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いま見に行ける、巨匠建築家が手掛けた韓国・ソウルの名建築

  • 2026.1.27
TongRo/AFLO

景福宮や宗廟など歴史ある建築が街の中心で威厳を放つ一方、海外から巨匠建築家を招き、都市のエネルギーを感じさせるダイナミックな現代建築がいくつも誕生している韓国・ソウル。ザハ・ハディド設計の「DDP(東大門デザインプラザ)」、3人の巨匠建築家が手掛けた3つの棟を持つ「リウム美術館」、フランク・ゲーリー設計の「ルイ・ヴィトン メゾン ソウル」など、必見の名建築を紹介しよう。

TongRo/AFLO

DDP(東大門デザインプラザ)/東大門

銀色の宇宙船のような姿によって、ソウルに訪れる人々を惹きつけてきた「DDP(東大門デザインプラザ)」。ザハ・ハディドが設計し、2014年にオープンした、デザインとファッションを発信する複合文化施設だ。

場所はファッションビルや服飾の卸売市場で活気あふれる東大門エリア。野球場とサッカー競技場が並び市民に親しまれてきた東大門運動場を撤去し、2009年に東大門歴史文化公園が開園、「DDP」はその区画の西側いっぱいになだらかに広がっている、世界最大規模の3次元非定型建築だ。

VIEW/Superstock/AFLO

地下3階、地上4階、延床面積85,320㎡。床から壁や天井へと、途切れることなく曲面が続いていく。竣工時の記者会見でザハ・ハディドは「公園と建物を調和させ、水が流れるような線を描きたかった。建築物と自然の境界を崩し、一つの風景にしたかった」と語った。

全プロセスに当時、最先端の設計技法BIM(Building Information Modeling)を導入。ダイナミックな曲面、柱の見えない大空間を実現するためにスペースフレームと、橋梁などに用いるメガトラスを採用。外装の45,133枚のアルミニウムパネルは一つとして同じものがなく、建造を担ったサムスン物産は船舶、飛行機、自動車などさまざまな金属加工技術を徹底研究して完成させた。

TongRo/AFLO

「建物が地形の一部になったことが『DDP』の特徴」とザハ・ハディドが述べた通り、隆起する土地を歩いているような楽しさがある「DDP」。特徴あるスペースを生かし、展覧会やファッションショー、カンファレンスなど各種イベントが連日開催され、賑わっている。


DDP(東大門デザインプラザ)

DDP (Dongdaemun Design Plaza)
DDP 동대문디자인플라자

ソウル特別市中区乙支路281
서울특별시 중구 을지로 281

Universal History Archive / Getty Images

パークワン(Parc.1)、ザ・現代ソウル/汝矣島

政治・金融の街、汝矣島(ヨイド)に2021年に誕生した複合施設「パークワン(Parc.1)」。「現代百貨店」の最大規模の店舗「ザ・現代ソウル(ザ・ヒュンダイソウル)」、2棟のオフィスタワー、ホテル「フェアモント・アンバサダー・ソウル」で構成され、敷地面積46,465㎡という大規模プロジェクト。設計はリチャード・ロジャース。韓国の伝統建築に見られる赤い柱にインスピレーションを得た建築デザインで、漢江の対岸から見ても赤で彩られた構造が、高さ318mと246mの2つのタワーを際立たせており、ソウルの高層建築が描くスカイラインに鮮やかさを添えた。

Lee Jae-Won/AFLO

特に話題となったのが、2つのタワーとホテルの間に位置する「ザ・現代ソウル」。外観は力強くシャープな印象で、こちらも鮮烈な赤が躍動感を与えている。

店内は白い壁と曲線が多用され、明るく開放的なスペースが広がっている。内部空間を担ったレオナードデザインアーキテクトはダイナミックな吹き抜けによって、自然光あふれる空間をつくり出した。

TongRo/AFLO


延床面積89,100㎡のうち、およそ10,000㎡を屋内庭園に。店内の一部の店舗デザインを手掛けたカナダの設計事務所バーディフィレクは、パブリックスペースの高さ12mの滝もデザイン。百貨店のイメージを刷新し、汝矣島というビジネス街にショッピングや観光を楽しむ層を呼び込むことに成功した。


パークワン
Parc.1
파크원

ザ・現代ソウル
The Hyundai Seoul

더현대 서울

ソウル特別市永登浦区 汝矣大路 108
서울특별시 영등포구 여의대로 108


Courtesy of Amorepacific Museum of Art, Photo by Kyung Roh

アモーレパシフィック美術館/龍山

龍山駅からすぐ、いくつもの繊細なラインが建物を取り囲む美しいビルが韓国の大手化粧品メーカー、「アモーレパシフィック」の本社。この建物の1階と地階に同社創業者、ソ・ソンファンのコレクションをベースに設立され古美術と現代美術の展示・収集を行う「アモーレパシフィック美術館」がある。

設計はデヴィッド・チッパーフィールド。静謐な美しさを持ち、快い豊かさを感じさせる、「満月壺(タルハンアリ)」と呼ばれる丸みを帯びた白磁壺からインスピレーションを得て、この建築デザインが考えられた。建物が半透明のルーバーで覆われ、巨大なビルだが軽やかさがある。

Mark Bradford: Keep Walking © Mark Bradford. Courtesy of the artist and Amorepacific Museum of Art. Photo: Kyoungtae Kim.

