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「俳優は何を志向すべきか?」イ・ビョンホン、最新作『しあわせな選択』に臨んだ心境とは。

  • 2026.2.27

イ・ビョンホン/俳優

Lee Byung-hun/イ・ビョンホン1970年、韓国・ソウル出身。大学在学中にモデル活動で芸能界デビュー。2000年、パク・チャヌク監督作『JSA』で第1回釡山映画評論家協会賞主演男優賞を受賞。09年『G.I.ジョー』でハリウッドデビュー。『王になった男』(12年)で第49回大鐘賞主演男優賞など受賞多数。

「俳優は何を志向すべきか?」韓国の名優が心がける境地。

韓国映画界において、イ・ビョンホンはすでに「スター」という言葉では括れない存在だ。90年代から第一線を走り続け、国内外の大作や近年では『イカゲーム』や『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』など配信作品に出演しながらも、作家性の強い映画に身を投じることを躊躇しない。そんな彼が主演として21年ぶりに名匠パク・チャヌクとタッグを組んだ最新作が『しあわせな選択』である。

主人公マンスは家族と平穏な生活を送っていたが、会社をリストラされ苦境に陥る。面接で失敗した彼はライバルを蹴落とし、自分の"採用枠を作る"ため驚くべき計画を企てる──。

「僕の妻は初めてこの映画を観た時、マンスにまったく共感できなかったそうです。この映画が特別なのはまさにその点です。もしマンスが完全に絶望的な状況に追い込まれていたなら、観客は彼の行動を理解したかもしれません。でも彼はすべてを失ったわけではないにもかかわらず、"元の状態"に戻ることに異常なまでに執着してしまう。だから彼の行動を理解する人もいるし、拒否反応を示す観客もいる。解釈や反応が分かれること自体が、監督の意図でもあるのです」

この作品は観る者に心地いい共感を与えるものではない。ブラックコメディとも呼べるが、人物造形の緻密さやディテールの描き込みの豊かさはワールドプレミアされたヴェネツィア国際映画祭でも高く評価され、米国アカデミー賞の候補としても取り沙汰されている。

「パク監督は、俳優が全面的に信頼できる監督です」とイ・ビョンホンは誇らしげに断言する。彼にとってパク・チャヌクとの関係は俳優人生の原点。『JSA』(2000年)は彼の出世作であり、作家主導の映画の中で俳優がどこまで思考し、引き受けるべきかを学んだ現場だった。

「僕は少しでも理解ができない点があれば監督に大量の質問を投げかけるタイプ。自分が納得できなければ、観客を納得させることはできませんから。正直、撮影時はパク監督が照明や小道具などの細部にいたるまで数多くの指示や修正を出しているのを見て、その意味がわからないこともあった。でも完成した映画を観て初めて腑に落ちました。彼は最初から完成形を頭の中に持っていたのです」

原作は1997年に発表されたドナルド・E・ウェストレイクによる小説『The Ax(斧)』で、本映画の構想は20年以上前に始まっていたという。舞台をアメリカから韓国に移し、AIという現代的要素を導入したことで物語は特定の時代や社会を超えた普遍性を獲得した。

「かなり以前に書かれた原作ですが、"いままさに必要とされている物語"でもあります。描かれる社会問題は、どこで作られ、どこで観られても成立する──それがこの作品の本質だと思います」

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『しあわせな選択』妻とふたりの子ども、2匹の犬と暮らすサラリーマンのマンスは、25年間務めた会社から突然解雇される。就職活動は難航し、追い詰められた彼は、希望する製紙会社に応募してきたライバルたちを蹴落とす作戦を企てる。TOHO シネマズ日比谷ほか全国で3月6日から公開。https://nootherchoice.jp/© 2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED

*「フィガロジャポン」2026年3月号より抜粋

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