1. トップ
  2. 恋愛
  3. 激動の幕末でビジネス革命。ベンチャー若手社長は経営スキルを武器に江戸時代で成り上がれるのか?【書評】

激動の幕末でビジネス革命。ベンチャー若手社長は経営スキルを武器に江戸時代で成り上がれるのか?【書評】

  • 2026.2.21

【漫画】本編を読む

時代が移り変わるにつれて、お金や物の価値は大きく変化する。社会情勢の変化により、商売の形も手段も見る間に更新されていくのが世の常だ。しかし、強いて言えば、商売人の本質だけは変わらないのかもしれない。彼らに求められるのは利益を追うことだけでなく、人の欲求や不安を汲み取り、必要とされる価値を見極めて差し出す姿勢なのだ。

『大江戸イノベーション』(樋田よしなり:著、山村竜也:監修/KADOKAWA)は、そんな商売の普遍性を改めて実感させてくれる物語である。

とあるベンチャー企業の若手社長・榊は、階段から落ちた拍子に、激動の江戸末期へタイムスリップしてしまう。右も左も分からぬ中、さっそく争いに巻き込まれたことをきっかけに出会ったのは、潰れかけの茶屋をひとりで切り盛りする娘・なぎ。行き場を失った榊は、成り行きで彼女のもとに居候することに。

生き残るためにまず必要なのは、お金を稼ぐための知恵と手段だ。そう腹を括った榊が目をつけたのは、居候先の寂れた茶屋だった。現代で培った経営感覚とビジネス知識を武器に、価格戦略から商品開発、客層分析までフル活用。常識も価値観も違う江戸の町で、次々と型破りな一手を打ち出していく。

本作の見どころは、合理性や効率を重んじる現代的な感覚を持つ主人公が、商いを通して過去の時代の人々と向き合っていく過程が丹念に描かれている点だ。当然ながら、古い世に現代の知識や経営理論をそのまま持ち込んでも、すべて通用するわけではない。どんな時代においても、商売とは人と人の信頼関係の上に成り立つもの。江戸の人々の暮らしに寄り添いながら試行錯誤を重ねていく榊の地道さ、誠実さにはつくづく頭が下がる。時代が違っても変わらない価値とは何か。自分は誰のために、何のために働いているのか。商売の本質だけでなく、労働そのものの意味をも改めて考えさせてくれる一作だ。

文=ネゴト / 糸野旬

元記事で読む
の記事をもっとみる