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デビューから約12年で掴んだ“夢の切符” 今、最も話題『FRUITS ZIPPER・櫻井優衣』が放つ説得力と唯一無二のワケ

  • 2026.2.17

FRUITS ZIPPERの櫻井優衣がソロメジャー第二弾となる新曲「ぜんぶ可愛いのせい」を配信リリースした。

FRUITS ZIPPERとしては、代表曲「わたしの一番かわいいところ」が大きく広がって以降、2023年には『日本レコード大賞』(TBS系)で最優秀新人賞を受賞し、翌2024年も優秀作品賞を獲得。さらに2025年も優秀作品賞を受賞し、年末には『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たした。会場のスケールも段階を踏んで大きくなり、全国ホールツアーを経て、さいたまスーパーアリーナで結成3周年ライブ『FRUITS ZIPPER 3rd ANNIVERSARY 超超超めでたいライブ -さん-』を開催、今年2月1日には夢の舞台である東京ドームに立った。

その一方で櫻井は、グループの中心にいながらソロでも表現の幅を広げてきた。2月18日にはNHKホールでソロコンサート『STORY – A Journey into Yui's Dream –』を控えるなか、いまこのタイミングで、櫻井がソロでも惹きつける理由を改めて振り返りたい。

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「Beauty of the year 2026」のネイル部門を受賞したFRUITS ZIPPERの櫻井優衣 (C)SANKEI

かわいいを言葉として歌う、その現在地

メジャーデビューに先駆けて櫻井は、2023年10月から1年間限定で10周年記念プロジェクト「櫻井優衣 10th Anniversary -IDOL OF IDOLS-」を始動。東名阪でのソロツアー『櫻井優衣 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR 2024 〜CRUSH!!〜』、1st写真集『YUi』の発売など、グループ活動を並行してソロ活動も行ってきた。

10月2日にはZepp DiverCity(TOKYO)で『櫻井優衣 10th ANNIVERSARY LIVE 2024』が開催。この日のステージは、これまでの歩みを振り返る場であると同時に、次のフェーズを示す場でもあった。このステージで披露された「ずるい、かわゆい」「カーストサマーセッション」「You,You,You」の3曲は櫻井のために用意された楽曲だ。

「ずるい、かわゆい」は、櫻井のボーカルの安定感と高音域の強さが、最も素直に伝わる楽曲だ。全体として無理に声を張る場面は少なく、Aメロではリズムを丁寧に追いながら、言葉の語尾にだけ柔らかさを残していく。かわいいを前に出していながら、声が浮つかないのは、ピッチが常に中央に据えられているからだろう。サビに入ると音域は自然に上がっていくが、そこで声が細くならない。高音でも息が散らず、輪郭を保ったまま伸びていくため、かわいさが甘さに傾きすぎない。照れや迷いを含んだ歌詞を、過剰な感情表現で包むのではなく、安定した声でそのまま差し出す。その姿勢が、この曲に独特の説得力を与えている。

「カーストサマーセッション」は、櫻井の声が外へと開いていくタイプの楽曲。テンポの速い展開で会場の熱が一気に上がっていく中でも、歌が置き去りにならない。勢いに任せて走るのではなく、言葉ひとつひとつがきちんと耳に残る歌い方だ。盛り上がる曲ほど歌詞が流れてしまいがちだが、「カーストサマーセッション」では、明るさの中に落ち着きがあり、音も言葉もきれいに届く。そのバランス感覚に、ソロとしての確かな安定感が感じられる。一方で「You,You,You」では、強い身振りや表情で引き寄せるのではなく、少し力を抜いた声で言葉を置いていく。声量を抑えながらも響きが痩せないため、広い会場でも近い声として届く。櫻井のボーカリストとしてのセンスが堪能できる楽曲となっている。

3曲は方向性こそ違うが、櫻井の強みは一貫している。かわいいを記号にせず、言葉として歌に落とし込み、声で距離まで作ることだ。10周年で初披露した曲が、そのまま「ずるい、かわゆい」のリリースへつながったのも示唆的である。

櫻井優衣のソロアーティストとしての説得力

2025年9月には「キミのことが好きなわたしが好き」でソロメジャーデビューを果たした。恋をきっかけに、自分のことも好きになっていくというまっすぐなラブソングで、MVでは一人二役に挑戦。AIをモチーフに、初めての気持ちに戸惑う女の子がスマホのAIに問いかけながら、自分をアップデートしていくストーリーが描かれている。櫻井の声は、飾らずとも芯がある。迷いを残した言葉をそのまま歌に置いても、曲の重心がぶれないのはそのためだ。Aメロは会話の温度で進み、語尾の処理だけで感情の揺れを付け足していく。サビで音域が上がっても声が細くならず、響きの密度が落ちない。無理にドラマを作らず、日常の高さのまま気持ちの上げ下げを描けるところに、櫻井らしさが出ている。

そして、2月6日にリリースされた「ぜんぶ可愛いのせい」は、ファッションや美容のときめきに背中を押されながら、日々のあれこれもまとめて肯定していく曲だ。現実のモヤモヤまで、タイトル通り「ぜんぶ可愛いのせい」に言い換えて前へ進む。言葉は強いのに、歌が強がりに聞こえないのは、櫻井の声に余計な力が入らないからだ。落ち込む日や決めきれない時間を無理に塗り替えず、一度受け止めたうえで気持ちの向きを整えていく。そのプロセスが声の安定感で支えられているから、明るさが軽くならない。

どちらも声を作って印象を変えるのではなく、同じ声のまま言葉の温度だけを変えていけるのが櫻井らしい。かわいさも飾りではなく、歌詞の言葉としてまっすぐ届く。だから2曲続けて聴くと、櫻井のソロの良さがいっそう際立つ。

NHKホールで広がる、ソロ活動の次章

櫻井が惹きつけるのは、アイドルとしての華やかさで空気を動かしながら、最後は歌で聴き手を納得させるところだ。かわいさは入口になる。だが、聴き終わったあとに残るのは歌の説得力だ。そこまで含めて成立するのが、櫻井の唯一無二さになっている。

2月18日に控えるNHKホールでのソロコンサートは、その現在地をあらためて確かめる場になるはずだ。広い空間の中で、声の距離やニュアンスをどう届けてくるのか。アイドルとしての華やかさと、アーティストとして積み上げてきたクオリティが、どんな形で交わるのか。そのステージが、櫻井優衣という表現者の次の一歩を示してくれることを期待したい。


※記事は執筆時点の情報です

ライター:川崎龍也
大学卒業後にフリーランスとして独立。現在はアイドル雑誌を中心に、取材・インタビュー/コラム執筆を主軸に活動している。主な執筆媒体は『BOMB』『MARQUEE』『EX大衆』『音楽ナタリー』『RealSound』など。
X(旧Twitter):@ryuya_s04