建物に大きな四角い空間が取られ、庭園が設けられているのも特徴。ここはオフィス部分のため一般に公開されていないが、美術館のエントランスやカフェがある1階から広々としたアトリウムを体感できる。

美術館の展示スペースは地下にあるが、広大な空間で、現代アートのさまざまな展示に対応。見ごたえのある大型インスタレーションを可能とし、好評だ。


アモーレパシフィック美術館
Amorepacific Museum of Art
아모레퍼시픽미술관

ソウル特別市龍山区漢江大路100
서울특별시 용산구 한강대로 100

Photo: ⓒ Yongkwan Kim Courtesy of Leeum Museum of Art

リウム美術館/漢南

マリオ・ボッタ、ジャン・ヌーヴェル、レム・コールハースという、3人の巨匠建築家がそれぞれ手掛けた3つの建物を持つことで有名な「リウム美術館」。サムスン文化財団による美術館で2004年に開館した。

赤茶色のレンガの「M1」(写真左)と呼ばれる建物がマリオ・ボッタの設計でロビーと韓国の古美術の常設展示室がある。中央に円筒形の吹き抜けを持ちその周りのらせん階段から各展示室がつながる構成だ。

その右手のスチールが印象的な建物が「M2」でジャン・ヌーヴェルの設計、ガラスとスチールが特徴的な建物でキューブ状の空間がはめ込まれ、複雑な展示空間を持つ。現代アートのコレクション展示や企画展が行われる。

Photo: Jeon Byung-cheol (Installation view of “Lee Bul: From 1998 to Now”) Courtesy of Leeum Museum of Art

美術館エントランスから向かって左に位置する棟が、レム・コールハースが設計した「児童教育文化センター」で子ども向けのプログラムと企画展のスペース。外観は控えめに見えるが、入り口からのなだらかに下るスロープの右手にある「ブラックボックス」と名付けられた黒い展示室がインパクトを放つ。さらに下に広大な展示スペースがあり展覧会ごとに考えが練られた会場構成によって、作品体験を豊かなものにしている。写真は『イ・ブル:1998年から現在まで』(会期:2025年9月4日~2026年1月4日)の展示風景、「児童教育文化センター」に入ってすぐのスロープの空間にも作品が大胆に展示されていた。


Photo: YUI IDE Courtesy of Leeum Museum of Art

絵画や青磁など歴史的に重要な韓国美術が常設展示されている「M1」は、マリオ・ボッタによる自然光が天窓から降り注ぐらせん階段が美しいことでも有名。また上階の展示室から最後にロビーへ降りる階段には、オラファー・エリアソンの作品『重力の階段』がある。LED照明と鏡によって太陽系が表現された作品を、歩いて体感できるうれしい階段だ。

リウム美術館
Leeum Museum of Art
리움미술관

ソウル特別市龍山区梨泰院路55キル 60-16
서울특별시 용산구 이태원로55길 60-16

©SONGEUN Art and Cultural Foundation and the Artist. All rights reserved. Photo: ⓒIwan Baan

ソンウン/清潭洞

ヘルツォーク&ド・ムーロンが設計した「STソンウンビル」。江南の大通り沿いに立つ、鋭い三角の形が印象的なこの建物の1・2階と地下階に、エネルギー企業の現・STインターナショナルの創設者ユ・ソンヨンが1989年に設立し、韓国の若手アーティストを支援してきたソンウン文化財団の複合文化スペース「ソンウン(SONGEUN)」がある。上層はSTインターナショナルの社屋だ。

©SONGEUN Art and Cultural Foundation and the Artist. All rights reserved. Photo: ⓒJihyun Jung

ヘルツォーク&ド・ムーロンは彫刻的なフォルムを意図して設計。大通りに面するファサードを高く、その反対の庭を持つ側を低くし、周辺環境となじませた。また財団創設者ユ・ソンヨンの雅号「ソンウン(松隠)」(隠れている松の意味)にちなみ、外壁に樹木の木目をプリントしたコンクリートを使用している。

©SONGEUN Art and Cultural Foundation and the Artist. All rights reserved. Photo: ⓒJihyun Jung

「ソンウン」ではソンウン美術大賞展のほか海外の現代アートの企画展などを開催。自然光の入る1階ロビーと、地下のダークな展示室の大きく雰囲気の異なる空間を、地下から1階までの大きな円筒形の吹き抜けが貫き、建物の彫刻のような強さが内部空間からも感じられる。

