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【天空のお茶会体験!】冒険気分でお茶文化の原点を知る製茶工場「志田島園」|奥静岡

  • 2025.12.23

桜エビやプラモデルなどで有名な静岡県は、言わずと知れたお茶処。お茶スイーツも豊富に展開していますが、その原点は何と言っても「お茶」そのもの。今回、静岡市の奥地、通称“オクシズ”にある「志田島園」を訪問。絶景を眺めながら“茶畑見学やお茶体験”が楽しめるスポットを紹介します!

“製茶工場”日本一の静岡県

(画像:静岡県静岡市「雅正庵 千代田本店」アフタヌーンティープレミアム雅)

静岡茶やお茶の土産菓子で知名度が高い静岡県ですが、実は、製茶工場数は日本一。製茶工場の多くを占める個人工場が、技術と伝統を守り続けています。

(画像:駿府城公園内「紅葉山庭園茶室」点茶体験イベントの様子)

近年は急須離れが進む一方で、海外では抹茶の需要が急増中。国内では抹茶スイーツは依然人気で、茶の湯文化に興味を抱く人達も増えてきました。

今回は、そんな日本のお茶文化を支えている製茶工場のひとつ「志田島園」へ行ってきました!

江戸時代から続く茶農家「志田島園」

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静岡駅から車で約45分、静岡市葵区玉川地区にある「志田島園」。安倍川と山々に囲まれた標高300〜400mの山間部にて、江戸時代から続いている茶農家です。築200年の古民家の縁側は趣深く、訪れる人をタイムスリップした気分へと誘います。

昼夜の寒暖差が大きいこの土地は茶の栽培に適していて、志田島園では栽培から加工・製造までを一貫して行う「自園自製」を守り続けています。

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現在は16代目の園主・佐藤誠洋(さとうまさひろ)さんがその伝統を継承。日本国内で約70%、静岡県では約90%を占める代表的品種「やぶきた」をはじめ、8品種を栽培されています。

2024年には80人の協力を得て20年ぶりに手摘み茶に挑戦し、そこで誕生した「手摘みやぶきた『玉川 て・て・て』」が、JA静岡市主催「第31回本山茶品評会」で優等を受賞しています。志田島園は品評会でも高い評価を得ており、静岡茶の期待の存在となっています。

こちらでは、7月上旬〜4月上旬までは「茶畑・わさび田&縁側カフェ」の体験(予約制)ができます。

「お茶3種の飲み比べ、茶畑・製茶工場の見学、買い物」など盛りだくさん。オプション(別途有料)で「わさびの収穫体験」や、時期によって「お茶摘み体験」もOK!

体験プログラム 「茶畑・わさび田&縁側カフェ」

開催時期:7月上旬〜4月上旬

定員:1~5名

体験料(税込):1人6,000円 (1名のみの場合は10,000円)

所要時間:90分~120分

服装:長袖、長ズボン、歩きやすい靴、サンダル不可(日焼け対策を推奨)

*別途有料で「わさびの収穫体験」「(時期により)お茶摘み体験」も可能(要相談)

<予約制(3日前までの受付)>

TEL(受付時間18時~21時):090-5104-2514

メールアドレス:yamaichi.masa@gmail.com

*キャンセルは前日の12時まで、それ以降はキャンセル料あり。

茶畑の絶景

園主の佐藤さんからお茶や田舎暮らしの話を伺いながら茶畑を歩き、少し先にある山頂のテラス席を目指します!

山の形をそのまま生かした傾斜には茶畑が波のように連なっていて緑一色の圧巻の景観!

佐藤さんはお話しながら軽々と歩いて行きますが、慣れない筆者にとっては一歩一歩がスリル満点! 足を踏み外したら転がってしまいそうで、ドキドキしながら後に続きました。

振り返るとこの絶景!

目の前を遮るものはなく、雄大な山と茶畑が広がっています。澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込むと体の疲れは吹き飛んで気分爽快!

訪れた11月は新芽を摘み取った後で、これから迎える冬は寒さに耐えて茶畑は栄養を蓄えるため休眠に入る時期でした。

春の新緑から落ち着いた色合いとなった秋の茶畑には、白い“茶の花”がちょこんちょこんと咲いていて、なんだか微笑ましい気持ちに。

冬を越えれば、春には新芽が吹き出し、4月下旬から5月上旬には「一番茶」の収穫期を迎えます。収穫後も翌年の新茶のために、農家さんは年中茶畑の管理と製造に大忙し。

茶畑に隣接する世界農業遺産「わさび田」も見学できます。ビニールハウスで育てた苗を水辺に植え替えて良質なわさびが育ちます。一定の温度を保った安倍川の湧水が大量に流れることに加えて、高度な栽培技術も必要なのだそう。

山の地形を利用した農村文化を間近に見れるのも魅力ですね。

非日常なお茶会

お茶会をする山頂に到着! なんとテラス席は、佐藤さんの手作りです!

