「結婚指輪失くした」と謝る夫。しかし、近所の質屋で見覚えのある指輪が…夫を問い詰めた結果【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

「本当にごめん。仕事中に手を洗おうとして外して、結婚指輪失くした」

ある夜、夫は消え入るような声で私に謝罪しました。左手の薬指には、確かにあったはずのプラチナの輝きが消えていました。

ショックでしたが、必死に自分を納得させました。形あるものはいつか失くなることもある。何より、夫がこれほど肩を落として落ち込んでいるのだから、責めるのは酷だと思ったのです。

「いいよ、わざとじゃないんだから。またいつか、二人で新しいのを買おう」

私の言葉に、夫は「優しいね、ありがとう」と何度も口にしました。

それから数日間、夫は罪滅ぼしのつもりか、家事を積極的に手伝ったり好物のスイーツを買ってきたりと、妙に甲斐甲斐しく振る舞っていました。

しかし、真実は意外な場所で私を待っていたのです。

週末、買い物帰りに通りがかった駅前の小さな質屋。そのショーケースの隅に、見覚えのあるデザインの指輪が置かれていました。

店員さんに見せてもらうと、指輪の内側には私たちの結婚記念日と、二人のイニシャルが刻印されていたのです。私は震える手でその指輪を買い戻し、真っ直ぐ家へ帰りました。

夕食時、私はわざと明るく切り出しました。

「そういえば、指輪は見つかりそう？」

夫は一瞬、箸を止めて「いや、探してるんだけど、ダメかもしれない」と、平然と嘘をつきました。

私は無言で、あの指輪をテーブルに置きました。

「これ、近所の質屋で見つけたんだけど。どういうこと？」

夫の顔から一気に血の気が引きました。問い詰めた結果、夫はスマホゲームの課金代が払えなくなり、指輪を売ってお金に換えていたのです。

「すぐに買い戻すつもりだった！」と縋り付く夫に、私は冷たく告げました。

「この指輪は私が買い戻したから、私のもの。その代わり、あなたが大事にしていたあの高級ゴルフクラブを売ってお金に換えてきたわ。これで買い戻し代は相殺ね」

夫が絶叫するのを無視して、私は指輪を眺めました。裏切りの証拠となったこの指輪は、自分へのご褒美ネックレスに作り替えるつもりです。嘘つきな夫に、もうはめる資格はありませんから。

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