ソンウン
SONGEUN
송은

ソウル特別市江南区島山大路441
서울특별시 강남구 도산대로 441

Ⓒ LOUIS VUITTON

ルイ・ヴィトン メゾン ソウル/清潭洞

フランク・ゲーリーが設計したソウルのフラッグシップ、「ルイ・ヴィトン メゾン ソウル」は2019年にオープン。同じくゲーリーが手掛けたパリのアート施設、「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」のガラスの帆を持つ船のようなデザインとも通ずる躍動感がある建築だ。白い箱形の建物の上に、透明な雲のような波のような形をのせた構成で、18世紀の韓国の伝統建築からインスピレーションを受けて構想された。店のインテリアはピーター・マリノによる。

Ⓒ LOUIS VUITTON

レディス、メンズのファッションはもちろん、2025年9月に最上階の4階に「ル・カフェ・ルイ・ヴィトン」がオープン。アイコニックなガラスのファサードのすぐ真下のテーブルもあり、ゲーリーのダイナミックな建築を、室内からも体感できるのでおススメだ。

Ⓒ LOUIS VUITTON

シェフのアンソニー・ユンがメンターである三ツ星シェフのアルノー・ドンケルとパティシエのマキシム・フレデリックとのコラボレーションによるメニューを提供している。

ルイ・ヴィトン メゾン ソウル

Louis Vuitton Maison Seoul
루이 비통 메종 서울

ソウル特別市江南区狎鴎亭路454
서울특별시 강남구 압구정로454

©DOLCE&GABBANA

ドルチェ&ガッバーナ ソウル チョンダムドン/清潭洞

2021年にオープンした「ドルチェ&ガッバーナ」のソウル旗艦店は、建築をアトリエ・ジャン・ヌーヴェル、インテリアをジャン・ヌーヴェル デザインが担当。4つの黒御影石の直方体に囲まれるようにして、中央に円柱形の建物がある。1階からスロープと階段によってらせん状に上階へ続き、その終着点はルーフトップへ。らせん状にシームレスにつながる床はリボンのようにラインを描き、ファサードのデザインの一部に。

©DOLCE&GABBANA

店内は、スロープのネロマルキーナ大理石に始まり、光沢感のあるガラスの黒、温かみあるマンゴーウッドなどが選ばれ、洗練されたマテリアルの調和によってエレガンスが醸し出されている。建物のコーナーにあたる外装が黒御影石の部分の内側にはディスプレイスペースや試着エリアが設けられた。

©DOLCE&GABBANA

2つの面のファサードがガラス張りで、通りからもブティックに並ぶ多彩なコレクションを目にすることができる。夕方から、ライティングによってガラスがよりきらめき、華やかさを増すさまも見逃せない。


ドルチェ&ガッバーナ ソウル チョンダムドン

Dolce&Gabbana Seoul Cheongdam-dong
Dolce&Gabbana 서울 청담동

ソウル特別市江南区狎鴎亭路414
서울특별시 강남구 압구정로414

photo by BaeJihun, LG Arts Center

LGアートセンター ソウル/麻谷

韓国のLGエレクトロニクスを中心とするLGグループが支援し、LGヨナム(蓮庵)文化財団が運営する劇場。以前は江南エリアにあったが、2022年に金浦空港に近い、麻谷(マゴク)エリアのソウル植物園の一角に移転オープンした。設計は安藤忠雄だ。

photo by BaeJihun, LG Arts Center

「チューブ(TUBE)」「ステップ・アトリウム(STEP ATRIUM)」「ゲート・アーク(GATE ARC)」という3つの大きな特徴を持つ。「チューブ」は、建物を貫く高さ約10m、長さ約80mの通路で、この「チューブ」を挟んで東側にLGアートセンター ソウルの劇場施設があり、西側に若者向けAI教育機関のLGディスカバリーラボが入っている。

photo by BaeJihun, LG Arts Center

「ステップ・アトリウム」は麻谷ナル駅からLGアートセンター ソウルの3階までをつなぐ、階段で構成された空間。「ゲート・アーク」はロビーで観客が目にする曲線を描くコンクリート壁で躍動感を与えている。

多様な文化と人々、敷地であるソウル植物園の自然の共存を示す文化的なランドマークだ。

LGアートセンター ソウル
LG Arts Center SEOUL
LG 아트센터 서울

ソウル特別市江西区麻谷中央路 136
서울특별시강서구 마곡중앙로 136

Arcaid Images/AFLO

ソウル大学美術館/冠岳

ソウル大学の正門近くに立つ美術館。設計はレム・コールハース。大学の開校50周年を記念して企画された美術館で、サムソン文化財団の支援を得て建設され、2005年に開館した。

建物の下のスペースが広く取られており、大学キャンパスと美術館が開放的につながっている。

Arcaid Images/AFLO

敷地の地形を生かし、直方体のボックスが地面の傾斜に沿って斜めに切り取られたような形態が構想された。外装材に半透明のUガラスを使用し、鉄骨のトラス構造を見せている。地面の上に浮遊しているかのようだ。

Arcaid Images/AFLO

韓国の近代・現代美術を900点以上所蔵し、展示のほか子ども向けワークショップ等も行っている。広くさまざまな人々に向けて、開かれた美術館だ。


ソウル大学美術館
Seoul National University Museum of Art
서울대학교미술관

ソウル特別市冠岳区冠岳路1
서울특별시 관악구 관악로 1

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