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保護者「記念写真のつもりが…」入学式の写真に“他人の顔”くっきり…写り込んだだけでも訴えられる?

  • 2026.4.21
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

SNSで入学式の投稿を見ていたら、他人の投稿に自分や子どもが映り込んでいた…そんな経験に戸惑ったことはありませんか?

晴れ姿をSNSに投稿したくなる一方で、そこに第三者の顔や姿が含まれている場合、思わぬトラブルにつながる可能性もあります。

「肖像権」や「プライバシー権」といった言葉は知られているものの、実際にどのようなケースが問題となるのか、その線引きに悩む方も少なくありません。

そこで今回は、入学式などの記念写真をSNSに投稿する際の注意点について、弁護士の寺林智栄さんに解説していただきました。安心してSNSを利用するために押さえておきたいポイントを整理します。

入学式の記念写真をSNSに投稿すると、なぜトラブルになるのか?

---入学式のような公的な行事でも、他人が写り込んでいる写真をSNSに投稿すると法的な問題が生じるのでしょうか?

寺林智栄さん:

「入学式などの記念写真に他人が写り込んでいる場合、その写真をSNSに投稿すると、主に『肖像権』と『プライバシー権』の観点から法的問題が生じる可能性があります。

まず肖像権とは、みだりに自分の顔や姿を撮影・公開されない権利です。入学式のような公的行事であっても、写り込んだ人物の顔が識別できる状態でインターネット上に公開されれば、『本人の同意なく公開された』と評価される余地があります。特にSNSは不特定多数が閲覧できるため、問題になりやすい点に注意が必要です。

次にプライバシー権の問題があります。学校名や入学式という状況と結びつくことで、特定の学校に通っている事実などの個人情報が推知される可能性があります。近年は児童の安全や個人情報保護への意識が高く、保護者が強い不快感を示すケースも少なくありません。

さらに、未成年が写っている場合はより慎重な配慮が求められます。子どもの画像の公開はトラブルに発展しやすく、削除要求や損害賠償請求につながる可能性もあります。

したがって、他人が識別できる写真をSNSに投稿する際は、事前に同意を得る、顔をぼかす・トリミングするなどの配慮が重要です。」

背景に写り込んだだけでも違法? 「肖像権」と「プライバシー権」の境界線

---では、実際に裁判などで「違法」と判断される基準はどこにあるのでしょうか?

寺林智栄さん:

「この問題では、先ほども述べたように、主に『肖像権』『プライバシー権』、場合によっては『個人情報保護』の観点が関係します。

まず肖像権は、自己の容ぼう・姿態をみだりに撮影・公表されない権利です。日本では明文規定はありませんが、人格権の一内容として判例上確立しています。SNS投稿は不特定多数への公開行為にあたるため、本人の同意なく顔が識別できる形で掲載すれば、肖像権侵害が問題となり得ます。

次にプライバシー権です。入学式という具体的な場面と結びつくことで、『どこの学校に通っているか』『いつどこにいたか』といった私生活上の事実が推知される可能性があります。とくに未成年の場合は、保護の必要性が高いと考えられ、違法と評価されやすくなります。

違法かどうかは、単純に『写っている=違法』とは判断されず、裁判では次のような事情を総合的に考慮して判断されます。

①撮影場所や場面:公的行事か、私的空間か
②写り込みの程度:主役か背景か、識別可能か
③公開範囲:限定公開か、不特定多数か
④投稿の目的:私的な記録か、営利・拡散目的か
⑤本人の同意の有無や削除対応

一般に、他人が『背景として小さく写り込む程度』であれば違法性は低いとされますが、人物が特定できる形で継続的・広範に公開すれば、権利侵害と判断される可能性が高まります。」

SNS投稿でトラブルを避けるために今すぐできる対策

---他人が写り込んでいる写真を安全にSNSへ投稿するためには、具体的にどのような配慮が必要ですか?

寺林智栄さん:

「トラブルを避けるためには、『写り込みを前提に慎重に公開する』という意識が重要です。特に入学式のように未成年が多く写る場面では、事前の配慮が大きな差を生みます。

まず最も確実なのは、他人が識別できる写真は投稿前に同意を得ることです。保護者同士であれば『SNSに載せても大丈夫?』と一言確認するだけでもトラブル予防になります。同意が難しい場合は、公開を控える判断も必要です。

次に、顔や名札など個人が特定できる情報を加工することが重要です。具体的には、顔ぼかし・スタンプ・トリミングなどで本人を識別できない状態にします。特に制服・校章・校門・看板などは学校的特定につながるため、背景にも注意が必要です。

また、公開範囲の設定も重要なポイントです。全体公開ではなく、友人限定・非公開アカウントなど、閲覧者を限定するだけでもリスクは大きく下がります。

さらに、削除依頼への迅速な対応も不可欠です。本人や保護者から削除の要請があった場合は、権利侵害の有無を争う前に速やかに削除するのが実務上の安全策です。」

「写り込み」への配慮が、思い出をより安全に残す

記念写真のSNS投稿は、楽しさを共有する手段ですが、同時に他者の権利を侵害してしまうリスクと隣り合わせです。今回の取材を通じて分かったのは、法律的な観点からも「写り込み」に対して慎重かつ丁寧に対応することが、自分自身を守り、周囲とのトラブルを防ぐ最善の策であるということです。

特別な日である入学式の写真は、大切な思い出です。その思い出をより安全に守るために、まずは投稿前に「誰かが特定されていないか」「顔がはっきりと写っていないか」を改めて確認してみてください。小さな配慮や加工の手間を惜しまないことが、私たち一人ひとりがSNSを安心して使い続けるための第一歩となるでしょう。


監修者:寺林智栄

2007年弁護士登録。札幌弁護士会。てらばやし法律事務所。2013年頃よりネット上で法律記事の執筆・監修を開始。Yahoo!トピックスで複数回1位獲得。読む方にとってわかりやすい解説を心がけています。


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