理的な「反応」があった(だけ)と捉えます。

さらにお父さん・知人・先生のメールという刺激から何を守りたかったのか、ということを想像することも大切です。自分の身の安全、安心したい心、人と仲良くしたい想いなどを守りたかったのかもしれません。

それはあなたがそう考えているというよりは、体がそれを反射的に守りたがっているという考え方を、ポリ語ではします。

 

赤は「門番」のようなもの

ある患者さんが「私の赤は門番みたいなものですね」とおっしゃっていました。赤は「大事なもの(こと)を外敵や異物から守る」ために働くので、確かに「門番」のイメージかもしれません。あるいは、「火を消す消防士」「パトロール隊」「警察官」「レスキュー隊」というイメージを持つ人もいます。

子猫を守る親猫は赤になりますし、縄張りを荒らされそうになったライオンも赤になって戦います。子どもを守る親も、クラスの教え子たちを守る先生も、命を落とさないように救助する医療者も、大切な社員を守る社長さんも、いじめられたときに反撃する人も、疲れた状態で他人に何か言われたときに逆ギレしてしまう人も、みんな赤の反応が出るのは自然なことなのです。

赤は、「一生懸命に大切なもの(こと)を守っている大事な生理反応(自然な反応)」と、ポリ語では考えます。今紹介した「刺激」は外側にあるものです。

外的刺激」といってもいいかもしれません。自律神経はこのような外的刺激に反応しますが、「内的刺激」にも反応します。

内的刺激というのは、体の状態や心の状態です。体や心のコンディションといってもいいでしょう。

例えば、お腹が空いてイライラすることもあるでしょう。腰が痛くてその痛みに対してイラつくこともあるでしょう。嫌なことを思い出してソワソワすることもあるでしょう。楽しいことを思い出してワクワクして活発になることもあるでしょう。

このように、内側の刺激がきっかけとなって3色が反応することもあるという視点も持っておきましょう。

 

▶「赤」になる食べ物・飲み物がある?

赤になる「刺激」は人間関係だけではない

もう一つ大切なことをお伝えしましょう。「刺激」は人間関係だけではありません。自律神経は、いろんなものから体を守ろうと試みています。例えば、音や光、気温差や気圧などからも体を守っています。あるいは環境汚染物質のような毒物も、体にとっては「異質な刺激」です。

食べ物や飲み物の観点から見ると、人によっては、アルコール、人工甘味料、保存料なども異物と判断され、赤が反応することがあります(本来はもっと細かい体のメカニズムが反応しているのですが、ここでは簡略化して紹介しています)。

カフェインが体に入ると体が赤になりやすいことが知られています。栄養ドリンクやコーヒーを毎日飲むことは、実は自ら赤になっているようなものです。

このように、自分の外にある刺激や、自分の内側(体や心のコンディション)からの刺激がきっかけとなって「赤が反応する」という特徴があることを覚えておいてほしいのです。

どうでしょう。赤の大事な役割や目的などが理解できたでしょうか。あなたの神経がこのような想いで赤になっているということを知って、あなたはどのように感じましたか?

あなたがイライラしたり逃げ出したくなるのは、性格やメンタルの強弱ではなく、「自律神経の赤が反応している」からです。そしてそれを「大事なもの(こと)を守ろうとしている生理現象」として捉えることで、少しでも赤に対して愛着や感謝の気持ちが芽生えてきたら素晴らしいことです。

「門番さん、消防士さん、パトロール隊、レスキュー隊のみんな、ありがとう。私の大事なもの(こと)を守ろうとしているのですね」とあなたの赤に伝えてあげてください。何か赤の思いを感じることができたら、あなたと体がコミュニケーションをしてチームになっている瞬間です。自律神経と共存した生き方です。

 

赤に対して赤や青で反応しすぎないようにする

赤の神経が反応している状態は、なんだか嫌われやすくなります。イライラして、戦う素振りを見せてきて、焦っていて、急いでいる──そんな人が近くにいたらどうでしょう。おそらく、そういう人を否定的に思うことが多いのではないでしょうか。

赤の神経は嫌われがちですし、自分の赤を変えようと努力したり(赤)、そんな自分を情けなく思ってしまう(青)人もいます。

「イライラする自分が嫌」「緊張しやすい自分が情けない」「すぐ興奮する自分はおかしいと思う」といった悩みもよく聞きます。

赤が出ている人に出会うと自分も赤になるのは自然な反応です。さらに、自分のに気づいたとき、その赤に対してさらに自分自身が赤で反応してしまうのも自然な反応なのです(表現が段々ややこしくなってきましたね)。

ここで大事なのは「自分の赤を赤で反応しすぎないようにする」「自分の赤を緑の安心で包み込む」「赤になって当然なのだという緑でカバーする」というイメージをトライしてみることです。

具体的には「イライラしているのは私の体の赤が反応したのだな。そんな自分が嫌になるけど、生理反応だし命を守る体の反応だから仕方ないか。むしろ守ってくれているから感謝できるようになるといいな」というイメージから始めてみてはどうでしょう。

本書のキーワード、「赤はそのままに」はそのような意味合いで使っています。少しずつでいいので、自分の赤を理解し、赤とのかかわり方をあなたなりに見つけていってほしいと思います。

 

著者略歴:吉里恒昭(よしざと・つねあき)
 
臨床心理士、公認心理師、医学博士。フォーチュンビレッジ代表。株式会社DMW取締役。心療内科、精神科の現場でカウンセラーとして20年以上の臨床経験を持つ。うつ病、依存症、PTSD(トラウマ)など、様々なメンタル疾患に対して「からだ・こころ・発達・対人関係」の側面からセラピーを行っている。専門的アプローチはブリーフセラピー、ナラティブアプローチ、マインドフルネス、ポリヴェーガル理論、整体など。2020年から支援者(カウンセラーなど)を対象としたオンラインスクール(DMWクラブ)を開講。最新メンタルヘルスやポリヴェーガル理論を支援者が使えるようになるための学び場を提供している。

 

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