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元宝塚月組トップ娘役・美園さくら、『エリザベート』新人公演は「心境が役柄とリンク」

  • 2026.2.4
美園さくら クランクイン! 写真:高野広美 width=
美園さくら クランクイン! 写真:高野広美

元宝塚歌劇団月組トップ娘役で、2021年の退団後は大学院に進学し現在も研究を続けるほか、2024年には『DEATH TAKES A HOLIDAY』で舞台活動も再開した美園さくら。まもなく開幕を迎える『エリザベートTAKARAZUKA30th スペシャル・ガラ・コンサート』では久しぶりに宝塚OGと共演を果たし、2018年に新人公演で務めたエリザベート役に再び挑む。

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◆『エリザベート』は年齢を重ねるごとに見方が変化していく作品

――今回のガラ・コンサートへの出演オファーを聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?

美園:ガラ・コンサートの存在は存じ上げていたんですけど、恥ずかしながら拝見したことがなかったんです。「コンサート」ということで、出演者が登場して1曲歌いあげ、次の方どうぞ!とどんどん出てきて最後に大団円というものを想像していたのですが、資料でいただいた映像を拝見したところ、「あら!? 全部やるの? セリフも言ってる!? えっ、早変わりもあるの? こ、こ、これはコンサートではないよね?」とパニックになっちゃって(笑)。しかもお集まりになられる皆さんがすごい方々ばかりで身が引き締まる思いがしました。「私みたいなのが出演させていただいていいの?」という驚きのほうが大きかったです。

――そもそも『エリザベート』という作品は、美園さんが宝塚歌劇団を志すきっかけになった作品だったとか。

美園:そうなんです。2007年の水夏希さんと白羽ゆりさんがご出演された雪組公演でした。その頃中学生で、周りから「受けてみたら?」と言われたりしていたのですが、「どうなんだろう…」とまだ宝塚を受験することにちょっと決心がつかず悩んでいた時期でした。でも『エリザベート』を実際に観たことで、上から目線みたいな言葉になっちゃうんですけど「受験してみてもいいかも」と思えて。私自身にとってすごく思い入れのある作品でもあります。

――その時は『エリザベート』のどこに一番惹かれましたか?

美園:やっぱり音楽や世界観が素晴らしいじゃないですか。登場人物それぞれというよりも、私が思ったのはやっぱりミュージカルとしての完成度の高さですよね。いろいろなバランスがよくて、そこが皆様に愛される所以なんだろうなと思います。

――では、シシィ(エリザベートの愛称)に憧れて、とかではないんですね。

美園:実は私、エリザベートに全然共感できなくて(笑)。中学生で観た時に、「なんてわがままなんだろう」「周りの人もこんな人に振り回されて大変だな」くらいにしか思わなくて。「エリザベート素敵!」とか、特定の登場人物に対して「すごくこの役良かった」みたいには正直ならなかったんです。ただやっぱり世界観とミュージカルとしての完成度の高さ、楽曲の素晴らしさといった総合点で心を鷲掴みにされたんですよね、その時は。

でも劇団に入ってみて、新人公演で思い入れの深い『エリザベート』という作品で、しかもエリザベートという役をさせていただくことになった時に、もう共感しかなくて!(笑) 『エリザベート』という作品は年齢を重ねていくごとに見方がどんどん変わっていくというか、魅力はたくさんあるんですけど気づくポイントが年を重ねるごとに変わっていくところが面白いなと思います。

◆緊張しかなかった『エリザベート』新人公演 当時の心境が役柄とリンク


――2018年の新人公演でシシィを演じられたときの印象はいかがでしたか?

美園:もう本当に大変でした。前任の愛希(れいか)さんがご退団される公演で、世の中に美園が次期トップ娘役ですと発表された公演だったんです。ある意味お披露目みたいなものというか。「次はこの人か」と注目されるであろう公演が『エリザベート』ということで、もうガチガチに緊張してしまって。今でもあの時の緊張感を覚えています。「パパみたいになりたい」という歌があるのですが、「本当にパパみたいになりたいのか?」っていうくらい表情が硬かったし、袖で周りの出演者の方にも「すごい緊張してるね」「大丈夫?」って言われちゃった思い出があります。

そんな状況でしたから、作品ときちんと向き合いながら舞台に立てていたのかどうかっていうのが自分の中でも少し疑問というか。その時の等身大の自分で舞台に立っていられたとは思うんですけど、今思えばもうちょっと「こうしたい」とかいろいろあったと思うので、そこを今回のガラ・コンサートで試せる機会をもう一度いただけたことがすごくうれしいですね。

――相手役を務められた暁千星さんのブルーレイで、新人公演をもう一度確認したいと思います(笑)。

美園:ものすごく緊張しながらも覚えているのが、『エリザベート』って早変わりの連続なんですよ。とにかく着替えが大変でした。本公演ではなく新人公演なので本番も1回ずつじゃないですか。1回1回がもう何が起こるかわからないみたいな感じですよね。本当に間に合うかヒヤヒヤしっぱなしでしたし、だから舞台にいたら「あ、間に合ったんだ。よかった」とホッとしていました。最初はガチガチだったものの、着替えを経てどんどん脱皮していって、最後にたどり着いた先が“死”みたいな感じでしたね(笑)。

――(笑)。

美園:でもそれがむしろ、その当時の私の気持ち的には、トップ娘役に決まっていろんな声がある中でも頑張って舞台に立つ自分、もがいている自分と妙にリンクする部分があって。等身大の自分でいられたのかなっていうところだけは評価してあげたい部分ではあったんですよね。

――それから7年が経って今回はどんな成長したエリザベートになりそうですか?

