「トイレ休憩長すぎだ！」とストップウォッチで計る係長。だが、私の反論で態度が一変した話【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

「4分32秒。君、トイレ休憩長すぎだ！」

デスクに戻った私を待っていたのは、勝ち誇った顔でストップウォッチを突きつける係長でした。最近の私の職場では、異常な時間管理が行われていました。その中心にいるのが、この係長です。

係長は部下が席を立つたびに時計を動かし、行動をチェックします。特にトイレ休憩には厳しく、少しでも長引けば「給料泥棒」と言わんばかりの説教が始まるのです。

「すみません、少し体調が……」

「言い訳はいらない。君の離席でどれだけ作業が遅れたか自覚したまえ」

静まり返ったオフィスに怒鳴り声が響きます。同僚たちは目を伏せ、関わりを避けるようにキーボードを叩いていました。しかし、私の我慢は限界でした。

私は深呼吸をして、あらかじめ用意していた手帳を開きました。

「係長、効率についてお話しがあります」

私は淡々とした口調で、手帳の記録を読み上げました。

そこには、係長が「打ち合わせ」と称して給湯室で雑談していた時間、1日に何度も繰り返される長い喫煙休憩、さらには私用の電話をしていた時刻が、秒単位で完璧にリストアップされていました。

「係長が本日、業務以外に費やした時間は計2時間14分です。私の4分間のトイレを問題にされるのであれば、この膨大な『空白の時間』についても、次回の部会で上席へ効率化の提案として報告させていただきます」

一瞬で、係長の顔から血の気が引きました。まさか部下に、自分と同じ方法で監視されているとは思ってもみなかったのでしょう。ストップウォッチを握る彼の手が、微かに震えています。

「そ、それは……だな……」

「トイレという生理現象まで監視することが上司の正しい管理だと言い張るのなら、公平性のためにこの記録を役員に提出します。どうされますか？」

係長は何も言い返せず、逃げるように自分の席へ戻っていきました。それ以来、職場でストップウォッチが使われることは二度とありませんでした。

本当の効率とは人を縛ることではなく、信頼して任せることで生まれるものなのだと、改めて実感した出来事でした。

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