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ヘビが1年間「何も食べず」に過ごせる理由が判明

  • 2026.2.9
ヘビが1年も断食できる理由は遺伝子にあった / Credit:Canva

ヘビといえば、獲物を丸呑みするイメージがあります。

一方で、ある種のヘビでは1年間近くほとんど何も食べずに生き続けることも知られています。

それなのに、衰弱してしまうわけでもなく、次の食事のときには巨大な獲物を丸呑みしてしまいます。

この極端な生活を支える体の仕組みについて、ポルトガルのポルト大学(University of Porto)の研究チームが、爬虫類のゲノム解析から手がかりを見つけました。

どうやら、空腹のサインを出す代表的なホルモンの仕組みを、ヘビたちは「手放して」いたのです。

この研究は2026年2月4日付の『Open Biology』に掲載されています。

目次

  • ヘビの空腹ホルモンの遺伝子は失われたいた
  • 空腹ホルモンの喪失は、ヘビの待ち伏せ戦略にぴったり

ヘビの空腹ホルモンの遺伝子は失われたいた

多くの動物では、食事の間隔が空くと「そろそろ食べたほうがいいよ」と体に知らせる仕組みがあります。

その中心にいるのが、胃で作られるグレリン(ghrelin)というホルモンです。

グレリンは主に、「脳に働きかけて食欲を高める」「空腹のときに、脂肪をエネルギーとして使うよう体を調整する」よう働きます。

しかしヘビは、多くの時間を「じっと待ち伏せして動かない」ことで過ごします。

中には、何カ月も、条件によっては1年近くも獲物を口にしない種もいます。

研究チームはそこで、「ヘビは本当に他の動物と同じようにグレリンを使っているのか」「そもそもグレリンの仕組み自体が違うのではないか」と考えました。

そこで彼らは、ヘビ、カメレオン、トカゲ(トゲオアガマ類を含む)、カメ、ワニなど、計112種の爬虫類のゲノム(全遺伝情報)を詳しく調べました。

注目したのは、グレリンそのものを作る遺伝子と、グレリンを「働ける形」に変えるための酵素MBOAT4の遺伝子です。

コンピュータ解析を使い、それぞれの種でこれらの遺伝子が、きちんと残っているのか、途中で壊れてしまっているのか、あるいは完全に失われているのかを比較していきました。

その結果、ヘビではグレリンの遺伝子が見つからないか、見つかっても断片的で機能していないことが分かりました。

さらに、グレリンを活性化させるMBOAT4も同じように失われていました。

同様の現象は、カメレオンやガマトカゲ属といった、待ち伏せ型であまり動かない生活をする爬虫類でも確認されました。

それでは、より詳しい点を次項で見ていきましょう。

空腹ホルモンの喪失は、ヘビの待ち伏せ戦略にぴったり

さらに詳しく解析すると、グレリン遺伝子の壊れ方は、ヘビのグループごとにかなり違うことが分かりました。

たとえば、ボアやニシキヘビでは、部分的に残った「壊れかけのグレリン遺伝子」が見つかりました。

一方で、クサリヘビやコブラの仲間では、もはや遺伝子の痕跡すらほとんど見つからない状態でした。

この点で研究チームは、ヘビにとって「空腹ホルモンを失ったほうが有利になる」と考えています。

哺乳類の場合、空腹になるとグレリンが増え、脂肪を燃やしながら積極的に食べ物を探す行動につながります。

一方で、多くのヘビやカメレオン、ガマトカゲ属は、「sit-and-wait(待ち伏せ型)」と呼ばれる狩り方をします。

自分から広く動き回るのではなく、1か所でじっとして、獲物が近くに来るのを待つスタイルです。

この生活スタイルでは、「お腹がすいたから動き回る」ことは、むしろエネルギーの無駄になります。

研究チームは、ヘビはグレリンとMBOAT4を失ったことで、空腹のときでもあまり「食べたい」という強い信号が出ず、代謝をできるだけ下げてエネルギーを温存することに役立ってきたと考えています。

そしてこれが、長いあいだほとんど動かずに過ごすという生活スタイルと結びついてきた可能性が高いというのです。

実際、ヘビでは長い断食のあとに巨大な獲物を飲み込むと、消化のために代謝が数日間大きく上がることが知られています。

つまりヘビたちは、断食中は「省エネモード」でじっとし、食後は一気に「フルパワーモード」で消化にエネルギーを集中させる、という極端なオン・オフの切り替えをしていると考えられます。

これは、グレリンを使ってこまめに食欲や脂肪の使い方を調整している哺乳類とは、かなり違ったやり方です。

今回の研究は、「グレリンがなくても生きていけるどころか、むしろその方が都合が良い生き方もある」ということを示しました。

今後は、グレリンを失った爬虫類たちが、ほかのホルモンや遺伝子ネットワークをどう使ってエネルギーを管理しているのかを調べることができます。

これにより、人間を含む他の動物における空腹や代謝の仕組みをより深く理解できる可能性があります。

参考文献

Some Snakes Can Go A Whole Year Without Eating. Now We Know How
https://www.iflscience.com/some-snakes-can-go-a-whole-year-without-eating-now-we-know-how-82493

元論文

Ghrelin and MBOAT4 are lost in Serpentes
https://doi.org/10.1098/rsob.250162

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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