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『冬のなんかさ、春のなんかね』の衣装はなぜ注目される?着用アイテムが争奪戦に…スタイリストに聞く“人気の裏側”「杉咲さんと何度も話して…」

  • 2026.2.25

ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』で、杉咲花さんが演じる土田文菜の衣装は、放送直後にSNSを中心に大きな話題を集めています。スタイリングを担当した杉本学子さんに、今泉監督や杉咲さんと重ねた対話、そして文菜という人物を形づくるために大切にしたことについて伺いました。


一番意識しているのは……

杉咲花さんが演じる、小説家の土田文菜。©日本テレビ

――杉咲花さん演じる土田文菜が着ている服は、SNSを中心に「特定班」が出るほどとても話題になっています。どのようにこのスタイルになっていったのでしょうか?

『冬のなんかさ、春のなんかね』は、今泉力哉監督が脚本と演出の両方を手掛けていて、ドラマの中でも少し特殊な作り方をしている作品だと思います。普段であれば、キャストとスタイリストで、役の人物像を想像しながらどんな服を着るのか、一緒に作り上げていくことが多いのですが、今回は今泉監督の中ですでに出来上がっているイメージがあって。それをもとにみんなでディスカッションして、少しずつ形にしていくプロセスがありました。

そして、杉咲花さんは自分が演じる役柄にしっかりと向き合う方なんです。自分の思い描く文菜をスタッフに丁寧に共有してくださって、そのやりとりの中でキャラクターの解像度がどんどん高まっていきました。

――杉咲さんは文菜をどのような女性としてとらえているのでしょうか?

まず一番におっしゃっていたのは、「芯の強い女性」であるということです。自分の好きなものをきちんと選び取って身につけている、こだわりを持った人物だと。

それから、ディスカッションを重ねる中で共通認識になっていったのは、わかりやすくかわいらしい女性ではなく、まわりにこびない人物だ、という点でした。

文菜は古着屋でアルバイトをしている。©日本テレビ

私としては、文菜は古着屋でアルバイトをしていますが、古着屋を本業にしたいと思っているわけではない、ということは大切にしていました。あくまでも彼女の軸は小説家であるということ。なので、古着だけでスタイリングを完結させるのではなく、新しい服と古着をミックスすることを意識しています。

――まわりにこびない女性が着る服として、日本発のブランドとしてとても人気がある「AURALEE」や「COMOLI」、「HYKE」を選んだのはなぜですか?

たびたび登場する「AURALEE」のシャツ。©日本テレビ

ユニセックスで着られるアイテムが多い、というのは大きな理由のひとつです。文菜には、女性らしさに限定されない魅力を持っていてほしかったですし、男性から見ても自然に「素敵だな」と感じてもらえるような服を着てほしいと思っていました。それから、古着とミックスしやすいんです。いい意味で強い主張がなく、古着とも自然になじんでくれる。そうしたバランス感も魅力でした。

文菜という人物を作るにあたって、下着も大切な要素。こだわりを持った女性が身につけるものとして、「DEPT」のキャミソールなどを選びました。モードな雰囲気も出るので、彼女にぴったりだなと思っています。

©日本テレビ

ただ、見た目の印象だけで選んで、文菜の暮らしとかけ離れたブランドを取り入れることはしないように心がけています。たとえば「HYKE」のダウンジャケットは決して安いものではありませんが、文菜の収入で手が届かないものではないと思っています。作品の印税で自分へのご褒美として買ったのかもしれないですし、リセールショップで見つけたのかもしれない。ドラマの中では描かれていませんが、そうした背景を想像していただけたら嬉しいです。

――杉咲さんとディスカッションを重ねていく中で、気付かされた点はありますか?

杉咲さんは、サイズ感をとても大切にされていました。杉咲さんご自身が小柄な方なので、オーバーサイズのアイテムを着る際にも、だらしなく見えすぎないように、きちんと雰囲気を保ちたいとおっしゃっていて。

私も普段からサイズ感は意識していますが、今回はとくに何度も試着を重ねながら決めていきました。一見すると文菜には少し大きすぎるように見えるものも、実は細かく計算されたバランスになっています。

©日本テレビ

当初から古着をミックスするスタイルで進めていましたが、監督や杉咲さんと話し合う中で、よりメンズライクな方向へと深まっていった印象があります。基本的に、どんな人と会うときもメンズライクな装いをしていますが、岡山天音さん演じる小太郎と会うシーンでは、よりカジュアルな雰囲気になっています(笑)。そうした違いにも注目していただけたら嬉しいです。

©日本テレビ

キャストやスタッフと何度も相談して決めた「L.L.Bean」のフリース

「L.L.Bean」のフリースを着ている文菜。©日本テレビ

――杉本さんご自身、とくに印象に残っているコーディネートはどれですか?