美園:そこが不安な部分でもあり、楽しみな部分でもあります。次のトップ娘役になるというタイミングで人生的にも結構大きいタームだとすると、いままた違う環境にいる中で『エリザベート』という役柄をリンクさせていくとどうなるのか。自分のその時の境遇や心境を借りずに、エリザベートっていう役をきちんと体現できるのかどうか。それが今回の課題かなと思います。きちんと台本を読み込み、スコアをきちんと見てどういう表現が求められているのかを見直して、役としてきちんとエリザベートと向き合いたいですね。

――今回「フルコスチューム‛16宙組スペシャルver.」へのご出演となります。トート役の真風涼帆さん、フランツ役の北翔海莉さんをはじめ、初共演のみなさんばかりですね。

美園:もうそれこそ緊張ですよ。どんな感じになるんでしょうね。

――同期の小桜ほのかさんがヴィンディッシュ嬢を演じられるということで、ファンとしてはお二人のご共演が楽しみです。

美園:小桜ほのかちゃんは現役真っ盛りで今もやっていて、しかもこのガラ・コンサートには毎公演出演しますよね。そんな中で、飛び入りのようにポッとくる私とのセッションがうまくいくのかどうか不安もありますが、毎公演務めている小桜ちゃんと同じくらいの熱量を自分も蓄えていきたいという意気込みでいます。

◆演劇の現場にいながら感じることを研究にも活かしたい


――退団されてから4年が経ちました。振り返るとどんな時間でしたか?

美園:あっという間でもあり、それなりにいろいろ変わった点もあるというか。大学院にも行って、今も研究員として大学に残っているんですけど、演技指導におけるコミュニケーションみたいなことを研究する中で、やっぱり現場にいないとわからない部分っていうのがあるんです。どうしても自分の記憶をたどるだけじゃなくて、渦中にいながらいろいろ思うことであったり、こういう実験をしてみようとアイデアが思いついたりするんですね。今回も『エリザベート』という、お客様から太鼓判を押されている作品の中で、自分がどういう風にこの役を昇華していくのかというのを考えながら、実験に活かすということではないですけど、いろいろなアイデアが浮かびそうで、それもちょっと楽しみです。

――2024年に『DEATH TAKES A HOLIDAY』で復帰されて、新しい発見や新鮮な部分はありましたか?

美園:やっぱり男性キャストがいらっしゃるというのはすごい違います。毎回毎回の座組が一期一会じゃないですか。みんなそれぞれプロフェッショナルで、その公演を頑張ってやるというスタンスがすごいなと思って。

今回のガラ・コンサートはまた少し違うというか、これまで『エリザベート』という作品に携わっていらっしゃる方々と共演するわけですから、それはそれでどんな化学反応があるのか楽しみですし、他では体感できないことじゃないですか。そういう意味でも、古巣に戻るじゃないですけどDNAがあるので、楽しみな部分ではあります。

――退団から4年が経ち、宝塚をご覧なられる時はどんな感じに目に映りますか。

美園:やっぱり職業病でどうしても、今こういう気持ちなんだろうなとか思ってしまって気持ちが忙しいですね。

――では、またファン目線に戻って楽しめるという感じでは…。

美園:それはまだちょっと難しくて。多分いろんなタイプの方がいらっしゃると思うんです。ファン時代の気持ちに戻れてエンタメとして楽しめるという方もいらっしゃるし。でも私はどうしても、まだ気持ちが若干忙しくなってしまうというか、純粋な楽しみ方とはまた少し違うかなって思いますね。

――研究もやられていてお忙しい日々かと思いますが、ほかに何かやってみたいことが湧き上がってきたりはしませんか?

美園:今はいろんなことにアグレッシブに挑戦したいという欲みたいなものがありますね。とりあえずジャンル関係なく新しいものを見たり、旅行に行くことも好きなので、空いている時間を利用していろんな国に行っていろんな文化を見たり、とにかく吸収しようというタームにいます。

――今回のガラ・コンサートでも新しい何かを見られることが楽しみですね。

美園:楽しみっていうか、怖いですよ(笑)。もちろんすごい楽しみではありますけど、多少なりとも試練がないと人間って成長しないので。この挑戦を成長につながる糧として受け止めて、とにかく観てくださるお客様に来てよかったと思っていただけるように一生懸命やりたいと思います。だって今、チケット代って高いじゃないですか!

――確かに(笑)。

美園:高いチケット代を払って来てよかったって思っていただけるものに絶対にしたいです。 “お値段以上ニトリ”の精神、私の使命はただそれだけです(笑)。

――では、最後にファンの皆様へメッセージをお願いします。

美園:今回宙組バージョンとして出演させていただくので、お客様は「誰やねん!」って多分なっていると思います。私としては、新人公演ではやっていないシーンもやるということで、初めて物語すべてを通せるんですね。そういう意味でも新しい美園さくらをご覧いただけると思います。今回、ちゃんとスコアもしっかりさらうし、歌唱の部分、お芝居的な部分もきちっと演出に則って取り組みたいという意気込みで臨みますので、美園さくらが歌や芝居に健闘する姿を、成長する過程を見守るような気持ちで温かく見守っていただけたらうれしいです。

(取材・文:田中ハルマ 写真:高野広美)

阪急阪神不動産presents『エリザベートTAKARAZUKA30th スペシャル・ガラ・コンサート』は、2月6日~2月20日東京・東京国際フォーラム ホールC、2月28日~3月15日大阪・梅田芸術劇場メインホール、3月23日~25日愛知・御園座にて上演。

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