「A型なのに、部屋汚ねぇな」と嫌味を言う彼。だが、私の一言をうけ黙り込んだ理由とは【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

「うわ、Ａ型なのに、部屋汚ねぇな。普通もっと几帳面だろ？」

ソファに寝転びながら、彼はスマホ片手に鼻で笑いました。その視線の先には、仕事が忙しくて少し散らかった雑誌や、出しっぱなしのアイロン台。

私は彼のコーヒーを淹れながら、奥歯を噛み締めました。

彼は何でも血液型で判断するタイプでした。付き合い始めた頃は「Ａ型だからしっかりしてるね」と褒めてくれましたが、最近は何かにつけて「Ａ型なのに」と嫌味を言うようになったのです。

「Ａ型なら、こういうのもピシッと並べなきゃ落ち着かないんじゃないの？」

彼はテーブルの上のリモコンをわざと斜めに置き、馬鹿にしたように笑い続けました。

私の我慢は、その瞬間に限界を迎えました。ゆっくりとコーヒーカップをテーブルに置き、私は冷めた目をして彼を真っ直ぐに見つめました。

「あのね、私、Ａ型だからこそ決めたことがあるの」

私の静かな声に、彼は少しだけ体を起こしました。「なんだよ、急に」と、まだ余裕そうな表情です。私はにっこりと微笑んで、こう言い放ちました。

「Ａ型って、一度『不要』だと判断したものは、徹底的に排除して整理しないと気が済まないの。……だから、まずは目の前にある一番大きな『粗大ゴミ』から処分することにしたわ」

「は？ゴミって……」

「あなたよ。今すぐその荷物を持って、私の部屋から出て行って」

彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして固まりました。まさか、いつも大人しい私がこんなことを言うとは思わなかったのでしょう。言い返そうと口を動かしましたが、私の冷徹な眼差しに気圧されたのか、そのまま黙り込んでしまいました。

彼は慌てて荷物をまとめると、逃げるように部屋を去っていきました。

静かになった部屋で、私は深呼吸をしました。彼がいなくなった空間は、どんなに散らかっていても、さっきまでよりずっと綺麗に見えました。

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