靴を脱いで切り株の階段を昇り、テラスへ移動。両足を外へ投げ出すと畳のような解放感があり、童心に還ったような気分にもなりました。座布団も用意されていて、リラックス度は100%!

お茶を淹れてくれるのは、日本茶インストラクターでもある佐藤さん。「煎茶・ほうじ茶・和紅茶」の3種類の飲み比べを体験できます。急須から注がれる時は周辺にお茶の香りが豊かに漂って、その香りの強さに参加者からは感嘆の声がもれていました。

1杯目は「手摘みやぶきた」。山の茶葉はやわらかいため、短時間で蒸す「浅蒸し製法」で作られています。針のような細長い形で、お茶本来の香りを活かした力強い味わいが特徴です。

「近年は粉っぽいお茶が多く、浅蒸しのお茶は少なくなっています。このお茶は、葉っぱの葉先を残した“ごまかしのきかないお茶”なんです」と語る佐藤さん。品質にこだわる真摯な姿勢が、そのままお茶に映し出されているんですね。

煎茶は透明度が高く、深いお茶の香りは深く、甘みのある力強い味わいが印象的。旨味とまろやかさに、素直に感動しました。

2杯目は「玉川ほうじ茶」。一般的に番茶が原料になっていますが、“一番茶の茎”の部分を焙煎して苦味がないことが特徴です。

重厚感のある香ばしい香りが広がり、まろやかで奥深い味わい。いつものほうじ茶とはまったく違う風味は衝撃的でありながらも、懐かしさを覚えてホッコリしました。

3杯目は「玉川紅茶」。一口目から甘みがふわ~っと広がり、芳醇な香りに驚かされました。玉川の在来茶を使った和紅茶は、渋みはなくて後味はすっきりと。普通の紅茶とは違う穏やかな風味があり、和紅茶の魅力を知ることができました。

今回は3種のお茶の飲み比べでしたが、お茶が大好きな方には「緑茶の品種飲み比べ」といったマニアックな内容を体験できるようです。

可愛らしい生菓子を添えた、志田島園オリジナルのお茶会。ちょっと寒くても「ここから動きたくないな~」と心身ともにリラックスしたひととき。

美しい日本の原風景と農家さんの手間暇を惜しまない誠実さこそが、お茶のおいしさの源泉なのだと実感しました。

製茶工場見学

機械は運転していませんでしたが、製茶工場も少し覗いてきました。

摘み取った茶葉は酸化を止めるためにすぐに製造にまわされています。まず、蒸気で蒸して、熱風でざっくり乾かした後に、茶葉を揉んで乾燥し、「荒茶」が完成。この荒茶を問屋さんが仕入れて、家庭で飲まれるお茶へと仕上げていきます。

(画像:「志田島園」パンフレットより)

茶葉の水分を揉みだすように力を入れて揉むのですが、揉みすぎないことも重要で、茶葉の水分量は実際に手で確認しているそうです。“赤ちゃんの手のような、濡れていないのにじっとりして温かい感覚”を保つように回転数や温度を調整している、とのこと。「赤ちゃんの手」という表現によって、茶葉の繊細さが伝わってきました。

生葉60㎏を5時間かけて製造するので、基本的に午前中に収穫し、夜中まで作業し、早朝から出荷するという生活が3週間〜1ヶ月は続くのだそうです。

60㎏から製造されるお茶は、なんと12㎏! 日頃飲んでいるお茶の背景には、“想像以上の労力と品質を追求した丁寧な手仕事”があることが身に染みました。

店舗・ネットで販売中

見学と飲み比べが終わったら、最後にお買い物も楽しめます。

古民家のお店には、煎茶・和紅茶・ほうじ茶といった1,000円前後の手軽なお茶から、新茶や銘茶の組み合わせた3,000円台のギフトセットまでラインナップをそろえています。

現地の店舗や静岡市内の提携店、オンラインショップで購入可能。各地のイベントでも販売されています。

お茶もお茶文化も楽しもう

(画像:静岡県静岡市、駿府城公園内「紅葉山庭園茶室」点茶体験イベントの様子)

今回訪問した「志田島園」では、まるで小さな冒険をしているような感覚で、日本の文化を支える「お茶」の原点に深くふれ、ここから伝統的な茶文化、お茶スイーツやお土産などの現代の喫茶文化に繋がっていくという壮大な物語を知ることができました。

日常の1杯が貴重なものだと改めて気づかされた今、お茶を味わうとき、筆者はきっとあの天空のテラスから眺めた緑一面の風景を思い起こすことでしょう。

志田島園

住所:静岡県静岡市葵区落合1298

TEL:090₋5104₋2514

交通:しずてつジャストライン「川島」バス停から徒歩5分、「静岡駅」から車で約45分

公式Instagram:@shitajimaen

(参考)お茶のまち静岡県

[all photos by kurisencho]

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