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ヘリコバクター・ピロリ感染と重度の妊娠悪阻(つわり)の関係

  • 2026.2.19
出典:シティリビングWeb
つらいつわりの裏にピロリ菌?最新研究からその関係性を読み解く

こんにちは。産婦人科医の齊藤英和です。

今回は、胃・十二指腸疾患のリスク因子ともなっているヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)菌感染症と、辛い妊娠悪阻(つわり)との関係について解説していきます。

妊娠悪阻の長期化に関与? ピロリ菌感染から考える“妊娠前ケア”の重要性
出典:シティリビングWeb

ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)菌感染症は消化性潰瘍、慢性萎縮性胃炎、胃癌など、さまざまな胃・十二指腸疾患患のリスク因子としてよく知られてきています。最近、それ以外でも、ピロリ菌感染の影響について、興味ある研究が報告されました。それはピロリ菌感染と重症妊娠嘔吐とには関連性があるという報告です。今回紹介する研究は、ピロリ菌感染が重症妊娠嘔吐患者の長期入院に影響するかについて検討した研究です(Kurashina R, et al.J Obstet Gynaecol Res. 2025 Oct;51(10):e70099. doi: 10.1111 /jog.70099.

PMID: 41054201 )。

つわりは、妊婦の45%から90%に発症する、吐き気、嘔吐、食生活の変化を特徴とする症状で、通常、妊娠7週から12週の間にピークを迎え、ほとんどは12〜16週までに自然に解消するといわれています。

まれに(妊娠の約0.3%〜2%)重度化することがあり、ほぼ毎日嘔吐し、尿中ケトン体が強く陽性であり、持続的な体重減少、特に妊娠前体重の5%以上の減量となると入院が必要と言われています。また、入院した患者の約10%が長期入院をなっています。病気が進行すると重篤な状態になるとことあるので、これを防ぐためには、迅速な治療開始が極めて重要となっています。

つわりの病因についてはいくつかの説がありますが、一番の病因としては、妊娠10週目頃にピークを迎える絨毛膜から分泌されるホルモンであるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が関与しているとされています。その他の病因も検討されていますが、最近、ヘリコバクター・ピロリ感染が重症妊娠悪阻を引き起こす重要なリスク因子として、報告されてきています。

今回紹介する研究は、2011年1月から2023年6月までに日本医科大学病院と日本医科大学武蔵小杉病院に入院した重症妊娠嘔吐患者164名のデータを分析しています。

評価項目は、年齢、妊娠出産歴、入院時の妊娠週数、精神疾患の既往歴、不妊治療の既往歴、妊娠前からの体重減少、定性的尿ケトン検査、抗H. pylori IgG抗体価、血液測定値、生化学的検査値、甲状腺機能検査、入院期間が含まれています。

患者は、【1】抗H.pylori IgG抗体の状態(陽性・陰性)に基づいて2つのグループ、【2】短期滞在群(

164名のうち23名(14.0%)が抗ピロリIgG抗体陽性、141名(86.0%)が陰性でした。抗ピロリIgG抗体陽性の患者は陰性患者に比較し入院期間が有意に長く(中央値24日対15日、p = 0.032)、抗H. pylori IgG陽性が長期入院の独立したリスク因子でした(オッズ比4.67、95%信頼区間1.61–13.49、p=0.004)。

この結果から、抗ピロリIgG抗体検査は、重度妊娠悪阻による長期間入院となるリスク患者の特定に役立つ可能性を示唆しており、抗ピロリIgG抗体陽性の妊婦は、より詳細なケアの必要性があるようです。

さらに、症例数は少ないものの、一般的な治療では改善しなかった重症妊娠悪阻の患者に対し、ピロリ菌除去治療を行ったところ症状が改善した、という報告があります。

こうした知見を踏まえると、H. pylori根絶療法が重症妊娠悪阻の症状改善につながるかどうかを検証するため、前向き研究を行う意義があると考えられます。より積極的な戦略としては、妊娠中に治療するのではなく、妊娠前から治療するという、治療法を予防へと移す治療戦略が取られるべきであると考えられました。

また、このアプローチの重要性は、H. pylori感染と女性不妊の間にも有意な関連が示されており、特に原因不明の不妊症の場合、治療可能なリスク因子である可能性が示唆されています。

出典:シティリビングWeb

PROFILE齊藤英和先生

1953年東京生まれ。梅ヶ丘産婦人科ARTセンター長。昭和大学医学部客員教授。近畿大学先端技術総合研究所客員教授。国立成育医療研究センター臨床研究員。浅田レディースクリニック顧問。専門分野は生殖医学、特に不妊症学、生殖内分泌学。

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