1. トップ
  2. 恋愛
  3. 母娘でアメリカのはずが。70代の母が機内で発作、呼吸困難 → 居合わせた医師と添乗員に、後日娘は

母娘でアメリカのはずが。70代の母が機内で発作、呼吸困難 → 居合わせた医師と添乗員に、後日娘は

  • 2026.2.27

母の長年の夢だった海外旅行。母と娘の旅は期待にあふれていました。しかし、旅の初っ端から予想もしない出来事の連続で……。駆け出し添乗員だった私が、初めて「旅の裏側」を思い知ったエピソードをご紹介します。

夢の旅の、不穏な始まり

私が海外旅行の添乗員として駆け出しだった頃のことです。アメリカ本土を巡るツアーに、70代のお母様と40代の娘さんの母娘が参加していました。

「長年の夢だった海外旅行を、母にプレゼントしたんです」成田空港の集合場所で、娘さんがそう話す隣で、お母様は満面の笑みを浮かべていました。

命の次に大切なもの

ところが離陸して間もなく、娘さんが青ざめた顔で私の席へ駆け寄ってきました。「パスポートが、どこにも見当たらないんです」バッグの中、上着のポケット、座席のすき間、足元……。 全部探したけどどこにもないと言います。

パスポートがなければ、当然入国はできません。最悪の事態が頭をよぎり、私も一気に血の気が引くのを感じました。客室乗務員とともに座席周辺を探し、ようやく4列後方の座席の下から発見。座席の下に落としたパスポートが、離陸時の傾きで、するすると後方へ滑り落ちていたようでした。

暗闇に響くドクターコール

ホッとしたのも束の間。食事が終わり、照明が落とされ静まり返った機内に、娘さんの叫び声が響きます。「お母さん、どうしたの? 大丈夫!?」座席に駆け付けると、お母様が座席で苦しそうに息をしていました。

「機内にお医者様はいらっしゃいませんか?」名乗り出てくださった医師が迅速に処置してくださる中、私は離れたところから見守ることしかできませんでした。あんなに楽しそうにされていたのに、もし、何かあったら……。もし、緊急着陸になったら……。目の前の現実に、ただ祈るばかり。

幸い、お母様の呼吸は落ち着きましたが、私は手の震えがしばらく止まりませんでした。

旅の終わりに残るもの

その後の10日間は何事もなく過ぎ、帰国の日、お二人から「本当に楽しかった。いろいろお世話になりました」と笑顔で声をかけていただいたとき、ようやく私の胸の奥の緊張がほどけました。

多くの経験を重ね、どんなトラブルにも冷静に対応できる自信がついてからも、最後のお客様が税関を抜けるのを見届けた後にどっと押し寄せる疲れは、新人の頃と少しも変わりませんでした。

旅にはいつも、楽しさの裏に危険や緊張が潜んでいます。けれど、旅を終えたお客様の笑顔を見るたび、その重圧はふっと消え、また新たな旅への準備が始まるのです。

【体験者:60代・女性会社員、回答時期:2026年2月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Sachiko.G
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。

元記事で読む
の記事をもっとみる