視聴者の方からもたくさん反響をいただいた、第1話のコインランドリーのシーンで着ていた「L.L.Bean」のジップアップフリースにスウェットパンツを合わせたコーディネートです。コインランドリーで初めて出会った人の家に行く、という設定だったので、どうすれば文菜が変わっている子に見えすぎないか、ということを強く意識しました。同時に、コインランドリーという場所のラフな空気感も大切にしています。

賛否が分かれる設定かもしれませんが、「この二人なら、自然に仲良くなりそうだよね」と思ってもらえるようにこだわりました。文菜というキャラクターを最初に形づくる、大切なコーディネートだったと思います。

©日本テレビ

それに、第1話はこの服を着ている時間がとても長いんです。だからこそ、印象に残りながらも、映像の邪魔をしないというバランスも大切にしていました。

©日本テレビ

――このコーディネートに決まるまでには、いくつか候補もあったのでしょうか?

そうですね。さまざまな候補の中から、このスタイルに決まりました。当初は、私と杉咲さんの間で、もう少し色味のあるアイテムを取り入れてもいいのではないか、という話もしていたんです。無機質なコインランドリーの空間の中で、少しアクセントになる色があってもいいのかな、と。ただ今泉監督が、「文菜という人物を一番落とし込めているのはこれだと思う」と選んでくださいました。完成した映像を観て、このコーディネートで良かったと改めて感じました。

このL.L.Beanのフリースは古着のアイテムで、実際に学芸大学や代々木上原あたりのショップを回って見つけたものです。

あえて「HYKE」のダウンジャケットを何度も登場させています

©日本テレビ

――杉本さんが影響を受けた、衣装が素晴らしいと思う映像作品を教えてください。

最近だと、Netflixの『First Love 初恋』です。色にとてもこだわりが感じられて、キャストの方々がブルー系の衣装を多く身につけていらっしゃるのが印象的です。

私自身も、キャラクターの心情に寄り添いながら服の色を選ぶことが多いのですが、細部まで色味が統一された映像が持つ力を改めて感じました。映像の中で、服の色が登場人物の感情をそっと伝えてくれる、衣装の持つ表現の豊かさを、改めて実感した作品でした。

――杉本さんが映像作品のスタイリングを手がける上で大切にしていることを教えてください。

もちろん物語にもよるのですが、ドラマを手がけるなら視聴者の方が見て「これ着てみたいな」「こういったコーディネートしてみたいな」と思ってもらえるようなものを選びたいと思っています。そして、役柄に寄り添うことも大切です。ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』では、松たか子さん演じる大豆田とわ子は、キャリアを重ねてきた女性であり、自分の良いと思うものをきちんと選びとる役柄だったので、毎回様々な洋服を着てもらいました。

©日本テレビ

一方今回のドラマの文菜は、大豆田とわ子よりも若いですし、彼女と比べて収入も高いわけではないと思うので、あえて「HYKE」のダウンジャケットを何度も登場させています。彼女にとって大切な一着であり、日常の中で自然に着続けているものとして。そうしたリアリティを積み重ねていくことも、意識しています。

杉本学子(すぎもと・のりこ)

東京都出身。文化服装学院卒業後、祐真朋樹氏のアシスタントを経て独立。広告や雑誌を中心に活躍。TBS『大豆田とわ子と三人の元夫』やテレビ朝日『しあわせな結婚』の松たか子さんのスタイリングなどを担当。

『冬のなんかさ、春のなんかね』

©日本テレビ

日本テレビ系毎週水曜よる10時~放送中
Huluはじめ各種配信サービスで全話配信中

あらすじ
小説家の土田文菜(杉咲花)は近所にあるコインランドリーをよく利用している。なんとなく寂しいその空間が好きなのだ。ある冬の夜、音楽を聴きながら日々持ち歩いている<思考を整理するためのノート>に言葉を書き連ねつつ洗濯が終わるのを待っていると、自分のお店の洗濯乾燥機が壊れてしまって、この日たまたまコインランドリーを利用していた美容師の佐伯ゆきお(成田凌)と出会うことに。文菜のイヤフォンから音漏れしていたミッシェル・ガン・エレファントのファンだというゆきおと他愛もない会話をした文菜は興味本位でゆきおの美容室についていく……。

出演: 杉咲花、成田凌、岡山天音ほか
監督・脚本:今泉力哉

公式HP
https://www.ntv.co.jp/fuyunonankasa/

文=高田真莉絵

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