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テーマは“ブラックホール”。コム デ ギャルソン・オム プリュスが暗闇から放つ、眩い光【2026-27年秋冬 メンズコレクション】

  • 2026.1.26

ショーの帰り際、私は同僚に川久保玲が今回のコム デ ギャルソン・オム プリュスCOMME des GARÇONS HOMME PLUS)のコレクションに「BLACK HOLE」というタイトルを付けたことを話した。同僚の彼女は、こう返してきた。

「イギリスの宇宙学者と物理学者のチームが最近、宇宙の起源に関する新たな理論を提唱したって知ってた? ビッグバン宇宙論とは違って、『宇宙はひとつの特異点』からではなく『巨大なブラックホール』から生じたと仮定していて、つまり、ほかのブラックホールの中に、隣接する宇宙が存在するかもしれないって考えられている。そして、この理論は私たちの宇宙が謎の『無』から生まれたのではなく、現在進行形のサイクルにおける直近の出来事に過ぎない、と示唆しているってこと」

2週間ひたすらファッションショーを観てきた私にとってはあまりにSF色の強い話で、ついていけなかった。しかし、彼女の言う「現在進行形のサイクル」という言葉はしっくりきた。川久保の世界が何に由来しているのかは謎だ。1975年に初のショーを開催して以来、そのミステリアスな原点に忠実であり続けながら、ダークで独特な世界観を展開してきた彼女は今季、原点に回帰しつつ、その世界観をさらに進化させた。

モデルたちは髪があらゆる方向に乱れたウィッグと、ハンニバル・レクターを彷彿とさせるホッケーマスクを着用。軌道に乗る人工衛星のような魅惑的なルックに身を包まれていた。ひと目見ただけで従来のテーラリング技術を駆使したデザインだとはわかるが、カットや装飾の独創性が増している。クラッシュベルベットや光沢感のあるナイロンウール製の黒いテイルコートには、襟にシャーリングが入れられており、テイル部分が細長く切られているものもあった。

グレーチェックのファスナー付きダンガリーの裾は細くすぼまり、上から羽織られたジャケットは、腰回りの切り替え部分がねじれ、裏地と内ポケットの構造があらわになっている。そしてアッパーが切り離されたシューズには、何かの文字が。「My energy comes from freedom(自由が私のエネルギー源)」──コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)が今も掲げているこのモットーから派生したメッセージが、迫力のある白字で書かれていた。

折り込まれたクロップド丈のジャケット、躍動する無秩序なフリル装飾。重力や時空を意のままに操ったかのようなデザインが続く。ラペルがふたつ付いた二層構造のジャカードジャケットは、見たところルレックス生地で作られているようで、パイソン柄が脱皮する蛇を思わせる。セットのボトムは裾が斜めにカットされており、1着のバックオープンジャケットは、カットアウト部分がレースで覆われていた。

時折グレーをアクセントに用いた黒中心のルックがぞろぞろと続いたかと思うと、突如、真っ白なルックがランウェイを占め始めた。予期せぬコントラストでショーに幕を下ろした川久保は、やはり自由で、未知のエネルギーにあふれている。

※コム デ ギャルソン・オム プリュス 2026-27年秋冬メンズコレクションをすべて見る。

Text: Luke Leitch Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.COM

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