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放送から17年、NHKが生んだ『至高作』…今なお「完成度が高すぎる」「間違いなく神アニメ」止まない称賛

  • 2026.1.21

NHKのアニメには、不思議な余白があります。派手に泣かせたり笑わせたりしないのに、観終わったあとに少しだけ世界の見方が変わっているのです。今回は、そんな中から“NHKの隠れた傑作アニメ”を5本セレクトしました。

本記事ではその第5弾として、アニメ『獣の奏者エリン』(NHK教育テレビ)をご紹介します。教育テレビ放送開始50周年記念番組として制作され、約1年間にわたって放送された大河ファンタジー大作です。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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GoogleGeminiにて作成(イメージ)
  • 作品名(放送局):アニメ『獣の奏者エリン』(NHK教育テレビ 現在のNHK Eテレ)
  • 放送期間:2009年1月10日~2009年12月26日

けっして人と心が通じないと思われていた崇高な獣である“王獣”を操ることができる、類まれな才能を持ちあわせた少女・エリン(CV:星井七瀬)。彼女はその才能を持つゆえに、王国の勢力争いに巻き込まれ、波乱万丈の人生を送ることになるのでした……。

NHK作品らしいていねいな演出

『獣の奏者エリン』の舞台は、王獣と闘蛇という2つの獣が政治と強く結びついた世界です。エリンは獣を育てる家系に生まれながら、母との別れという大きな喪失を経て、世界の理不尽と向き合うことになります。

“命を扱う責任”を真正面から描いている点が、本作の見どころ。獣を従わせるための技術は便利である一方で、命の尊厳を脅かすものでもあります。エリンはそれを安易に受け入れず、自分の目で確かめて、自分の言葉で見つめ直していくのです。

また、NHK作品らしいていねいな演出も魅力です。派手なバトルに頼らず、自然の描写や間を活かした演出で、世界の奥行きや時間の流れを感じさせます。音楽も穏やかで、感情を過度に煽らないからこそ、エリンの選択がより切実に伝わってきます。子どもから大人へと変わっていく過程で、人は何を知り、何を失い、何を守ろうとするのか。本作は、そんな問いをやさしく、しかし逃げずに描いた作品となっています。

浜名孝行監督が目指した絵の“リアルさ”と“ぬくもり”

本作は、上橋菜穂子さんによる小説『獣の奏者』を原作としており、シリーズ累計部数は340万部を突破。単行本から始まり、文庫化やマンガ化、青い鳥文庫化もされています。上橋さんはほかにも『精霊の守り人』や『鹿の王』なども手がけているため、書店で彼女の作品たちを見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。

『精霊の守り人』も、2007年4月7日よりNHKにてアニメ化されています。ファンタジーでありながら現実と地続きの問いを描いた上橋さんの作品は、NHKと相性が良いと言えるでしょう。加えて『獣の奏者エリン』は、教育テレビ放送開始50周年記念番組として制作されています。本作についてSNSでは「今観てもこれは名作と言える」「完成度が高すぎる」「間違いなく神アニメ」との声があがり、その称賛は今なお続いています。

アニメ・声優系の総合情報サイト“アニメイトタイムズ”によるインタビューにて、浜名孝行監督は『獣の奏者エリン』の映像について以下のようにコメントしています。

子供番組としてファンタジー世界をちゃんと作りたかったので、原作にはすごくリアルな描写などもあるんですが、アニメの絵の雰囲気なども含めて、心情としてはリアルなんですが、絵はことさら緻密にしようとは思いませんでした。
出典:『09年最大級の大河TVアニメ『獣の奏者 エリン』エンディング&挿入歌を歌うcossami(コッサミ)の2人が浜名孝行監督と対談!』アニメイトタイムズ 2009年2月23日

イメージボードの担当者に、世界観のイメージを100枚ほど書いてもらったとのこと。それがたたきになり、あまり書き込まずリアルさとほのぼのとした雰囲気の両方を兼ね備えた映像を目指したそうです。このような浜名監督のこだわりが、『獣の奏者エリン』のキャラクターや美術のタッチを生み出したと言えるでしょう。

本作は、声高に答えをさしだしてくれるような作品ではありません。むしろ観る側に「あなたならどうする?」と、そっと語りかけてきます。エリンの選択は、いつも不器用で遠回り。だからこそリアリティがあり、私たちの日常とも確かにつながっているのです。アニメ『獣の奏者エリン』は、時間が経ってからふと思い出し、胸がじんわりとあたたかくなるような傑作です。


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari